約束の続き
美ら海水族館から車でのんびりと移動して、予約していた貸別荘。
それは……。
「すごいな!」
小鳥の言葉に皆が頷く。
2階建て。
一階に3つのベッドルーム。
二階にはキッチンにリビング。
ルームシアターまでついてる。
それに小さいながら屋上にだって出られる。
なんというセレブ仕様。
私たちの勝ちは決まったも同然だ。
「ベッド多いの最高だなー。
このみといつも通りエッチできるぜ。いたっ。」
「いつもエッチしてるみたいな言い方やめて……。
勘違いされちゃうじゃん。」
いつも通りな鈴の軽口。
それはそれとして、ベッドルームの組み分けも終わった。
水族館の時と同じ。
私とフラン。
鈴とこのみちゃん。
小鳥、めぐるちゃん、雛乃。
まあ夜はみんなで遊ぶから、実際その通りに寝るかはまだ分からないけどね。
なにはともあれ寝床は決まった。
時刻は17時。
まだまだ遊ぶ余裕に溢れてる。
何しよう?
映画?ゲーム?
あ、そうだ。
その前に!
「めぐるちゃん借りてもいい?」
「?別にいいわよ。」
雛乃のでもないけど、許可はもらえた。
部屋着に着替えてゆっくりしているめぐるちゃんを自分の部屋へと拐う。
「え、えと。王子様……?」
「さっきの続き。約束してたでしょ?」
めぐるちゃんの髪、もっと撫でたかったんだ。
ベッドに座らせて後ろから髪を撫でる。
「……照れます。」
「照れてるところも可愛いよ。
めぐるちゃんの髪はサラサラだね。
ずっと撫でてたいな。」
扉の向こうからパタパタという足音が聞こえる。
みんなで2階に集まってるのかな。
でもあとちょっとだけ。
遊ぶなら、きっとそのタイミングで呼んでくれるだろうし。
「王子様……。」
しばらく撫でると、ぼそっとめぐるちゃんが呟いた。
よく見ると手の先が少しソワソワと動いてる。
顔も少し赤い?
やっぱり疲れてたかな。
「ちょっと休む?」
「きゅうけい……。」
またぼそっと呟いた。
後ろからめぐるちゃんの肩に力をいれる。
めぐるちゃんはこてん、とベッドに倒れ込んだ。
「ほら、目ぇ閉じて。撫でてあげる。」
めぐるちゃんが目を閉じる。
このままちょっとだけ悪戯しちゃおう。
みんなが遊び始める前に……。
「しゅーごー!遊ぶぞー!!」
あ、残念。
階段をパタパタと降りてくる鈴の声。
めぐるちゃんを起こして扉を開ける。
すると鈴が飛び込んできて私たち2人の手を取った。
めぐるちゃんへの悪戯はおあずけ。
今は皆と遊ぼう。
ウキウキと弾む足取りの鈴。
それについていくように、私たちは二階へと上がった。
その時、私は気づかなかった。
めぐるちゃんが何を思っていたか。
お預けをされためぐるちゃんがどれほど続きを切望していたかを。
そして私はこう思っていた。
(まぁいいや。ゲームも楽しそうだけど……。)
(今日はめぐるちゃん甘やかしデーにしよ!)
そんなお気楽なことを。
そのお気楽が吉と出るか凶と出るか、私に知る由などなかった。




