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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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沖縄上陸!


「ようこそ沖縄へー!アロハー!」

「あ、アロハです!」

「ふふっ。沖縄ならめんそーれじゃない?」


正午。

飛行機から降り那覇空港。

そこでは鈴とこのみちゃん、それに雛乃が待ち構えていた。

鈴とこのみちゃんは半袖のアロハシャツと短パンにサングラス。

2人揃って南国仕様。

細くて白い綺麗な肌を惜しげもなく晒していた。

雛乃は膝下丈のワンピース。

大人しめのアロハ柄が夏らしい。

それにいつもと同じように伊達メガネ。


「わ!雛乃ちゃん!ワンピースお揃いだね!」

「ふふっ。本当ね。嬉しいわ。」


雛乃の手を握って楽しそうに跳ねるめぐるちゃん。

めぐるちゃんもマキシ丈のワンピース。

真っ白なワンピースに麦わら帽子が避暑地のご令嬢という雰囲気。


ちなみに私と小鳥とフランはいつも通りの格好だ。

フランは執事服。

たださすがにジャケットは脱いでシャツ姿。

執事、夏服モード。

小鳥はジーンズに白のTシャツ。

いつもとの違いと言えばキャップを着けてるくらいかな。

私はもう本当にいつも通り。

丈の長いスカートに上はTシャツ。

さらに薄手の長袖シャツを羽織って露出は無し。

夏であろうと完全防備だ。


「へいへーい、なんだよー。

 沖縄楽しんでなさそうじゃん!」


鈴が背伸びをして私の肩を小突く。

む、生意気な。


「わ、なんだよ兄弟!浮かない顔して!」

「叩かれたからだよ。絶対に許さない。

 呪ってやる……。呪ってやるぞ……!」


鈴を真顔で睨みつける。

あわあわと口を開く鈴。

私の勝利は確実だ。


「っいた!」


小鳥に小突かれた。

仕方ないから鈴から目線を逸らす。


「往来でふざけるな。」


小鳥に叱られて軽く謝る。

そんな風にして、私たちの沖縄旅行は幕を開けた。



「では乗り込め!」


空港の駐車場。

そこには鈴が借りてきたという大きなハイエースが停めてあった。

最大10人乗り。

明日合流するみゆちゃんを乗せても充分余裕だ。

1日目の運転手はフラン。

フランと鈴で交代に運転していく予定だ。

運転席にフラン。

助手席に私。

あとは皆思い思い好きな位置に座り、ドライブ開始。

目的地は美ら海水族館。

約2時間のドライブだ。


「みゆちゃんは明日合流なんですよね。

 美ら海一緒に行きたかったな。」


このみちゃんの声。

おじいちゃんの用事の関係でみゆちゃんは明日合流。

マリンスポーツは一緒に楽しむ予定だ。

でも確かに美ら海も一緒に行きたかったな。


「まあみゆは爺さんと行くのも楽しみにしてたからな。

 爺さんもみゆのこと大好きだしな。

 あんまり私たちで独占しちゃ悪いだろ。」

「うん、みゆちゃんとは海遊び楽しもう?」


それでも小鳥たちの言う通りだ。

みゆちゃんとおじいさんの仲をあんまり邪魔するのも悪い。

また別の機会にみゆちゃん誘ってみんなで水族館に行こう。


そして出発して5分くらいが経ったころ。


「ねぇめぐる、お昼ご飯は食べた?

 お腹空いてたらじゃがりこあげるわ。」

「私は大丈夫だよ。小鳥ちゃんは大丈夫?」

「もらってもいいか?」

「は、はい!いくらでもどうぞ!」


そんな会話が後ろから聞こえる。

私もお腹ちょっと空いたな。

そう思っていたら、後ろから今度はガサガサという音。

次ににゅっと紙に包まれた何かが私の元に手渡された。


「スパムおにぎりです!

 僕たちは早く着いたので買っておきました!」

「わ、すごく気が利くね。さすがこのみちゃんだ。」

「えへへ。ありがとうございます!」


スパムおにぎり。

大きめのサンドイッチみたいなおにぎりにスパムポークと卵焼き、それに何かの天ぷら。

齧ると甘い苦味。

あ、これはゴーヤの味だ。

すごく沖縄っぽい。


「あとでお金払うね!」

後部座席に向けて声を飛ばす。

「大丈夫!だって寄り道したくなかっただけだから!」

鈴の声。

そして次に……。


シャンシャンシャンシャン!


そんな大きなベルの音がした。


「これよりドライブには付きもの!

 レクリエーションゲームを始めます!」


後ろを振り向くと、鈴がベルを構えていた。

隣に座るこのみちゃんもびっくりした顔。

とりあえずこれは鈴の独断らしい。


「痛いっ!」


そして鈴はそんな声をあげた。

見ると小鳥が鈴を叩いていた。


「運転中に大きい音立てるな!

 危ねえだろうが!

 フラン、大丈夫か!?」

「大丈夫です!私は知らされてましたから!」


ほっと一息着く音。

それと小鳥からちょっとの謝罪。

いやまあ鈴が悪いけどね。

フランは大丈夫でも助手席の私はびっくりしたし。


仕切り直して鈴の司会。


「これより水平思考ゲームを始めます!」

「水平思考ゲームですか??」


水平思考ゲーム?

私は知らない。

だけどめぐるちゃんが反応したということは、皆でやるようなパーティーゲームなのだろう。


「ふふっ。めぐる、ソワソワしすぎ。

 どんなゲームなの?」

「よくぞ聞いてくれました!」


鈴のルール説明。


「まず俺が1つ問題を出します!

 解答者は『はい』か『いいえ』で答えられる質問をしてください!

 その質問を頼りに問題の回答を導くゲームです!」


まだ少しよく分からない。

だけどひとまずやってみようと第1問。

鈴が問題を出す。


「先輩Aと後輩Bが居ます!

 AはBに絶対にやっては駄目だと念押しした事柄がありました。

 ただし、Bはその約束を破りました!

 だけど後日AはBをよくやったと褒めました!

 それはなぜでしょうか?」


窓の外に見える爽やかな沖縄の風景。

それとは関係なく、いつものようにゲームは始まった。


さて、じゃあ質問の時間だ。


「そもそもAがものすごいおバカとか?」

「いいえ。Aがおバカなわけではありません!」


雛乃の質問はスカ。

次に小鳥の声。


「Aは後輩を褒めて伸ばすタイプか?」

「いいえ。そういうわけではありません。」


ふむ。

じゃあ答えが分かったかもしれない。


「はい!」

「お!兄弟!元気いいな!どうぞ!」


一息吸い込む。

そして私の思う回答を。


「Aがフランのように優しいから!

 フランの海のような慈悲。

 その前には失敗など些事なの

「違います!おバカ!」

「おバカとはひどくない!?」

「今のは新入りが悪いわ。」


雛乃に言われちゃしょうがない。

ひとまず様子を見よう。

運転席のフランもニコニコと様子を見守っている。

もしかしたら答えが分かっているのかもしれない。


「マニュアル通りだと大損するとかかな?」

「それもいいえ。マニュアルなどないのです。」


またいいえ。

中々芯をつく質問は出ない。


「あ!もしかして!」


めぐるちゃんが何か閃いたようだ。

ちょっと一呼吸。

そして質問を口に出した。


「先輩はその道の大ベテランですか?」

「はい!そのとおりです!」

「こ、答え言ってもいい……?」


すごくソワソワとした声。

めぐるちゃんの声には答えが分かった喜びも滲みでていた。


「2人は芸人さん?

 絶対に押しちゃ駄目ってフリだよね……?」

「大正解!!めぐめぐに1点!」


あー!なるほど!

そっか。そういう感じか。

ようやく水平思考クイズが分かった気がする。


「めぐるちゃんは賢いね!後で撫でてあげるね!」

「わ!王子様!ありがとうございます!」


後ろからパチパチという拍手も聞こえる。

みんなでお祝いムードだ。


「こほん。じゃあ次の問題なー。」


鈴が1つ咳払い。

次の問題に備え、ちょっとだけ空気が引き締まった。


「小学生に自転車勝負で勝てば一億円。

 自転車レーサーである貴方はこれに出場します。

 だけど貴方は勝つことができませんでした。

 相手は普通の小学生。

 距離は1キロメートル。

 一体どうして勝てなかったのでしょう??」


今度は自転車レーサーが小学生に負けた理由。

最初に質問をしたのはこのみちゃん。


「鈴ちゃん、自転車は2人とも同じ?」

「ううん、自転車はレーサーの方がすごい。

 小学生は普通の子ども用自転車。

 レーサーは自前のロードバイク。」


むしろレーサーの方がちゃんとしてるのか。

機体差ではない。

覚えておこう。


「妨害はありか?」

「無しに決まってるじゃん!

 小鳥は発想が物騒でこわいなー。」

「天気はどうかしら?同じ天気?」

「うんにゃ。同じ天気。

 小鳥は雛乃の質問を見習って!」

「うっせえ」


質問は続く。

でもだいたい分かった気がする!


「鈴、その子は

「フランちゃんじゃないよ。」

「そっか。」


私の回答は違ったらしい。

難しい……。


「あ、でも念のため。

 みゆちゃんでもない?

 ていうか小学生の平均値?」


私が聞くと、鈴はまた「うんにゃ」とひとこと答えた。

でも小学生の平均値か。

マシン、天気、選手におかしな点はない。

妨害も無し。

あとは……。


「コースも同じ?」

「……うん!同じ道!」


ちょっと間があった。

けど同じ道。

まさかとは思うけど……。

でもその回答は……。


「あ、分かった。」

小鳥の声。

そしてあっさりと私が答えるか迷った回答を言いのけた。


「同じ道なんだろ。

 でも小学生は下り坂。

 レーサーは登り坂だったんじゃねえの?」

「正解!小鳥、あったまいいー!」


鈴の拍手が響く。

でもその回答は納得いかない。


「異議ありだよ」


私はそう口を挟んだ。

そしてそのすぐ後。


「私もそう思うわ。」

「わ、私もです!」

「僕も。」


他のみんなも賛同してくれた。

考えることは同じらしい。


「レーサーはそんなハンデじゃ負けない。」

「いや負けるよ!そういう答えなの!」


鈴は一歩も引く気がないらしい。

運転席のフランは依然ニコニコしたまま。

フランも私と同じ意見ならいいな。

そう信じて私は一つ息を吸い込む。


「じゃあ今度小鳥と鈴で勝負してみてよ。

 鈴も体力的には小学生くらいでしょ?」

「……あー」


小鳥の納得する声。

鈴には負けないという確信があるのかもしれない。


「やってみるか?」

小鳥が鈴に尋ねる。

鈴は少し迷ったあと……。

「やめとく……。」

そう言って残念そうな声を出した。


まあでもその一瞬後には元気な鈴に戻った。


「ええい!じゃあみんなに1点!

 答えた小鳥っちには2点な!

 じゃ!次の問題!」


そしてまだまだドライブゲームは続く。

目的地は美ら海水族館。

2時間のドライブもあっという間に終わりそう。

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