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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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最高のお昼寝タイム


「ふぁ」


ひとつあくびが出た。

それがきっかけだった。


「どうした兄弟?寝不足か?」

ニヤニヤと鈴が顔を覗いてきた。

「知ってるでしょ?昨日お散歩だったんだから。」

「申し訳ありません、お嬢様。」

フランが頭を下げた。

それはナデナデして大丈夫だと示す。

ていうか私がしたいと言ったことだしね。

フランは悪くないよ。


でもすごく眠いのは確かだ。

今日はもう帰ろうかな。

そう思った時だった。


「よし、じゃあここでお昼寝していけ。

 最高の睡眠をプレゼントしてやるぜ。」


鈴がまた唐突に変なことを言い始めた。

白い目で見ると、ぷいっと目を逸らした。


「いいよ。お家帰って寝るから。

 ごめんね、今日は帰らせてもらうね。」

「先輩!僕も鈴ちゃんに賛成です。

 良ければ休んでいってください!」


まさかこのみちゃんまで賛成するとは。

シャツの裾をつままれてしまった。

振り払うのは可哀想。

しょうがないからそのまま座り込む。


「それで最高の睡眠って?」

聞くと鈴は不敵に笑った。

「ふふっ。このみ!」

「うん!」

鈴が指を鳴らすと、このみちゃんは押し入れを開けた。

そして変なものを取り出した。

筒?


「アロマディフューザーです!

 いい匂いがするんですよ。」

「だよ!」


2人でニコニコとそれをセットする。

アロマか。

それは確かにうちにはない。

案外信用してもいいのかも?


「お嬢様、せっかくです。

 お二人に任せてみませんか?」

フランも乗り気だ。

「うん、じゃあちょっとだけ試してみよっかな。」

そして最高のお昼寝大会は開幕した。

準備のため、玄関で5分ほど待機。

その間に鈴が用意してくれたパジャマに着替えた。

私にぴったりなサイズの猫耳フード付きのパジャマ。 

まあ鈴だしそういうものを用意していることに違和感は無い。

ちょっと暑いけどしょうがない。

猫耳パジャマの横にあったセクシーなネグリジェよりはマシだ。

 

着替えて待っていると、同じく猫耳パジャマ姿のフランが呼びにきた。


「えへへ、お嬢様。期待しててくださいね。」


猫耳でモコモコのフラン超可愛い……。

見惚れそうになったけど、その気持ちは一度振り払う。

フランに手を引かれてさっきの部屋へ。

そこは明らかに……。


「……エッチするための部屋じゃん。」

「ち、違いますからね!?」


いや、だって。

うっすらとした間接照明。

敷かれた大きめの布団。

なんかお洒落なゆったりとしたBGM。

それにただよういい香り。


「あぁごめんね。えっと、うん。

 ごめん、配慮がなかったね……。

 付き合ってるなら良いと思うよ?」

「本当に違いますから!

 僕たち清いお付き合いですから!」


めちゃくちゃ慌ててる……。

誠実に付き合ってるなら恥ずかしい行為じゃないよ。

だから大丈夫だよ。

そう言おうとしたら、鈴に遮られた。


「このみが可哀想だから一応なー。

 本当にまだしてない。」

「そ、そうです!

 そう言うのはもっとちゃんとしてからですから!」


うーん。

いつもは信憑性ないけど、今日に限っては本当なのかも。

いつもより真面目な顔だし。

ここは信じることにしよう。


そんな風に思っていたら、フランが私の手を離した。

そしてそのまま布団に潜りこんだ。


「それじゃあ私も失礼するね。」


布団に入って正面からフランを抱きしめる。

空調のよく聞いた部屋。

フランを抱きしめるとけっこう暑い。

でも心が癒されてるから暑さは気にならない。


「お嬢様、猫耳可愛いですね。」

フランの優しい声。

すぐにその手は私の頭に。

そしてゆっくりと撫で始めた。

「フラン、2人が見てるから……。

 ちょっと恥ずかしい……。」

でもフランの褒めと撫では止まらない。

微笑みを浮かべたまま。


ふと横を見ると鈴がニヤついていた。

ちょっとムカつく。

だけど今の姿で何を言っても効果はないだろう。

私はフランをより強く抱き締め、鈴からは顔を逸らした。


そこからはあっという間だった。

フランの優しくて甘い言葉とその体温。

穏やかな環境。

それは睡眠を求めていた身体に染み渡り……。




「ふぁ……」


目が覚めた。

気付けばぐっすり眠ってしまっていたらしい。

腕の中には変わらずフランがいる。

私が起きたことに気づいて、ぎゅっと抱き締めてくれた。


「いま何時……?

 それに2人は……?」


私が聞くとフランは余すところなく教えてくれた。

今は17時。

寝てたのは3時間弱。

鈴とこのみちゃんはダイニングでゲームしてるらしい。


「フランごめんねぇ……。遊びたかったでしょ……?」

「いえ!お嬢様の寝顔を堪能できましたから!

 とっても有意義な時間でした!」


そのキラキラとした笑顔に偽りはない。

でもやっぱりちょっと悪いからもう一度抱きしめる。

フランはきゃっと嬉しそうな声をひとつ。

さらに強く抱きしめると、足をパタパタして喜びをアピールした。


「もう一回お願いします!」


そんな要望に答えてもう一度。

またフランは私の胸の中でえへへと笑った。


(2人にもお礼言わなきゃ……。)


多分2人が思ってるよりも熟睡してしまった。

3時間も人様のお家で寝ちゃうなんて。

申し訳ないことをしちゃったな。


そんなことを考えながら立ち上がり、部屋を出る。

ダイニングでは2人がテレビゲームをして遊んでいた。

ス※ッシュブラ※ーズ。

鈴の得意で大好きなゲーム。


「おはよ。ごめん、あとありがとね。

 みんなのおかげでよく寝れたよ。」

「それは良かったです……!

 あ、でもちょっと!待ってください!」


2人はゲームに熱中していた。

中断させるのも悪いからそのまま待つ。


「あ、パジャマそこ置いといて!

 こっちで洗っとくから!」


ゲームをしながら鈴はそう言った。

本当は持って帰って洗濯したいけど……。

ここは好意に甘えさせて貰おう。

猫耳パジャマを脱いで、元の服に着替える。

普通のTシャツ。

普通のジーンズ。

あ、そうだ。

フランの写真は撮らせて貰おう。

2人の試合はまだ始まったばかり。

だけど猫耳フランの写真を撮っていたら、時間はあっという間に過ぎた。


「お待たせしました!僕の勝ち……え?」


このみちゃんが私を見て固まった。

よく見ると鈴もなにも言わずにじっと私を見ていた。

どうしたの?

私が言うよりも先に鈴が口を開いた。


「お前らこそエッチしてんじゃん!」

「してないよ!?」


なに、どういうこと!?

鈴のまた変な冗談!?


でもこのみちゃんまで顔を真っ赤にして口をパクパクしてる。

全然状況が分からない。


「それ!キスマークじゃん!」


鈴が私の首筋を指さす。

手で触るとそこに絆創膏は無くなっていた。


「……」


一呼吸。


「ち、違うから!エッチなことしてないから!」


それから1時間かけて2人に釈明した。

ただフランがマーキングしたのは本当だから……。

すっごく大変だった。


エッチなことはまだ早い。

そういうのはもっと大人になってから……。

そう、もっと精神的に熟達してからだから!







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