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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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夜更かしの翌昼


「ほら!起きろ!昼だぞ!」

「わ……」


小鳥に布団を引っ剥がされて起床。

今何時?


「もう11時だぞ。起きろ起きろ。」

「うそ……もうそんな時間……。フランは?」


寝ぼけ眼を擦り辺りを見回す。

フランの姿はすぐに見つかった。

歯を食いしばり私を睨みつけていた。


「ごめん、寝すぎたね。すぐ起きるよ。」

フランに頭を下げると、首を横に振った。

でも特に何も言わなかった。

「あー、フランな。

 私のせいで夜更かししたのに……。

 でも起こさなきゃ……。

 ってずっと言ってたから。」

なるほど。

そういうことなら。

「フラン!大好き!」

起き上がってその勢いのままフランを抱きしめる。

ちょっと困惑したあと、フランは力強く私を抱き締め返してくれた。


フランが元に戻ったところで大事なお話。


「山城さんにフランの正体バレちゃいました。」

「まじか。」


一応小鳥に報告。

あとで鈴にも報告しないと。


「ていうか空のお散歩羨ましすぎる……。」

小鳥はそう言って私の肩をトン、と軽く押した。

「月の出ていない日でしたら。

 その時は小鳥お姉様もお連れしますね。」

フランが私の膝の上から立ち上がり小鳥の元へ。

指切りをしてまた私の膝に戻ってきた。


「小鳥は大丈夫だと思う?

 私はまあ大丈夫かなって思うけど。」

「ああ山城さんなら大丈夫だよ。

 そこはちょっと色々あって確信できる。」


あら、意外と高評価。

私は山城さんとは手紙でしかやり取りなかったけど、小鳥も会ったことあるのかな。


「なんか秘密握られてるの?」

「秘密だ。」


うむ、口が硬い。

でも小鳥の秘密を握ってて言わないなんて。

それは確かに信用できるかもしれない。


「まあでも山城さんの顔見れたのは良かったよ。

 すごく美人さんでびっくりした。」


小鳥とは別ベクトルの美人だった。

小鳥はすらっとしたアスリート系美人。

山城さんはグラマラスな美人。

吸血鬼だと言っていたのも本気じゃないかと思ってしまう。

それくらい日本人離れした………。

むしろ現実離れした姿をしていた。


「でもお嬢様、昨日は不用心すぎです。」

「なんの話?」

「山城さんにキスされそうになってました。」

「っ!?」


小鳥が噎せた。

いや、でも昨日のは色々びっくりしただけ。

眠かったし。

急に変なこと言うし。


「ま、まじか山城さん……。」

小鳥が水を飲みながら平静を取り戻す。

ただその声色には驚嘆の色が浮かんでいた。

「あ、でも心配しないで。

 フランが守ってくれたから。」

「えへん。」

膝の上でフランが胸を張る。

私は頭を撫でてその活躍を褒め称えた。


そこで小鳥の目の色が少し変わった。

ジトーっとした目。

その目は私の首筋を見ていた。


「どうしたの?」

私が言うと小鳥はスマホで私の首筋の写真を撮った。

「ほら。」

そしてその写真を突きつける。

そこに写っていたのは。


くっきりとキスマーク。


膝の上のフランを見る。

フランはどやっとした顔をした。


「フラン?これは?」

いや、質問が間違ってた。

「キスマークです!」

そう、これが何かは分かってる。

「……なんで?」

「えへへ……。」

フランはちょっと恥ずかしそうに笑って誤魔化した。


いや、昨日の寝る前はついてなかった。

てことは、寝てる間に?

なんで?


「えっと……。

 人間はそうやってマーキングするんですよね?

 お嬢様の首を噛んだら思い出しちゃって……。

 やってみたくなっちゃいました……。えへへ。」


ふむ。


「じゃあ私もするね。えい。」

「わ!私にはつかないですよ!」

「じゃあはむはむする。フランは美味しいかな。」


フランの首をはむはむと噛む。

きゃっきゃっと笑うフラン。

しばらく噛んでいると小鳥に小突かれた。


「……痛い。小鳥もして欲しい?がぶっとぃたっ!」

もう一回叩かれてしまった。

そして小鳥はしゃがんでフランと目線を合わせた。

「フラン、キスマークはだめだ。

 みゆちゃんの教育に悪いからな。」

それを聞いてフランが少し考え込む。

そしてハッとした顔で立ち上がった。


絆創膏を持ってきて、キスマークの上から貼った。

ちょっと不自然だけどキスマークは隠されてしまった。


「小鳥お姉様の仰るとおりですね。

 みゆ様にはまだ早いです。」


確かにみゆちゃんと……あとめぐるちゃんにも早いか。

みゆちゃんなら真似してたくさんキスマークをつけてきかねないし。

でもちょっと残念。

フランからのキスマーク嬉しかったのに。


「ていうかバイトにキスマークつけていく気か?

 さすがの店長さんでも激怒するぞ。」

小鳥の言葉で多少寝ぼけていた頭も覚醒した。

男装執事喫茶にキスマークをつけていく。

それは……うん。

どう考えても怒られる。

「ごめん小鳥。目が覚めた。」

「分かったならいいよ。」

小鳥は私の頭を撫でた。

また子ども扱い。

悔しい。


『お嬢様!お電話です!』


私のスマホが鳴った。

相手は……。

山城さんだ。

電話なんて珍しい。


『……手紙。私の部屋の前に置いたから……。取っといて。』


ただそれだけ言って通話は切断された。

フランと小鳥と顔を見合わせる。

小鳥がダッシュで手紙を取りに行った。

そして1分後。


「はいよ。」


小鳥が手紙を私に差し出す。

私はそれを開封した。


『昨日はごめんね!

 驚かせちったよね!

 でもでも、2人とお話できて嬉しかったよ。

 また夜にあったらよろしくね。

 じゃあ私は寝るからさらばじゃ。


 親愛なる吸血鬼 山城メアリより』


頭の痛くなる文章。

でも私にとってはいつもの山城さんだ。

手紙ではよく喋る。

そんな山城さん。

まあやっぱり悪い人ではない。

それを確信して、鈴にも報告。

鈴はちょっと唸ったあと、許してくれた。


一件落着?

小鳥の秘密は、深夜のコンビニ帰りにアンパンマンのマーチを口ずさんでいたというしょうもない秘密です。

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