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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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お嬢様メイキング


「お嬢様、じっとしてくださいね。」

「王子様、動いちゃだめですよ?」

「私、メイク自分でできるよ?」


私の提案はすぐに却下された。

元演劇部だもん。

メイクはお手の物なのに…。


「私ならお嬢様の魅力をもっと引き出せますからね!」

フランが楽しそうにメイク道具を構える。

「それに私もメイクするのは得意ですので。

 安心してお任せください!」

めぐるちゃんもやる気に満ち溢れている。

まあ2人が楽しそうならいっか。

お任せすることにしよう。


スキンケアまでは自分でもう済ませた。

2人に任せるのは化粧下地から。


「お嬢様?目を瞑ってくださいね。」


フランに言われるがままに目を瞑る。

すぐに小さな手が私の顔に触れた。

続いて反対側にもう1つ細い指。

2人で同時にやってくれてるらしい。


「ふふっ」


思わずちょっと笑ってしまった。

2人でメイクしてくれてる。

まるでお姫様にでもなった気分だ。


「あ!お嬢様!今は笑わないでください!」

「ムラができちゃいますからね。

 じっとしててくださいね。」


2人に窘められたからちょっと我慢。

でも油断すると笑みが溢れそうになる。

ちょっと気を引き締めよう。


「そんなに険しい顔しないでも大丈夫ですよ?」

「王子様、リラックスしててくださいね。」


今度は険しい顔になっていたらしい。

うーむ、中々難しい…。


「下地は綺麗に塗れました!

 このままファンデーションします。

 まだ目は開けないでくださいね!」


さらりとした感触。

ブラシが肌に触れてちょっとくすぐったい。


「笑っちゃだめですよ?」


少し悪戯なフランの声。

ブラシのくすぐったさよりも、その声が可愛くてつい笑ってしまった。


「あ、王子様。笑っちゃだめなのに。」

「ごめん、フランの声が可愛くて。」

「お嬢様、喋るのもだめですよ!」


メイクされるのって難しい。

ついニヤケそうになるのを堪えなきゃいけないんだから。


ぽふっぽふっと柔らかな感触。

フェイスパウダーまでやってくれているみたい。

少しその感触が続いたあと、フランが声を上げた。


「よし、これでベースメイクは完璧です!

 お嬢様、目を開けていいですよ。」


目を開けると、鏡にはムラなくベースメイクの終わった私の顔が映る。

なんだかいつもよりもずっと肌が整って見える。

やっぱり2人に化粧してもらったからかな?



「2人ともありがとね。じゃあ

「はい、ここからが本番です!」

「お嬢様風ですよね!腕が鳴ります!」


そう、ここまではいつも通りだ。

フェイスパウダーまでなら、元々少なくない頻度でフランが手伝ってくれている。

でも今日はいつもとは違う。


「ではまずは目元からですね!

 着ていくお洋服はその白のワンピースで間違いないですか?」


フランの問いに、頷いて答える。

みゆちゃんが着てたの、すごくお嬢様に見えたから。

今日は参考にさせてもらうことにする。


「じゃあアイシャドウはブラウンにしますね!

 今私のお部屋から持ってきます!」


めぐるちゃんがパタパタと走っていった。

メイクしてくれるだけでありがたいのに。

メイク用品まで使わせてくれるなんて…。

今度何かお返ししないと。


「その間に眉毛整えちゃいますね!」

フランがテキパキと道具を切り替えながら、眉を整えていく。

細かな作業はフランの得意とするところ。

めぐるちゃんが帰ってくる頃には眉毛の工程は完了した。


「お待たせしました!

 わ!フランちゃん、眉毛すごく綺麗!

 さすがだね!」

「えへん。これくらいは朝飯前ですからね。」


そんな会話を少しして、私の目元のメイクが始まった。

そしてすぐに終わった。


「目を開けていいですよ。」

めぐるちゃんの声に合わせて目を開ける。

「おー。すごい、お嬢様っぽい!」

薄く塗られたブラウンのアイシャドウ。

上品さがあって、私が思った以上の仕上がり。

元がそんなにでも、メイクによってこんなに印象変わるんだからなー。

やっぱりお化粧って偉大だ。


「ではもう一度目を瞑ってください。」

まだ何かあるの?

もう充分すぎるほどに綺麗になった気がする。

「これからハイライトとシェーディングを行います。

 お嬢様をもっともっと綺麗にして差し上げます!」

目を輝かせてすごく楽しそうなフラン。

それならお任せしよう。

どこまで変わるのか、ちょっと楽しみなのもあるし…。


目元や口元、鼻筋をフランの指が撫でるように動く。

いつもの鼻歌が聞こえる。

すごく楽しんでくれてる。

それを感じて、つい口元が緩みそうになる。

また怒られちゃうから、ちょっと我慢。


「チークも入れますね!」


今度はほっぺたにフランの手の感触。

あれ?

でも私の家にパウダーじゃないのあったっけ?

なんか少し違和感…。


「……!」


フランが私の唇を優しく撫でた。

その衝撃で違和感は消し飛んだ。


「では最後にリップです!

 あと少し我慢してくださいね!」


なんで撫でたの…?

リップするのにそれは必要なくない??

そんなことを聞くこともできず、されるがままにお化粧は完了。


「目を開けてもいいですよ。」

「ねえフラン、なんで唇撫でたの?」

「可愛かったので!」


まっすぐで元気な返事。

追求はできなかった。


ああでもすごいな。

まるで自分の顔じゃないみたい。

小鳥、驚いてくれるかな。


「髪型は私に任せてもらってもいいですか……?」

めぐるちゃんが恐る恐る私に尋ねてきた。

「勿論いいよ。めぐるちゃんのセンス好きだもん。」

私が答えると、めぐるちゃんは満面の笑みを浮かべ私の髪を弄り始めた。

「テーマはお嬢様らしく、なので…。

 髪を少し巻いてもいいですか?」

その手にはヘアアイロン。

もちろんそれにも頷いて答えた。

髪巻いてる方がお嬢様っぽい。

私もめぐるちゃんも共通の認識だ。


めぐるちゃんが一度髪をさらりと撫でつける。

ヘアアイロンをする前に、元の状態を確認したいのかな。

めぐるちゃんがもう一度髪を撫でつける。

めぐるちゃんがさらにもう一度髪を撫でつける。


「……めぐるちゃん?」

「はいっ!?」


どう考えたって必要のない工程。

私が一言そう言うと、作業が正常に進み始めた。


「王子様、せっかくなので目を瞑ってもらえませんか?   完成したところを見て欲しくて…。」


そう言うことなら楽しみに待つことにする。

今日何度目かの閉眼。

ワクワクしながら、めぐるちゃんにお任せ。


ヘアアイロンの音が止み、パチンっという髪を留める音。


「完成しました!目を開けていいですよ!」


目を開けると、そこには完璧なお嬢様がいた。

髪は緩く巻いて、長かった髪はハーフアップにしてバレッタで留めてある。

自分で言うのも恥ずかしいけど、ちゃんと気品に溢れていた。


「わ!すごい!すごいね!」

あまりの出来栄えに思わずテンションが上がってしまう。

2人にかかると、こんなに変われるんだ。

すごい発見。

「お嬢様?あとはお嬢様がなりきれるかです。

 頑張ってくださいね。」

フランが優しく微笑む。

うん、これだけ2人がお膳立てしてくれたんだもん。

あとは私がお嬢様役になりきるだけ。

腕が鳴るぜ。

「分かっていますわ。」

私がそう答えると、フランもめぐるちゃんも満足そうに笑みを浮かべた。


さて、じゃああとは片付けして準備して。


「え……」


化粧台に置かれたメイク用品。

てっきり私の家の物を使ってるのかと思ってた。


「めぐるちゃん……?」

「王子様、どうしましたか?」


めぐるちゃんはきょとんとした顔。

私が何に衝撃を受けているのか全く気づいていない。


「これ、なに?」


私が指差す先。

そこには高級化粧品の山があった。

化粧下地からリップまで、全部がブランドもの。

どう考えても、私に使うにはもったいない。


「王子様のおめかしですよ?

 これくらい当然じゃないですか。」

めぐるちゃんはそう言ってニコニコと笑った。

「いや、でも……。あ、そうだお金は

「要らないです。

 王子様のおめかし用に買ったんですから。」

有無を言わせない言葉の圧。

私は気圧されてそれ以上何も言う事ができなかった。


めぐるちゃんこわい…。

どこからその熱が来るの…?

やっぱりたまに恐ろしいものを感じる…。


ピンポーン


チャイムが鳴った。

小鳥には今日はこっちの部屋には来ないように伝えてある。

みゆちゃんかな?

「空いてるよー!」

私がいうとガチャリと玄関の開く音がした。


「フランちゃん、いる?」

みゆちゃんが部屋に入ってくる。

せっかくの機会だ。

みゆちゃんからも感想を貰おう。


「みゆちゃん、どうかな?」

立ち上がってみゆちゃんに全貌を見せる。

みゆちゃんの反応は…。


「わ!おねえさん!すごくきれい!」


目をキラキラとさせて、あらん限りの褒め言葉。

すごく照れる。

でもすごく嬉しい…!


「ではみゆ様を待たせる訳にはいきませんからね。」


今日はフランとみゆちゃんは2人で遊びにいくらしい。

だからここからは別行動だ。


「めぐるちゃんはどうする?」

「私は今日は遠慮しておきます。

 王子様、楽しんできてくださいね!」


めぐるちゃんが日傘を差し出す。

私はそれを受け取って外に出る。

ちょうど約束の時間。


「へいお嬢様。めっちゃ似合ってんじゃん。

 乗っていきな。」


駐車場では鈴が待ってくれていた。

助手席にはこのみちゃん。

行く場所は同じ。


「先輩、すっごく綺麗です!」

このみちゃんからもお褒めの言葉を貰えた。

2人のおかげ。

やっぱり何かお返ししないと。

「褒めてくれてありがとうね。

 このみちゃんも執事姿似合ってたよ。」

「先輩に褒めて貰えて嬉しいです。

 今日は小鳥さん目当てですか?」

頷いて答える。

「小鳥さん、最近すごく人気ですからね…。

 でも早く並べば大丈夫です!

 楽しんでくださいね!」

そう、小鳥は今や執事喫茶の一番人気。

ならば私もそれに相応しい格好で。


これだけ皆が手伝ってくれたんだ。

気合いを込めて、お嬢様らしく。

私の戦いはこれから始まる。


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