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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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やっぱり嘘は良くないと鈴は言った


『ごめん!やっぱり嘘はよくないや!

 めぐちゃん、みゅー、ひなひなには言っていいよ!』


もう寝ようと思ったころ、鈴からそんな電話がかかってきた。

心変わり早すぎない?


『いやさ、このみが今回のことすごく喜んでて。

 もう気を遣わなくていいんだ!やった!って。

 なんかそれで罪悪感出てきた。』


まあ確かにね。

フランも完璧に隠せてるとは言い難い。

みゆちゃんはとうに気づいてるかもしれない。


『とりあえずそんなわけだから!

 でも他の人には秘密にしてね!

 じゃあ俺はこのみといちゃつくから!

 バイバイ!』

『鈴ちゃん!恥ずかしいこと言わないで!

 先輩、鈴ちゃんの言うことは気にしないでね!

 おやすみなさい!』


2人のじゃれ合う声を最後に電話が切れた。

でもそっか。

それなら3人に言ってみるのもありかな。


「とりあえず私たちもいちゃつく?」

「もう寝る時間です!

 ほら、お布団被って!」


フランといちゃつくのは失敗。

そのままその夜は終わった。


次の日。

最初に会ったのはみゆちゃんだった。

ラジオ体操の時間の少し前、蟻の行列を観察していた。


「おはよ、みゆちゃん。」

「おはようございます。みゆ様。」

「ふたりもおはよ。みてみて、かわいい。」


みゆちゃんが私たちにも蟻の行列を見るように促す。

でも今日はちょっとだけ大事な話。


「みゆちゃん、ちょっとだけ今大丈夫?」

私が聞くと、みゆちゃんは目線を私たちに合わせてくれた。

「うん、だいじょうぶ。どうしたの?」

小さく首を傾げて私たちに尋ねる。

なんて切り出せばいいかな。

私が迷っていると、フランがクイズを出した。


「みゆ様、クイズです。

 私の正体はなんで

「わ!ちょっとまって!だめ!」


フランのクイズは大慌てのみゆちゃんによって遮られた。

みゆちゃんがフランの口を抑えてキョロキョロと辺りを見回す。

大家さんしか外に居ないことを確認して、みゆちゃんはほっと一息をついた。


「フランちゃん、それはおそとでしゃべっちゃだめ。

 やくそく。ゆびきりして。」


言われるがままに、フランとみゆちゃんが指切りをした。


(……ん?)


とにかくみゆちゃんはフランが人間じゃないことには気づいてるらしい。

そしてそれは外で喋っちゃ駄目らしい。

みゆちゃんがフランを何だと思ってるのか気になる……。

でも真剣な顔で話題を変えるように促すみゆちゃんに、これ以上は聞けなかった。


次に確認できたのはめぐるちゃん。

部屋でフランの新しい衣装を作っている時に声を掛けることができた。


「次はスチームパンク風にしようと思うんです。」


ニコニコと衣装を縫うめぐるちゃん。

衣装の話をしている間もその指は器用に動く。

めぐるちゃんはお喋りしながらでも作業ができるタイプみたいだ。


「そういえば、フランのしょうた

「ひゃっ!そのはなしは……痛っ!」

「めぐるお姉様!大丈夫ですか!?」


フランの正体、その言葉を言い切る前にめぐるちゃんが指を怪我した。

会話は打ち切り。

フランが一瞬でめぐるちゃんの指に応急処置を施した。


「ごめんなさい、びっくりしちゃって。」

少し恥ずかしそうにめぐるちゃんが謝る。

作業中に声を掛けたのは私たちの方。

私たちからも1度謝った。

「でもどうしたの?フランの……

「それ以上はだめです!」

また口を塞がれた。


「めぐるお姉様、そんなに慌てないでいいですよ。」

「で、でも……。」


私の口を塞いだまま、めぐるちゃんは困惑を顔に浮かべた。

この話はやっぱり大きな声で話しちゃいけないらしい。


「じゃあ私からは何も言いません。

 めぐるお姉様は私を何だと思っていますか?」


フランから逆質問。

めぐるちゃんはちょっと困ったあとに、ちょちょいと小さく輪を作るように示した。

3人でのヒソヒソ話の姿勢。


「フランちゃんは座敷わらしさんだよね……?」


そう来たかー。

見た目お人形さんみたいに綺麗だし、幸運を招く。

確かに要素は満たしてる。


「座敷わらし!すごい褒め言葉です!

 めぐるお姉様、ありがとうございます!」

「え、え?違うの??」


要素は満たしてるけど外れは外れ。

答えを発表しようとしたら、また口を塞がれてしまった。


「考察するのも楽しいので……。

 嫌じゃなければまだ秘密にしてもらっていい……?」


ということでめぐるちゃんへの秘密の共有もお預け。

衣装作りを邪魔するのも悪いので、一旦撤退。


最後は雛乃。

とりあえず電話。


「もしもし雛乃。」

「雛乃お姉様!お元気ですか??」

『2人とも急にどうしたの?』

「いや実はね、フランの正体について話そうかと。」

『今更どうしたの?

 もうとっくに知ってるわ。』


『タイムマシンでやってきた執事型ロボット。

 結局、これが真相でしょ?』


『あ、でもこれは秘密なのよね?

 安心して。誰にも言わないわ。

 たとえ小鳥さんであろうともね。』


『ふふっ。ちゃんと私にはお見通しだから。』


『最初に気付いたのはね……。』


それから雛乃は考察の根拠について教えてくれた。

あまりに自信満々で、私たちにはそれを否定することなんてできなかった。


というわけで、フランの正体発表はお預け。

みんな気にしてるような気にしてないような。

そんな感じだ。


まあでも皆がフランをフランとして好きでいてくれてる。

地球人でも宇宙人でも座敷わらしでもロボットでも。

フランはフラン。

それを知れただけでも、今日の成果は上々だ。

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