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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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幕間 紙芝居アフター


僕は鈴ちゃんが只者では無いことを知っていた。


ご飯を食べないし、睡眠も取らない。

いつも僕が食べるところを楽しそうに眺め、僕が寝付くまで頭を撫でてくれる。


でもそれには気付いてない振りをしていた。

僕がそれに気付いてるとバレたら、またどこかへ消えてしまいそうで。

だから鈴ちゃんの正体には触れないように、ただこの時間が長く続くように祈っていた。


だけどそんな関係も唐突に終わった。


「泣くなよ。俺が悪かったから。」

「やめて……。鈴ちゃんのバカ。」


3人をアパートに送って、自分の家に帰って。

鈴ちゃんを怒ろうなんて本当は元から思ってなかった。

鈴ちゃんは嘘をついてたけど、僕もそれに気づいてないって嘘をついてた。

だからゆっくり鈴ちゃんと話をしようと思ってたのに。

2人きりになると、涙が溢れてしまった。


鈴ちゃんが私の頭を撫でる。

泣くのを堪えたいのに、そんなことをされたら余計に涙が溢れてしまう。

お願い。頭撫でないで。

そう言っても鈴ちゃんは私が自然に泣き止むまでゆっくりと頭を撫で続けた。


「もう大丈夫?」


鈴ちゃんの声に頷いて答える。

すると鈴ちゃんは優しく笑いかけてくれた。


「嘘ついててごめんね。」

優しい声のまま、僕に話しかける。

返事をしようとしたけど、言葉にできなかった。

そんな僕の気持ちを察して、鈴ちゃんは僕に語りかける。


「宇宙人って言っても信じて貰えないかなって……。

 あ!このみのことを信じてない訳じゃないよ!」


「でもあまりにも突拍子なさすぎるっていうか……。」


「今まで信じて貰えたこと少なかったし……。」


鈴ちゃんが手をパタパタとして、申し訳なさそうに話す。

さっきまでの優しい声もいつの間にか、おどおどとした声に変わっていた。

言い訳をする時のいつもの声。

スムーズに言い訳モードに切り替わっていくのが可笑しくて、僕はつい笑ってしまった。


「あ!今笑ったでしょ!

 俺にとっては大事なことなのに!」


今度はむくれた顔になった。

鈴ちゃんが僕の肩を掴んで揺さぶる。

真剣な話のはずなのに、なんだかちょっと楽しい。


「もしかしてやっぱり嘘だと思ってる……?」


今度は少し涙目で僕の顔を見上げた。

でも僕が首を振ると一転してほっとした表情になった。


「良かったー……。

 このみに伝えるの、けっこう勇気いったんだぜ?」


その安心しきった笑顔を見て、僕もようやく落ち着いてきた。

これでようやくゆっくりと喋れる。


「僕は鈴ちゃんの正体を知ったけど……。

 居なくなったりしない?」


1番大事なこと。

これだけは聞いておきたかった。


ちょっとの沈黙。

でもその沈黙は楽しそうな笑い声で遮られた。


「ふふっえへへ。

 逆!逆なんだよ!

 これからはずっと一緒!」


言うや否や、鈴ちゃんは僕の胸に飛び込んできた。


「今まではさ!

 仲良くなりすぎると寂しすぎて辛かったんだ!

 でもフランちゃん居るなら寂しさ共有できるし!

 ほら!撫でて!もっと仲良くなろ!」


不安を消し飛ばすように、僕にじゃれつく。

撫でても撫でても満足なんてしなかった。

終いには僕にキスをしようとしてきた。

さすがに恥ずかしくて、つい鈴ちゃんを布団に包んでしまった。


「り、りんちゃん!そういうのはまって!」

「えー、いいじゃん。もっと仲良くなりたい!」


布団に包まったまま、ベットの上をコロコロと転がる。

もう暗い雰囲気なんてどこかへ行ってしまった。


「と、とりあえずお風呂行くから!」

「じゃあ俺が洗ってあげる!」

「や、やだよ!恥ずかしいもん!」

「いいからいいから!」


布団から飛び出して僕の手を引く。

その手はすごく暖かくて。


「鈴ちゃんの手、すごく温かいね。」

「ああ!宇宙人だからな!」


歯を剥き出しにして、心底楽しそうに笑う。

僕も釣られて同じように笑った。


もう遠慮も嘘もない。

今まで気づかない振りをしたことにも触れられる。

その喜びを噛み締めて、僕たちの距離は前よりちょっと近くなった。


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