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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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本日最後のお客様


「おかえりなさい、お嬢

「ただいま帰りました!お嬢様!」

「中々似合ってんじゃん!兄弟!」


今日はもうこれで最後かなという時間。

フランと鈴がお客様としてやってきた。

何度来たってフランは可愛い。


「鈴ちゃん!来てくれてありがと!」

鈴の声を聞いて、このみちゃんも駆けてきた。

そろそろ来るかなーってずっとソワソワしてたからね。

来てくれて良かった。

「このみー。今日は執事なんだろ??

 執事っぽくお出迎えして!」

鈴がにやりと笑う。

このみちゃんは1つ咳払いをして気持ちを切り替えた。

「おかえりなさい!お嬢様!」

キラキラとした笑顔。

それを見て鈴は満足そうに頷いた。


「お嬢様お嬢様。私にももう1回お出迎えお願いします。」

フランが私のコートの裾をちょこんと引っ張る。

「勿論ですよ、お嬢様。おかえりなさい。」

フランの頭を優しく撫でる。

よく懐いたわんこのように撫でられるフラン。

その可愛さで私の体力は完全に回復した。

あと何時間だって働ける。


「ではお嬢様方!なにをして遊びましょうか?」


2人ともご飯は食べられない。

なので問題はなにをして遊ぶかだ。

このみちゃんもそれを分かってるから、笑顔でそう切り出した。


でも2人は首を横に振って答えた。


「せっかくだし、このみの可愛い姿たくさん見たい。」

「私もお嬢様のことじっくり見たいです!」


2人がそれを所望なら。

私たちは2人からよく見える位置に立って、ポーズを取る。


「お嬢様、ウィンクしてみてください!」

フランが黄色い声をあげてくれる。

言われるがままに、私はウィンクをした。

「可愛い!可愛いです!」

きゃーっと小さな悲鳴。

フランのテンションは上がりに上がっている。

「お嬢様に喜んでいただけて私も嬉しいです。

 こういったポーズはいかがでしょうか?」

今度は髪をかきあげる。

フランの撮影会で格好いいなと思ったポーズ。

それを見てもフランは足をパタパタと動かし、大喜びしてくれた。


「このみもなんか可愛いポーズして!」

「え、え、可愛いポーズ?

 こ、こうでいいの?」


このみちゃんが鈴に向かってピースする。

だけどそれじゃまだ足りなかったらしい。


「駄目、もっと可愛いの考えて。」

鈴からの駄目だし。

そして鈴はカメラマンさんを手招きした。

「可愛いポーズになるまで何回も撮り直すからな!」

「かしこまりました。……このみ、がんば!」

カメラマンのお姉さんもこのみちゃんのことを気に入ってるのか、無責任に応援した。

可哀想に……。

私は高みの見物と洒落込むことにしよう。

フランの隣に立って、のんびりとその様子を眺める。


リテイクを繰り返してその最後。

指でハートを作ってはにかむこのみちゃん。

それを見て、鈴は大仰に頷いて一度撮影を終わりにした。


「鈴ちゃん、無茶振りひどいよ……」

「ごめんな、ついいじわるしたくなっちった。」


カメラマンさんに写真を見せて貰って鈴はにこやかに笑った。

まあ2人とも楽しそうだし口出しすることはないだろう。

さてと……。


「お嬢様??」


フランがさっきからキラキラと目を輝かせて私を見ている。

次は私の番。

分かっていても回避することはできなかった。

顔を赤くするこのみちゃんと入れ替わりでフランの前に立つ。


「さぁお嬢様。どんなポーズが宜しいですか?

 お嬢様の望みなら何でも叶えましょう。」


もう腹はくくった。

どんなリクエストでもどんと来い。


フランは少し考えこんで、その口を開いた。


「お嬢様、大好きです。」

「へ?」


ぱしゃっ


予想だにしない発言に、執事モードが強制解除。

しかもその一瞬を写真に撮られた。


「ふふふっ。今日は執事モードばかりでしたからね。

 執事姿の自然体お嬢様もみたかったのです!」

「はい。こいつでいいかな?」

「ばっちりです!

 チップをさしあげます!」

「どうも、ごちそうさん。」


フランがチップの代わりに店内アンケートにカメラマンさんへの褒め言葉を書いて渡した。

カメラマンさんはホクホクとした顔で、写真を現像しにいった。


「フラン、急にそう言うのはずるいよ。」

「えへへ。驚いてるお嬢様もかわいかったです。」


フランが私の頭に手を伸ばす。

私はいつも通りにしゃがんで頭を撫でて貰った。


「こほん」

後ろから咳払い。

見上げるとそこには小鳥が居た。


「あ、小鳥。どうしたの?」

「お前らは素に戻りすぎ。周り見ろ。」


小鳥に促されて周りを見る。

するとお客さんも他のスタッフもフランに注目していた。

あの子すごく可愛い。

お姫様?

そんな声が聞こえる。


あ、まずい。

前回のメイドカフェの時と同じ流れ……。


視線に気付いたフランがお客さんと執事、その種別を問わず小さくお辞儀をした。

そして鈴の手を引いて、お店から出ていく。


「ね、ねぇ!あの子何者!?」

「執事さんとはどんな関係なの!?」


一応従姉妹であることだけは説明。

それ以外は何とも言い難く、私は口を閉ざして誤魔化した。


「そういえばあの子からお嬢様って呼ばれてたよね。

 まさか執事さんって本物のお嬢様??」


お客さんがキラキラした目を向けてくる。

いや、違うんだよ。

フラン専用のお嬢様であって、本物のお嬢様ではないんだよ。


「そういえば、お昼は王子様とも呼ばれてた……」

「何それ!どういうこと!?王子様でもあるの??」


隣で仕事していた執事さんが、さらに火種を投下した。

そのせいでお客さんが更に盛り上がってしまった。

執事さんも仕事を忘れて、私の正体の考察に2人で熱を上げ始めた。


ちらりと時計を見ると18時。

ヘルプで入ってる私たちはもう上がりの時間だ。

よし、逃げよう。


「僕はそんな大層なものではありませんよ。

 それでは失礼させていただきます。」

「え!……ほっといていいんですか?」

「……まぁ多分大丈夫だよ。」


このみちゃんの手を引いて撤収。

小鳥も少し迷ったあとにその後ろをついてきた。


「あれ、放っといて大丈夫か?」

小鳥が心配そうに聞いてきた。

「うーん、正直分からないかな。

 ああいうのって否定しても火に油かもだし。」

私が不登校になってる間に、変な噂がたくさん流れてたのを思い出す。

あれも結局否定しきれなかったし。

「まあこのお店の執事さん、みんな良い子だから。

 変な噂にはならないって。」

それには2人とも納得してくれた。

店長さんが選んだ子たちで構成されたお店だもん。

悪い噂を立てるような子はいないはず。


更衣室に戻り、フランと合流。

着替えさせて貰って、衣装は返却。

これで今日のミッションは完遂だ。

あとはもう帰るだけ。


と思ったらこのみちゃんから声を掛けられた。


「あ!すいません!

 この後って3人ともお時間ありますか?」


私とフランと小鳥、全員に用事?


「鈴ちゃんの紙芝居?完成したらしいです。

 よく分からないけど、一緒に来てくれませんか?」


鈴の紙芝居。

つまり鈴の事情について知る時が来たのだ。

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