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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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めぐるちゃんへのプレゼント


「ただいまー」

「おかえりー」

「……お、お邪魔してます。」

「……なんでこっちに居んの?

 雛乃まで連れ込んで。」


小鳥とめぐるちゃんのお家。

帰ってきた小鳥に声を掛けると冷めた目で見られた。

勝手に入ってゲームしながらだらだらしてただけなのに。


「ゲームするならそっちの家でいいだろ。

 まぁいいや。あたしたちも混ぜろ。」

小鳥がコントローラーを握る。

「今日はお買い物行ってたんですよね。

 良いものは見つかりましたか?」

めぐるちゃんもコントローラーを拾う。


「おっと。そこまで。」

みゆちゃんが一度ゲーム機の電源を落とした。


「あ、みゆ。いじわるすんな。」

小鳥がコントローラーを手放し、みゆちゃんを抱えあげた。

「きゃっ。いじわるじゃないよ。」

まあでも小鳥もみゆちゃんも楽しそうにしてる。

みゆちゃんが理由なく意地悪するわけはない。

そんなことはこの場に居る誰もが知っている。


「えっと……私からめぐるにプレゼントがあるのよ。」

「え、私に?どうして?」


めぐるちゃんはキョトンとしている。

写真を1枚あげただけ。

めぐるちゃんの認識はそんなものなんだろうか。


「ほら、雛乃に小鳥の可愛い写真あげたで

「わ!ちょ、ちょっと待って!」


私の説明をめぐるちゃんは慌てて遮った。

怪しすぎる反応。

当然、小鳥もそれに気付いた。


「おいバカ、ちょっとめぐる抑えて貰っていいか?」

小鳥はニコニコと私にそう命令した。

「が、がってんだよ。めぐるちゃん、動かないでね。」

一応めぐるちゃんを私の目の前に座らせた。

めぐるちゃん、許可貰ったって言ってなかった?


「こ、小鳥ちゃん!違う、違うからね!

 ほら前に撮らせてもらった……。」

めぐるちゃんが慌てて釈明する。

「どれ?」

小鳥は端的にそう問うた。

「ちゃ、ちゃんと許可貰ったやつだよ。」

「今このバカ、可愛い写真っつったぞ。

 そういうのは他の人に見せるなって言ったよな。」

「こ、これ!」

めぐるちゃんが大慌てでスマホの画面を開いた。

そこに映るのはぎこちない笑顔を浮かべる小鳥の写真。

それを見て小鳥はその顔から笑顔を消した。


ちょっとの沈黙。

そして小鳥は口を開いた。


「……悪い。別のと勘違いした。」


その言葉を聞いて、めぐるちゃんはほっと息をついた。

でもあれ?

それって……。


「喧嘩になるかと思いました……。

 誤解が解けたようで良かったです!」

私の思考を遮るように、フランが元気にそう言った。

「ヒヤヒヤしちゃったわ……。

 私のせいで喧嘩になったら申し訳ないもの。」

雛乃もほっとした風に息を吐いた。

まぁ雛乃が気にしてないならいいのかな……。

私は一旦口にチャック。

成り行きを見守ることに徹しよう。


「じゃあはい。これがプレゼントよ。」


雛乃が小さな紙袋を渡す。

その中身を私たちはもう知っている。

めぐるちゃんが喜ぶものだ。


「わ!ありがと雛乃ちゃん!

 すごく可愛いね!」


めぐるちゃんは嬉しそうにそう言った。

クマノミを象ったキーホルダー。

めぐるちゃんの好きそうな可愛いデザイン。

ふっふっふ。

でもこの段階で喜ぶのはまだ早いのだよ。


「それと……。小鳥さんも、もし良かったら……。」

おずおずと同じ小さな紙袋を小鳥にも。

「あれ?あたしも貰っていいのか?」

雛乃はこくりと頷いて答えた。


「じつはみんな、おなじのかったの。」

みゆちゃんも同じキーホルダーを取り出す。

もちろん、私もフランも同じものを買った。

みんなが取り出したのを見て、めぐるちゃんはその目を輝かせた。


「もしかして!!お揃いですか!?

 可愛い!可愛いです!」


1人1人のそれを食い入るように眺める。

めぐるちゃんはお揃いが好き。

みゆちゃんの助言は大当たりのようだ。

まさかここまで喜んでくれるとは。


「こういうの、すごく憧れてたんです!

 めちゃくちゃ仲良しっぽいです!」


めぐるちゃんは勢いよく家の鍵を取り出すと、すぐにキーホルダーを取り付けた。


「雛乃!ありがとね!」

「お礼ならみゆちゃんに言って。

 選んでくれたのはみゆちゃんよ。」


めぐるちゃんがみゆちゃんを手招きした。

そのまま、みゆちゃんはめぐるちゃんの腕の中に収まった。


それから少しみんなでゲーム。

すぐに夕方になった。


「もうこんな時間。

 そろそろお暇するわね。」

「あ、雛乃!送るね!」

「わたしもついてく。」


雛乃を見送りに、めぐるちゃんとみゆちゃんが立ち上がる。


「お二人だけだと心配です。

 私も行ってきていいですか?」


私が頷くと、フランも後を追うように走っていった。

小鳥と2人残された。

ちょうどいい機会だ。

聞きたかったことを聞こう。


「小鳥。人に見せられない可愛い写真があるの?」

「……。!?」


いやめぐるちゃんとの会話的に、ね?

そんなの気になるに決まってるじゃん。


「ね、ねぇよ。」

「嘘つき。ほら、白状しなよ。

 可愛い写真、見せて。」


小鳥が全力で目を逸らす。


「や、やっぱり皆が心配だ。あたしもいってく

「駄目。みーせーてー。」

「うわ!まとわりつくな!離せ!」


ぱしゃっ


シャッター音?

振り向くとそこにはめぐるちゃんがスマホを構えていた。


「え、えっと……鍵忘れたんで取りに帰ったんです。

 それと……ごちそうさまでした!」


めぐるちゃんは珍しく早足で駆けていった。

 

ふむ。

今の私は小鳥に真正面から抱きついている。

それを写真に撮られた?


……。


「消して!」「消せ!」


2人でめぐるちゃんを追いかける。

追いつくとめぐるちゃんはその写真を消してくれた。

結局、全員で雛乃を見送る。


小鳥の可愛い写真については謎のまま。

まあいい。

そのうち見れる機会はあるだろう。


まだまだ先は長い。

今はその時をのんびり待つことにする。

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