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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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めぐるちゃんへの寝起きドッキリ


めぐるちゃんが漫画を描くのは楽しみ。

その手伝いができたのも嬉しい。

でもそれはそれとして。

小鳥と見つめ合って照れてるところをじっくり見られた。

それはとてもとても恥ずかしい。

ということで、ドッキリを仕掛けることにした。

小鳥にその旨メールすると、快く協力してくれることになった。


「おじゃまするよ……」

「おじゃまします……」


フランと2人で小鳥たちの部屋へ。

声を潜めて家に入ると、小鳥は静かに歓迎してくれた。


「めぐるの部屋は散らかってるから気をつけろよ。」


小鳥がそっと扉を開く。

そこにはいつもの整頓された混沌部屋。

相変わらず雑多な玩具やゲームが綺麗にギチギチに詰め込まれていた。

その奥にはめぐるちゃん。

小さなベッドにスヤスヤと眠っていた。


めぐるちゃんの隣に寝る。

そして明日の朝、驚くめぐるちゃんを私とフランで抱きしめて褒めまくる。

きっとめぐるちゃんの照れる表情を朝から楽しめる。

完璧な作戦。


「私が道を作ります。

 足元に気をつけてくださいね。」

フランがゆっくりと物を退かして道を作る。

さすがの精密動作性。

物音1つ立たない。

「……」

私も意識を足元に集中させて歩く。

もしめぐるちゃんが起きちゃったら作戦は失敗だ。

抜き足差し足忍び足。


「忍者みたいで楽しいね。」

「はい。潜入任務、わくわくします。」


物は多いけど道は長くない。

ヒソヒソ話をしていると、すぐにめぐるちゃんのベッドにたどり着いた。

 

シングルサイズのベッド。

めぐるちゃんを真ん中にぎゅっと身を寄せて布団に潜り込む。


「それじゃフラン。おやすみなさい。」

「はい。お嬢様もまた明日です。」


フランが優しく手を握る。

2人の温かさを感じながら、私は眠りについた。


そして翌朝。



「……あれ?」

そんなめぐるちゃんの声で私は目を覚ました。

驚いてくれるかな……。

目覚めたばかりの頭でぼんやりとそんなことを考える。


そしてその次の瞬間だった。


「ひゃ」


めぐるちゃんの驚く声。

それを聞きたかったのに。


「ふ、ふらん。ど、どうしよ……??」

めぐるちゃんが力強く私を抱きしめてる。

しかもそのことに気づいてない。

「めぐるお姉様、寝惚けてるみたいですね。

 起こしちゃ悪いですよ。

 起きるまで待ってあげてください。」

フランがヒソヒソ声で囁く。

起こさないようにって言われても……。


「おうじさま……かっこいいです……。

 かっこいい……かわいい……。」

すごく近い距離。

それだけでもドキドキするのに、辿々しく私を褒めてくる。

こんなの耐えられる訳がない。

「め、めぐるちゃん起きて……」

耐えられずに声をかける。

するとめぐるちゃんはより一層強く私を抱き締めた。


「フラン、助けてぇ……」

「お二人が仲良しなの可愛いです。

 もうちょっと見守らせてください。」


フランはニコニコとそう言った。

助けて貰えそうにはない。


「おうじさま……なでて……ほめて……」

めぐるちゃんが小さな声でそう言った。

もうなるようになれだ。

言われるがままに私はめぐるちゃんを撫でて褒める。

「めぐるちゃんはいつも頑張ってるね。

 みゆちゃんのおねえさんしてくれてありがとね。

 それにいつもかわいいよ。」

「えへへ……おうじさますき……」

とろんとした笑顔。

可愛いけど今はそれに見惚れてる余裕はない。


「もっとなでて……」

めぐるちゃんの甘えた声。

助けを求めるようにフランを見ても笑顔を浮かべるばかり。

完全に見守る姿勢だ。


「よしよし……。」

早く力抜いてー……。

そう願いながら髪を撫でる。

これ以上は本当に心臓が保たない。


優しく髪を撫でて、囁くように褒める。

それを繰り返すとちょっとずつめぐるちゃんの力が抜けていく。

あとちょっと……。


(……いま!)


完全に力が抜けたのを確認して腕から抜け出す。

めぐるちゃんがスヤスヤと寝息を立てるのを確認して、私とフランは大慌てで自分の部屋へと戻った。


それから少しして、ランニングの時間。



「あ!王子様!」


めぐるちゃんが元気よく駆け寄ってきた。

私は平静を装って普段通りの挨拶をする。


「おはよ。めぐるちゃん。」

「聞いてください!

 今日、王子様が夢に出てきたんです!」


すごく幸せそうにめぐるちゃんが夢の内容を語る。


(幸せそうなら成功と言ってもいいのかな……?)


寝起きドッキリの成功ってなんだろう?

相手が驚くこと?

それともお互いにいい気分で終えること?


めぐるちゃんの話を聞きながら私はそんなことを考える。

でもその答えは考えたって出てこない。


まあこんなに楽しそうなら……。


成功ってことにしておく。

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