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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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めぐる王の命令


「聞いてください!

 みゆ様、将棋すごく強いんですよ!」


家に帰るとフランはそう言って楽しそうに私の胸に飛び込んできた。

それと同時にみゆちゃんも小鳥の胸に飛び込む。


「みゆちゃん、飛車角落ちで勝ったんですよ!」

「え!すごい!」


私、まだ4枚落ちにすら勝てないのに。

みゆちゃんはポテンシャルの塊だ。

この成長速度ならいつかはフランにも勝てるかもしれない。


小鳥に撫でられてみゆちゃんは上機嫌。

私も小鳥も散歩を楽しんだ。

フランもいい勝負ができてホクホクしてる。

みゆちゃんの命令は皆を幸せにしてくれた。


「えっと……じゃあ次は私の番ですね。」


こほんと小さな咳払い。

そしてめぐるちゃんはもじもじとした。


「どうしたの?」

「あ、いえ……。

 私のお願いは本当に自分本位なものなので……。」


セクハラ系じゃなければなんでもいいよ。

めぐるちゃんのおかげで小鳥にお嬢って呼んでもらえたしね。


「えっと、2人で絵のモデルになってくれませんか?」

「絵のモデル?」


めぐるちゃんは今、オリジナルの漫画を描こうと思っているらしい。

その構図の参考に私たちを使いたいとのことだ。

それくらいはお安い御用。

小鳥もちょっと迷ったあとに頷いてくれた。


「あんまり乗り気じゃない?」

小鳥はちょっと渋い顔をしていた。

「いや、めぐるの絵って……。」

ちょっと言い淀んで口を閉じた。


めぐるちゃんのイラストなら何度も見せて貰ったことがある。

王子様と執事をモチーフにした可愛いイラスト。

それがついに漫画になるのか。

それに携われるのはとても嬉しい。


「……めぐる、R指定はねぇよな?」

「だ、大丈夫。

 漫画はほのぼの系にする予定だから……。」


カメラの準備をするめぐるちゃんに小鳥が何か話をしにいった。

コソコソ話っぽいから私はできるだけ聞かないように、フランとみゆちゃんと話をして待つ。


「おさんぽたのしかった?」

「うん、すごく楽しかったよ。」

「よかった。ことりおねえさん、かわいかった?」

「うん、可愛かったよ。手を繋ぐと照れてた。」

「照れてねぇ!バカ!」


私は小鳥たちの話聞かないようにしてたのに。

まったくもう。


「みゆ様、将棋の続きしませんか?」

フランがみゆちゃんの袖を引っ張った。

「うん、つぎもまけない。」

みゆちゃんもそれに応えた。

将棋盤を持ってその場に座り込む。

今度のハンデは飛車が無いだけ。

めぐるちゃんの命令が終わる頃には、決着がついてるかな。


「お待たせしました!」

2人を見守っていたら、めぐるちゃんの準備も終わったみたい。

指示を待つために、小鳥と2人でめぐるちゃんの前に並ぶ。


「じゃ、じゃあ小鳥ちゃんは壁際に……。」

小鳥が壁際に立つ。

めぐるちゃんのしたいことが分かった。

「じゃあ私がこっちだね。」

小鳥の前に立つ。

そして小鳥が逃げないように、手で逃げ道を塞いだ。


「いや、ちょっと待てよ……」

「写真撮るので動かないでくださいね!」


小鳥の抗議はめぐるちゃんによって封殺された。

顔を赤くして照れてる。かわいい。

この写真はあとで貰おう。


「……♪」


めぐるちゃんが鼻歌混じりに撮影を繰り返す。

あれ……でも……。


「……長くない?」


もう全部の角度から撮られたはず。

さすがにこの距離をずっとは私も保たない。

小鳥、めっちゃ格好いいもん。

小鳥かわいいーって思うことで耐えてたのに。


「てめぇも照れてんじゃねえかよ。」

「気の所為だよ。そっちこそ顔赤いよ。」


見れば見るほど小鳥の顔は格好いい。

今はまっすぐに見つめ合っている状態。

役者魂を総動員して冷静を装いたい。

でもそれをするにしても小鳥がかっこよすぎる。

ちょっと目線を逸らそう……。


「あ!目線逸らさないでください!」

「……」

「……」


目線を逸らすこともできない。

私たちは言われるがままにその体勢で固まる。

それから一分くらい。


「もういいですよ!

 二人ともありがとうございました!」


めぐるちゃんが一度手を叩いた。

私たちはその場にヘロヘロと腰を下ろす。


「お嬢様。大丈夫ですか?」

「ことりおねえさんもだいじょうぶ?」


2人が将棋をしながら声をかけてくれた。

私たちは2人そろって力なく返事をした。


「じゃあ次の構図を……」

「ごめんめぐる」

「ギブ」


小鳥と意見が合った。

その様子を見て、めぐるちゃんはなぜかすごく嬉しそうに笑った。


「すごく参考になりそうです。」


そう言って、最高に幸せそうな笑顔を浮かべた。




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