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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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みゆ王の命令


「はぁ……。なんでこんなことを……。」

「まぁまぁ。みゆ王の命令だから。」


いつものランニングコース。

そこを私と小鳥は手を繋いで歩いていた。


みゆちゃんからの命令は2つ。

『フランちゃんはわたしたちとあそんで。』

『おねぇさんたちはふたりでおさんぽしてきて。』

たまには私たち抜きでフランと遊びたいのかもしれない。

小鳥はともかく、私はフランにべったりだしね。

ここはお姉さんとして引き下がろう。


でもお散歩にも1つ条件があった。


『ふたりはて、つないでね。』


意図の分からない条件。

まあでもそれくらいはお安い御用だ。

私たちは手を繋いだ。


それがついさっきの話。


「みゆもたまによく分からねえな」

隣の小鳥が呟く。

「ちょっと喧嘩してるように見えたのかもね。」

昨日の一件以来、小鳥は少しトゲトゲしていた。

私は照れ隠しって分かるけど、2人には機嫌が悪いように見えたのかも。

「あー……。そりゃ悪いことしたな。」

少し申し訳なさそうな顔。

「小鳥は自然体がちょっとこわいからね。

 私からしたらめっちゃ格好いい!って感じだけど。」

「うっさい、バカ。」

またバカって言われてしまった。

悲しい。


それにしても暑い。

もう真夏だ。

冬だったらもっとくっつきに行けるのになー。

照れてる顔が見たいけど、さすがにこの暑さでくっつきにいく気力はない。


「あ、そうだ。小鳥、ちょっとだけ手離して。」


フランが暑さ対策セット持たせてくれたんだった。

飲み物。

塩飴。鈴がレシピ教えてくれたんだっけ。

あ、いいものみっけ。


「小鳥、じゃーん。日傘ー。」

「お、いいじゃん。」


日傘を差すとけっこう楽になった。

フランセレクトの日傘。

その効果は絶大だ。


「ほれ小鳥。入り給え。そして持っておくれ。」

小鳥に傘を差し出す。

小鳥の方が背高いからね。

そっちが持つ方が一緒に傘に入りやすいだろう。

「はぁ……。はいよ。」

小鳥が傘を握る。

傘を持たない方の手を私は握った。


「2人だと昔を思い出すねー。」

「お姫様抱っこはしねえぞ。」

「暑いもんね。」

「暑さは関係ねぇよ。」


まあでも涼しくなったらしてもらおう。

至近距離で小鳥の照れる様が見たい。


「冬になったらしてもらおうとか考えてるだろ?」

なぜかバレた。

さすが小鳥だ。

私のことをよく分かってる。

「でもちょっと外れ。

 冬までは待たないから。」

ちょっと暑いくらいだったら全然我慢する。

9月くらいにはしてもらえるといいな。


「……あんまり太んなよ。」

「フランが健康管理してくれてるから大丈夫。」


ちゃんと毎日運動もしてるしね。

小鳥にお姫様抱っこして貰うためにも、運動は続けなきゃだね。


とりあえず折り返し地点。

ベンチに座って一休み。


「小鳥、これあげる。」

フランが持たせてくれたおやつのスティックパン。

分けて食べてって言われてる。

「おう。ありがとよ。」

小鳥が手を伸ばしてきた。


「駄目。口開けて。」

「あ?」

「ほれほれ。口を開けて。」

「……」


一瞬黙ってから、小鳥は口を開けてくれた。

私はその口にスティックパンをねじ込む。


「美味しい?」

「……ん。でも次はねじ込むな。」


小鳥はあっという間にねじ込んだ分を呑み込んだ。

さすが小鳥だ。


「まだあるよ。いる?」

私がそう言うと、小鳥は少し迷ったあとにもう一度口を開けた。

「はい。あーん。」

今度はちょっとずつちぎって渡した。

小鳥は旨い旨いとどんどん食べていく。


「ほい、これで最後。」

「まじか。ていうかほとんど食っちまったな。悪い。」

「いいよいいよ。餌付けするの楽しかった。」


美味しく食べてくれたから、フランも喜ぶ。

いいお土産話ができた。


「よし、じゃあそろそろ戻ろっか。

 疲れてたらおんぶしてあげるよ。」


私が言うと小鳥は鼻で笑った。

それからはひたすらに他愛もない話をしながら帰った。

フランの作る料理で一番美味しいもの。

卒業から再会までに何をしてたか。

そんな取り留めのない話。


「まあ今日は久しぶりにのんびり話せて楽しかったよ。」

アパートに戻る直前、小鳥はそう呟いた。

「私も楽しかったよ。たまにはこういうのもいいね。」

私もそう返した。


「じゃあ戻るか。」

「うん。」


小鳥がアパートの扉に手をかける。

中では3人が遊んでることだろう。


「また次も楽しみにしてるよ。……お嬢。」

もう一度小鳥はそう小さな声で呟いた。


(……おじょう?)


「お嬢!今お嬢って呼んでくれた!?」

「うっさいバカ!騒ぐな!」

「みんな!小鳥がお嬢って呼んでくれた!

 聞いて!小鳥がお嬢って呼んでくれた!」


扉を開けてアパートの中へ。

さぁ次はめぐるちゃんの命令だ。


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