表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
125/298

小鳥から私の呼び方会議

あけましておめでとうございます。

去年は読んでくださる皆様のおかげで楽しく執筆を行うことができました。

今年もよろしくお願いいたします!

コスプレ大会が終わった後。

みゆちゃんとめぐるちゃんはそれぞれの家へ。

フランは夕飯の料理中。

なぜか鈴はまだ私の部屋。

そんな中で小鳥がボソリと呟いた。


「……不便だ。」


突拍子もない発言。

なんのことだかさっぱり分からない。

でもとりあえず私は相槌を打った。


「うんうん。分かる分かる。やっぱりそうだよね。」

「確かにな!俺もそう思ってた!」


私の相槌に鈴も追随した。

それを見て小鳥は大きなため息をついた。


「やっぱりなんでもねぇ。」


小鳥はそう言ったけど、一度出したものを引っ込められると気になってしまう。

ていうか小鳥は聞いてもらえるのを待ってる。

そんな気がする。

ふと横を見ると鈴と目が合った。

私たちは同じ結論に達したらしい。


「ねえ教えてよ。何の話?」

「なーなー。俺らが相談に乗ってやるよ。ほれほれ。」


2人で小鳥を指でつつきまくる。

小鳥が黙ってる時はこれが一番手っ取り早い。

高校の時もそうだった。


「あー!もう!鬱陶しい!」

小鳥がそう言って私と鈴の頭を1回ずつ叩いた。


「ひどい。頭叩かれたらバカになっちゃうじゃん。」

「そうだそうだ!俺らの頭脳が失われたらどうする!」

「てめえらは最初っからバカだろ!」


ちょっとだけ口喧嘩。

まあそこは割愛する。

小鳥の言葉の真意はすぐに教えてくれた。


「いやさ。お前の呼び方どうしようかなって。」

それは拍子抜けしちゃうくらい、些細な悩みだった。

「今までどおりバカでいいじゃん。

 別に小鳥にバカって言われても気にならないよ。」

でもなぁ、と小鳥が唸った。

まあ別に呼び方はなんだって良い。

本名じゃなければ私はなんでもウェルカムだ。


「そういえば鈴は私のこともう姫って呼ばないの?」

高校の時、鈴は私のことをそう呼んでいた。

よく小鳥にお姫様だっこして貰ってたから。

「今の俺にとって姫はこのみだからな。

 お前はもう姫の座からは落ちたぜ。」

残念だったな、と鈴が笑う。

別に鈴のお姫様になりたいと思ったことはない。


「でも確かになー。新しいあだ名決めないとなー。」

鈴も頭を抱え始めた。

私も考えてみるか。


一分ほどのシンキングタイム。

最初に閃いたのは私だった。


「よし。2人は今日から私をご主人様って呼んで。」

「呼ぶわけねぇだろ、バカ。」

「バーカ!バーカ!」

「鈴には言われたくない!バカ!」


またちょっと口喧嘩。

フランが料理中で良かった。

ここに居たら絶対に怒られてた。

 

「……」

よく見たらフランが台所からこっちを見ていた。

やばい。あとで怒られる。


「じゃ、じゃあ2人はいいアイデア浮かんだ?」

とりあえず元の話題に戻ろう。

このまま口喧嘩してたら、フランにガチめのお説教をされてしまう。

「もうバカでよくないー?」

でも鈴はそんなことお構いなしだ。

いったん私は鈴の言う事をスルーした。


「おーい、無視すんなー。おらー。」

鈴がツンツンとつついてくる。

さっき私も小鳥にやったことだから注意しにくい……。

「もう……。ほら小鳥。次は小鳥の番だよ。

 早く私のあだ名教えて。」

つんつんつんつんつんつん。

鈴が私をつつくスピードを上げていく。

小鳥。早く答えておくれ。

良い解答を用意して鈴のやつを止めてくれ……。


「うーん……」

小鳥は尚も悩んでいた。

よし、もうしょうがない。

鈴は力ずくで止めよう。


「お困りのようですね!」

鈴を取り押さえる直前、フランの声が響いた。


「料理はもう大丈夫なの?」

普段フランは料理中に台所から離れたりしない。

たとえそれが煮込み料理やオーブン料理であっても。

「大丈夫じゃないのですぐに戻ります!

 でもひとことだけ!」

フランはそう言って、小鳥を向いた。


「お嬢様って呼び方がオススメです!

 小鳥お姉様なら格好いい執事になれます!」


ただそれだけ言って、フランは台所に戻っていった。

小鳥はそれを聞いて少しぽかーんとしていた。


「フランちゃん俺はー?」

「鈴お姉様はまだだめです!」

「ちぇー」

そんな声を聞いて、小鳥はふふっと笑った。


「お嬢様かー。ふふっ。それもありかもな。」

小鳥が笑いを抑えながら言った。

「様はつけたくないんじゃなかったの?」

でも私の言葉に少しだけ考え込んで、そして答えを出した。


「よし。じゃあお前は今日から『お嬢』な。」


お嬢。

ちょっと恥ずかしいけど悪くない。

というよりけっこう好きだ。

可愛いけどちょっと格好いい。


「うん、中々気に入った。ほれほれ呼んでみ?」

「はいはい、お嬢。」


うむうむ。

中々いい気分だ。


「でも執事になる訳じゃねえからな。」

小鳥はお茶を飲みながらそう言った。

「えー。残念。でももう1回お嬢って呼んで。」

「お嬢。これで満足か?」

「まだ。もう1回。」

何回か繰り返したら呼び名がバカに戻ってしまった。


「お前がバカな時はバカって呼ぶからな。」

小鳥は最後にそう言った。


「ご飯できましたよー!」

台所からフランの声。

「じゃあ俺はそろそろ帰るわ!」

フランの声に合わせて、鈴は席を立った。

そして部屋から出る直前。

私に指を差してこう言った。


「またな!兄弟!」


そうして鈴は走り去るように帰っていった。

お互い女性なのに兄弟?

まあでも鈴の中でも呼び名は決定したらしい。


小鳥からは『お嬢』。

鈴からは『兄弟』。


そんなちょっとしたアップデートに私は心を躍らせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ