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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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鈴とこのみちゃん


「先輩にフランちゃん!ようこそです!」

「ようこそー!寛いでって!」


雛乃がこのみちゃんを許した次の日。

私とフランはこのみちゃんの家を訪れていた。

小さいけど綺麗なアパート。

比較的最近建てられたような駅近の物件だった。

 

「この前はお肉とお菓子ありがとうございました。

 まさか先輩がくれてたなんて……。

 びっくりしちゃいました!」

「まさかこのみとお前が友達だとはなー。

 世間って狭いな!」

「えっと……」


今日は謝りに来たはずだったんだけど……。

謝るタイミングがない。

2人がすごくニコニコと話すし、フランもその輪の中に飛び込んでしまった。

どうしよう……。


「先輩、謝らないでくださいね。」

困っているとこのみちゃんがそう言った。

「本当に僕がおかしかったので……。

 先輩が雛乃さんのこと隠すのも当然ですもん。」

そう言ってこのみちゃんはバツが悪そうに目を伏せた。


「うん、今回はこのみが全部悪い。

 それと肝試しは俺が全部悪かったな!

 それも併せてごめんだぜ!」

鈴は悪びれることもなく、笑顔でそう言った。

「というわけで、2人まとめて抱いていいぞ!

 俺がゆるぃだっ!!」

さすがにアホな発言は看過できなかった。

反射的に手が出てしまった。


「あ、ごめんね。このみちゃんの彼氏なのに。」

「あ、いえ。大丈夫です!

 変なこと言った時は僕もそうしてるので!」


良かった。

このみちゃんも鈴のあしらい方には慣れているらしい。


「昔はもっと2人とも優しかったのになー。

 たくましくなっちまいやがってよ。」

鈴が口を尖らせた。

「鈴ちゃんが悪いんだからしょうがないじゃん。

 僕だって鈴ちゃんのこと叩きたくないよ。」

このみちゃんも同じように口を尖らせた。


「お二人は以前もお付き合いされてたんですよね。

 どこでお二人は知り合ったんですか?」

フランが聞くと、鈴の目が輝いた。

「そこを聞いてくれるか!

 聞いて聞いて!」

語りたくてしょうがないといった様子。

仕方がないから聞いてあげる。

「私も知りたい。

 良かったら教えて。」

「おう!」


「高校の卒業式の次の日なー。

 俺、このみちゃんにナンパされたんだよ。」

絶対嘘。

そう思ってこのみちゃんを見たら複雑な顔をしていた。

「え、まさか本当なの……?」

「嘘でもないけど、本当でもないです……。」

鈴の回想に嘘と誇張が混じるのは知ってる。

やっぱりこのみちゃんから聞いた方が良さそうだ。


「目の前の女の子が新幹線の切符を落としたんです。

 それを拾って渡したらそれが鈴ちゃんでした。」

「声をかけたのはこのみお姉様だったんですね!」

先に声をかけたのはこのみちゃんであることは間違いないらしい。

そうなるとその後どうなったかは予想が着いた。


「それでその後は色々と連れ回されたんでしょ。

 違う?」

「いえ、その通りです。

 日帰りでユニバまで行くことになりました……。」

「え、鈴と会ったのって東京だよね……?」

「だってこのみが可愛かったんだもん。」


答えになってない鈴は置いといて。

このみちゃんの話の続き。


「時間ある??ちょっと遊ぼ??

 ……って聞かれたんです。

 それで僕が頷いたらあれよこれよと。」

「誘拐されたわけか。」

「はい、そういうことです。」

「人聞きが悪いなー。」


「でも僕、すごくびっくりしたんですよ!

 急に新幹線とユニバのチケット渡されて!」

うんうん。

分かる分かる。

鈴はいつも全部が急だもんね。

「あれ?フランどうしたの?」

今の話を聞いて、フランはニコニコしていた。

「いえ、その手が有ったかと思いまして。」

「フラン、駄目だよ。」

鈴のやり方を真似されたらさすがに大変だ。

それは止めておかないと。


「このみがすごく可愛かったからなー。

 自分探しの旅もやめた!

 暫くは東京に居たんだぜー。」


でもまさか近くに居たとはな。

近くに居たなら私たちにも声かけてくれれば良かったのに。


「でも1年くらいで急に居なくなっちゃったんですよ!

 ひどいと思いませんか!?」

「うん、それは本当に最悪。

 私と小鳥もめちゃくちゃ傷ついた。」


私とこのみちゃんが鈴を睨む。

すると思いっきり目を逸らされた。


「次に逃げたら祟り殺す。」

「お嬢様。言葉遣いが汚いです。」

フランに怒られてしまった。


「でも逃げても絶対に捕まえるからね。」

私がそう言うと鈴はむむむと唸った。

「ていうかなんで俺の場所分かるんだよ。

 宇宙人に改造でもされたか?」

「鈴を捕まえるために修行したの。」

そう言うとそれ以上は追求してこなかった。


「僕も次は絶対に許さないからね。」

そう言ってこのみちゃんが小指を突き出した。

「ほら、指切りして。」

「しょうがないかー……」

観念して鈴が指を差し出した。


「ゆーびきーりげんまんうーそついたら……」


「ゆーびきった!」


鈴とこのみちゃんの指切り。


これできっともう鈴は居なくなったりしない。

そこまで非道ではないはずだしね。

それでも逃げたら……。


地の果てまで追いかけてやる!

私はそう心に決めた。


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