雛乃の勧誘、そして……
「もちろん行くわ!
9月の始めね!」
雛乃の勧誘は一瞬で終わった。
超ノリノリだった。
「この日で間違い無いわよね!」
航空券の予約画面。
沖縄に行こうと言って5分。
もう雛乃はそこまで進んでいた。
「お金とか大丈夫なの……?」
ここまで迷いが無いと少しびっくりする。
そんなことを言ってる間に雛乃は予約を確定させた。
「雛乃ちゃんが来てくれるのすごく嬉しい!
一緒に楽しもうね!」
めぐるちゃんが雛乃の手を握ってブンブンと振る。
雛乃は満更でもなさそうに微笑んだ。
「ちょっとバイトは増やさなきゃだけどね。
それでも私、頑張るわ。
みんなと一緒に楽しみたいもの。」
ふふん、と雛乃が息を鳴らす。
その即断即決は正直すごくかっこよかった。
「これでメンバーは6人だね。
ふふふ、もう既にすごく楽しいよ……!」
私、フラン、小鳥、めぐるちゃん、みゆちゃん、雛乃。
このメンバーだけでも楽しくなるのは確定してる。
「あ、みゆちゃんも来られるのね。
まだ小学生でしょ?
よく許可もらえたわね。」
「そこは大家さんがすごくてね。
家族旅行も兼ねることにしたんだって。」
みゆちゃんは二泊三日のうち、半分は大家さんと過ごしてもう半分は私たちと過ごす。
大家さんのお友達が沖縄に住んでるらしい。
私たちがみゆちゃんと遊んでる間はお友達とお酒を飲んで過ごすと笑っていた。
「だからみゆちゃんも今はすごく盛り上がってるよ。
今日はめぐるちゃんとお買い物行くんだよね?」
「はい、一緒に水着を見に行く予定です。
1人で選べる自信がないので……。
みゆちゃんに選んでもらうことにします。」
そう言ってめぐるちゃんは少しはにかんだ。
最近はめぐるちゃんとみゆちゃんもすごく仲良し。
よく2人で買い物に行ったりお喋りしてるところを見かける。
仲良よきことは良きことなり、だ。
そんな話をしてると、ドアが開く音がした。
「めぐるちゃん。じゅんびできたよ。はやくはやく。」
玄関からみゆちゃんの声。
その声は楽しそうに弾んでいた。
「はーい!今行くね!」
めぐるちゃんも元気よく答えた。
「では行ってきますね!
雛乃ちゃんはまた今度ね!」
めぐるちゃんも軽やかに部屋を飛び出して行った。
「そういえば2人はどうしたの?」
「フランと小鳥なら夜ごはんの買い出しだよ。
もうすぐ帰ってくると思うな。」
雛乃が家に来るって聞いてフランは急いでお買い物に行った。
急ぐ時は小鳥に買い物を手伝って貰ってる。
なにせ小鳥は大っきなバイクを持ってるし。
のんびりで良い時は私とフランで歩いて買い物に行くんだけどね。
「小鳥さんとタンデムね……。
羨ましいわ。」
「小鳥は多分喜んで乗せてくれるよ?」
小鳥はバイク好きだし、人を乗せて走るのも好きだ。
私も何度か乗せて貰ったことがある。
「あ、噂をすればだね。」
外からバイクのエンジン音が聞こえた。
すぐに部屋に帰ってくるだろう。
「ただいま戻りました!」
「ただいまー」
2人が手にエコバッグを持って帰ってきた。
「おかえりなさい。
ねえ雛乃が今度バイクに乗せて欲しいって。」
「え、ちょっとま
「まじで!あたしのバイクに興味あるのか!?
じゃあ今日の帰りは載せてやるよ!」
「はい……おねがいします……」
うん、これでばっちり。
「あ、そうだ。鈴には声かけたか?」
小鳥の問いかけに頷いて答える。
「このあと鈴も遊びに来るって。
彼女さんも連れてきてくれるって言ってたよ。」
私がそう言うとフランの目が輝いた。
「鈴様の彼女さん、すごく気になります!」
「あぁ、あたしもだ。
良い奴ってことしか知らないしな。」
2人からは既に相当な高評価だ。
肝試しの時に鈴のやり過ぎを叱ってくれたしね。
もうそれだけで私たちはすごく彼女さんのことを気に入ってる。
『お嬢様!お電話です!』
私の携帯が鳴った。
「はい、もしもし」
『そろそろ着くよ!
そういえば駐車場って空いてる?
無ければ適当なところ探してくる!』
「うん、空いてるよ。」
『さんきゅ!じゃあまた!』
「鈴、もうちょっとで着くって。」
「私、お茶淹れてきますね!」
フランが立ち上がってお茶とお菓子の準備をしにいった。
すぐに車の音。
そして階段を駆け上がる音が聞こえた。
「お疲れー!俺が来たぞー!」
鈴の元気な声。
「え、えっとお邪魔します。」
そして彼女さんの少し控えめな声が聞こえた。
鈴は彼女さんのことを人見知りって言ってたっけ。
どんな子かな。
鈴に手を引かれてやってきた女の子。
その顔はすごく見覚えがあった。
「え」
「わ」
「は?」
「……え?」
上から私、雛乃、小鳥、そして鈴の彼女さん。
鈴が連れてきたのはこのみちゃんだった。




