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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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みゆちゃんとの水族館デート


夏休みの初日。

今日は1日、みゆちゃんとのデートだ。

楽しみ。


「おねえさん、はやくはやく。」

日課であるランニングのあと、みゆちゃんは余所行きの服に着替えて私の部屋を訪れた。


綺麗な白いワンピース。

いつものサイドテールは下ろして麦わら帽子。

小さいけど、すごく綺麗。

将来モテモテになるのは確実だろう。


「フラン、私も白いワンピースあったっけ……?」

フランに聞いたら首を横に振った。

そうだ、この前フランに勧められたのに買わなかったんだった。

仕方ないから他の服。

黒のワンピースならあった。


「おねえさん、くろにあうね。」

みゆちゃんが褒めてくれたから及第点だろう。

私たちはフランに手を振って、駅に向かって歩き出す。


「今日の服、すごく可愛いね。

 いつもよりちょっと大人だね。」

私がそう言うと、みゆちゃんは照れたように笑った。

「うれしい。めぐるちゃんといっしょにかったの。」

繋いでいた手を離し、その場で一度くるりと回る。

誰がどう見ても愛らしい仕草。

咄嗟に腕が伸びそうになったが、辛うじて堪えた。

「危ない。抱きしめたら皺ができちゃうもんね。」

私がそう言うと、みゆちゃんはもう一度くるりと回った。

「だきしめてもいいよ?」

ちょっと迷ったけど、どうにか気持ちを抑えられた。

さすがにまだ早い。


「きょうはわたしがえすこーとするね。」

今日のプランはみゆちゃんが決めてくれることになっていた。

だから私もまだどこに行くかは分からない。

「たのしみにしててね。」

みゆちゃんの足が軽やかに跳ねる。

その姿だけで、今日が楽しい1日になることが確信できた。


「たつのおとしご。ペンギン。くらげ。」

でも行く場所はほとんど答えが出てた。

みゆちゃんが小さく魚を口ずさむ。

水族館に行きたい欲が溢れ出ていた。


そんなわけで最初に向かったのは水族館だった。

夏休みだから人は多い。

それでもみゆちゃんは水族館の最寄り駅に着くと満面の笑顔になった。


「おねえさん!たのしみだね!」

私の手を小さな手が引っ張る。

いつもは落ち着いたみゆちゃんも今は年相応の小学生に見える。

「うん。私も楽しみだよ。」

私がそう言うと、みゆちゃんの足取りがさらに軽くなった。

走りたいのをこらえてる。

そんなくらいの速歩き。


「たつのおとしご♪ペンギン♪くらげ♪」

「たつのおとしご♪ペンギン♪くらげ♪」


2人で口ずさみながら歩く。

あっという間に私たちは水族館の中まで着いた。

 

「おさかな。みんなきれいだね。」

「みゆちゃんの方が綺麗だよ。」

「うれしい……」


いちゃつきながら水族館を回る。

もし目の前のカップルにされたらすごくうざい。

でもみゆちゃんとだし。

セーフのはず?


それはそれとしてみゆちゃんの本命の1つ。

タツノオトシゴまでたどり着いた。


「おー。ぷかぷか。」

みゆちゃんがじっと水槽を見つめる。

目がすごくキラキラとしてる。

今は冗談を言うのも野暮だろう。

私はそんなみゆちゃんをじっと見つめていた。


「みゆちゃんはタツノオトシゴ好きなの?」

私が聞くと、タツノオトシゴを見つめたまま頷いた。

「ぷかぷかしててかわいい。

 かってみたいな。」

頬を緩めたまま、みゆちゃんは喋る。

よっぽどタツノオトシゴを見るのが楽しみだったらしい。


「おねえさんはすき?」

みゆちゃんが視線はそのままに私に問いかける。

元々、タツノオトシゴはそんなに好きでもなかった。

好きな魚と聞かれたらほっけと答えるタイプだし。

「みゆちゃんのおかげで好きになったよ。

 確かにぷかぷかしてるの可愛いね。」

でもみゆちゃんの嬉しそうな姿を見て、私もこの子が好きになった。

これからは好きな魚を聞かれたら、タツノオトシゴって答えよう。


「ふふっ。うれしいな。」

みゆちゃんが静かに笑った。

すごく綺麗な横顔だった。


「まんぞく」


しばらくすると、みゆちゃんはそう言って私の手を引いた。

そのまま私たちはクラゲの水槽へ。

そこでもみゆちゃんは目を輝かせてクラゲを見ていた。

やばい。

好きな生き物がどんどん増えてしまう。


「クラゲもぷかぷかだね。」

「うん、かわいい。」

ぷかぷかと浮かぶクラゲを眺めていると、時間もゆっくりに感じる。

とても心地良い。


クラゲの次はペンギンを見た。

ペンギンコーナーはとても混んでいた。


「ペンギン!かわいいね!」

人混みの中、私に聞こえるように大きな声でみゆちゃんは喋る。

頑張って大きな声を出す姿もすごく微笑ましい。

「うん!すっごくかわいい!」

私がそう言うと、またみゆちゃんは嬉しそうに笑った。

今日の私、かわいいしか言えてない。


「おねえさん、わたし、あれにのりたい」

みゆちゃんが観覧車を指差す。


手を引かれるがままに、私たちは観覧車へと乗り込んだ。

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― 新着の感想 ―
いつもおませさんなみゆちゃんが、年相応にはしゃぐ姿が本当に可愛い…! 疲れていたのか、あんまり可愛くてちょっと涙が出ました。
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