朝のお散歩と片思いの女の子
「フランちゃんはいくつなの?」
フランと腕を組んだみゆちゃんが問いかける。
「私はこの前13歳になりました!」
そう言ってフランは私に目配せする。
私はそれにウィンクで返した。
今はフランとみゆちゃんが2人で前を歩き、その後ろを私が歩いている。
宇宙人であることは小鳥にしか教えない。
念のためいくつかの設定を昨日3人で考えた。
嘘を上手につけたってアピールするのはちょっと危ういけど……。
「お嬢様!ウィンク下手です!
あとで練習しましょうね!」
フランが大きい声で叫んだ。
「……なんでウィンクしたの?」
みゆちゃんがジトーっとした目で私を見てくる。
まさかウィンクの下手さでピンチになるとは。
「フランちゃんが可愛いからつい。
みゆちゃんもしてみたら?」
話をすり替えて誤魔化す。
するとみゆちゃんはフランに綺麗なウィンクをした。
「……どう?」
「すっごい上手だったよ!」
「おねえさんにはきいてない。」
「すごくお上手でしたよ。みゆ様。」
「……うれしい。」
差があるなー。
それからもみゆちゃんからフランへの質問責めは続いた。
「ごはんはなにがすき?」
「人前だと恥ずかしくて食べられないのですよ。」
「なにしてあそぶのすき?」
「お嬢様とだったらなんでも楽しいです。」
「ほしいものある?」
「執事服が早く届いてほしいです。」
そんな風に小学生らしい質問が続いた。
私はそれを微笑ましく眺めていた。
ぼんやりと聞いていたら、急にびっくりする質問をみゆちゃんがした。
「……わたしのこと、すき?」
私は飲んでた水を吹き出した。
「お嬢様!ハンカチをどうぞ!」
みゆちゃんの質問を無視して私にハンカチを渡す。
みゆちゃんはその回答をじーっと待っていた。
「失礼いたしました。
みゆ様のことは可愛いと思ってますよ。」
みゆちゃんはその言葉を聞いてぱーっと明るくなった。
「じゃ、じゃあわたしのかのじょになって……?」
明るい笑顔のまま、フランに手を差し伸べる。
フランはそれを首を振って否定した。
「みゆ様は可愛いですが、私にはお嬢様がいます。
浮気は駄目とこの惑星では定められていますので。」
みゆちゃんはとても悲しそうな顔をした。
でもそのすぐあとだった。
「じゃ、じゃあおねえさんもかのじょにする!
いっしょならいいでしょ……?」
そう言って私の手を掴んだ。
突然の展開に今度は噎せてしまった。
「……?」
フランは予想していなかった展開にきょとんとしていた。
私もきょとんとしていたので、みゆちゃんだけが会話を続行する。
「ふたりともしあわせにするからね。
わたし、がんばるから。」
咄嗟に断ることもできずに私たちはみゆちゃんの彼女になってしまったらしい。
昨日はフランを真ん中に歩いたが、今日はみゆちゃんを真ん中に手を繋いで帰った。
途中、お嬢様と手を繋ぎたいとフランが言った。
みゆちゃんは意外にも真ん中をすんなりとフランに譲った。
散歩が終わってアパートに戻ると大家さんが待っていた。
「ありがとうな〜」
そう言って私たちに飴玉をくれた。
「みゆね、ふたりのかれしになったの!」
みゆちゃんが楽しそうに大家さんに報告する。
「ありがとうな〜。」
そう言うともう一つずつおまけの飴玉をくれた。




