表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
109/298

その処遇


「宇宙人なのは一度置いておきましょう。」


フランの言葉に、私たちは頷いて答える。

宇宙人でも友達は友達。

それに私たちもフランの正体を隠してるしね。

隠してるものを暴き合う関係なんて、友達とは言えるだろうか?

いや、言えまい。

というわけで、鈴の正体については特に問題なし。


「問題は……」

「そう、鈴にどうお仕置きするかだ。」

小鳥に言いたかったことを先取りされた。


「あいつは絶対にしらばっくれる。」

「はい、今となっては証明できないですからね。」


現場に鈴の痕跡は残されてなかった。

あるのは状況証拠だけ。

どうにか宇宙人であることには触れずに鈴の仕業だと立証して、お仕置きする。

私たちをからかった罰は与えないといけない。


「よし、ゴリ押ししよう。」

「うん、それがいいな。」


どうせ奴はクロだ。

しらばっくれても関係ない。

無理やりお仕置きしてしまえ。


「お二人とも!それは最終手段です!」

フランに咎められてしまった。

いい手段だと思ったのに。


「ゲームみたいで楽しいので……。

 もう少し考えてみたいです!」


フランがそういうなら仕方ない。

でもゲームだと考えたら少し楽しいかも。


「指紋とか証拠をでっち上げるとか?」

「あいつのポケットの中になにかねじ込むか……。」

「悪徳警官みたいで楽しそうですね!」


第1のプランは悪徳警官ごっこ。

あの日、私が鈴のポケットになにか入れていたことにする。

それを元に鈴を恫喝する。

だいぶゴリ押し度は高い。


「そのためには鈴に執事服を着てもらわなきゃだね。」

「問題はそこだよな。」

「執事服を持ってる人って限られますもんね。

 着てくるだけで自白したも同然です。」


執事服撮影会を開催する?

さすがにそれで来るかな……。

いや、来るな。あいつは。


「じゃあとりあえず有力案はこれだね。

 他に案はない?」


ひとまず1つ目の案は採用。

悪徳警官の取り調べごっこは面白そうだし。


「あとは現行犯逮捕などどうでしょうか?」

「現行犯逮捕?」

「はい!現行犯逮捕です!」


首を傾げる私たちに、フランが作戦を説明してくれた。


「もう1回肝試しをします。

 すると鈴お姉様はどうすると思いますか?」

その質問の答えは明白だ。

「あ!もう1回驚かしにくる!」

フランがその答えに満足したかのように頷いた。

「そう!お嬢様大正解です!

 ご褒美に抱き締めてあげます!」

フランが私のことを力強く抱き締めてくれた。

嬉しい。


「そこを捕まえるわけか。

 それはたしかに言い逃れできないな。」

「小鳥お姉様も大正解です!

 小鳥お姉様もこちらへどうぞ!」


フランに誘われて、少し迷ったあと小鳥もフランに抱きついた。

夏だからちょっと暑い。

でも幸せ。


「捕まえたらお仕置きだねー……。

 現行犯逮捕の方がスマートでいいかもね。」

悪徳警官の方は、結局ゴリ押しだしね。

さすがに鈴もその場で捕まえられたら観念するはず。


「じゃあそうと決まれば次の作戦だな。

 雛乃にも今回は協力してもらうか。」


そんな感じで次の肝試しの作戦会議が始まった。

途中でめぐるちゃんも帰ってきて、会議は大盛りあがり。

これで鈴にもお灸を据えられる。

そう思ってた。


でもその作戦会議は無駄に終わった。


『お嬢様!お電話です!』

私の携帯が鳴った。

鈴からの電話だった。


「もしもし」

『もしもし……っぐ。いま……じかんある……?』


電話の向こうで鈴は泣いていた。


「どうしたの??大丈夫??」

私がそう言うと、鈴は涙を堪えるように少し黙った。

明らかに様子がおかしい。


『今、小鳥っちたちも一緒……?

 大事な話があるんだけど……。


ひどく真剣な声色。

普段の鈴からは考えられない。


「うん、そうだよ。1人になった方がいい?」

『ううん、皆にも聞こえるようにしてもらっていい?』


言われるがままにスピーカーに変えた。

これで小鳥やめぐるちゃんにも会話が聞こえる。


『皆に秘密にしてたことがあって……。

 本当にごめん……。』

鈴はそう言った。

私たちは黙ってそれを聞く。


宇宙人であることを黙っていたこと。

もしかしてそれを気にしてるのかな。

そう思ってた。

でも私にとって、鈴が次に喋った言葉はそれよりももっと衝撃的だった。


『肝試し、本物のお化けの振りしてごめんなさい。

 あれ、本当は俺が成りすましてたんだ……。

 驚かしてごめん……。』


鈴が自分からちゃんと謝った!

嘘でしょ!?

普段なら謝る時もふざけながら謝るのに!


「鈴が謝ってるだと……。」

小鳥も衝撃を受けていた。

私たちは付き合いが長いから分かる。

これは本当にすごく珍しい。


「ど、どうしたの??

 自分から謝るなんて!

 悪いものでも食べたの?大丈夫?」

私が聞くと、鈴はバツが悪そうに口を噤んだ。


『……彼女にめっちゃ怒られた。

 それはやり過ぎだって。

 気絶するまで驚かしてごめん……。』

そして泣きそうな声でそう言った。


『ちゃんと謝るまで家に入れないって……。

 こんなに怒られたの初めてだから……。

 本当にごめんよ。

 また今度ちゃんと謝るね。

 じゃあね。』


鈴が電話を切った。


「鈴の彼女。めっちゃいい奴だな。」

「うん、びっくりしたね。」


鈴と付き合ってるくらいだし、やばい人を想像してた。

知らない人の為に鈴に怒れるなんて。

聖人だ。


「うーん。でもお仕置きはどうしよっか?」

「彼女さんがやってくれましたもんね。」


少し唸って、結論。


「お仕置きは無し!」


二重処罰は法律で禁止されている。

だからこれ以上のお仕置きはなし。


そうして肝試しに纏わるあれこれはハッピーエンド。

余計は不安も払拭して、私たちは完全に日常に戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
てっきり宇宙人であることを追求する流れになると思っていたのですが……この物語の世界はとっても温かくて、そんな風に思った自分が恥ずかしくなるくらい素敵でした。 いつも癒されています。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ