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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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古民家の冒険


『おかけになったばんごうは


「あぁもうっ!なんでっ!」

そこまで聞いて私は携帯をしまった。

まるでここが異世界になったかのように、誰の携帯にも繋がらなかった。


目の前には大口を開けたように開いた玄関。

中は暗くて奥まで見通すことはできない。

フランがその中に消えてしまった。


フランを置いて逃げるという選択肢はない。

小鳥やめぐるちゃんに助けを呼ぶという選択肢も消えた。

だからもう残された選択肢は1つだけ。


「フラン!居たら返事して!フラン!」

私は意を決して家の中へと踏み込んだ。


ガラガラガラっ!


私が入った瞬間、扉が音を立てて閉まった。

開けようとしたがびくともしない。

閉じ込められた。

そうすぐに悟ることができた。


かさかさっ


「ひっ」

足元で変な音がした。

スマホの明かりを向けたが、そこには何もいない。


気の所為。

きっと気の所為。


玄関から入ってすぐに2つの扉があった。

右の扉は固く閉ざされていた。

仕方なく私は左の扉から進む。


バンっ!バンっ!バンっ!


左の部屋に入るとさっき私が入ろうとした右の部屋から大きな音が聞こえた。

大丈夫。

きっと変な人が住み着いてるだけ。

変な人くらいならフランは絶対負けない。

大丈夫。


足に力を込め、先に進む。

入った部屋は和室だった。

特に何かがあるわけじゃない。

普通の和室。


押入れをゆっくりと開ける。

フランを見つけさえすれば帰れる。

フランが居ますように。

フランが居ますように。

何回も唱えながら。


その時だった。


バタバタバタバタバタ


遠くから誰かが全力でこっちに向かってくる。

そんな音がした。


「……っ!?」

こわい。

私は咄嗟に押入れの中に隠れた。


「おじょさまー?どこですかー?」

でもそんな心配は無用だった。

私を呼ぶ声が聞こえた。


ほっと胸を撫で下ろし、私は押入れから出る。

そこには執事服の少女がいた。


「おじょさま。さがしましたよ。」

「フラン!良かった!良かったよぉ……。」


これで帰れる。

私はフランを抱き締めてその温かさを感じた。

人より少し温かな感覚。

それはフランだけの温かさだった。


「さ、かえりましよ」

フランが私の手を引いて歩きだす。

でもなんだか違和感がある。

フランの顔や声がぼんやりとしか見えないし聞こえない。


「あれ?フラン?

 出口はそっちじゃないよ?」

フランはどんどんと家の奥に向かうように歩く。

「だじょうぶですよ?まちがないです。」

フランが言うなら間違いないんだろう。

私は手を引かれるがままについていく。


家の中を進んでしばらく。

フランが私の手を離した。


「さあどぞ。ここからかえれま。」

「え、でもここって……?」

目の前にあったのは固く封をされた扉。

絶対に入るなと言われていた扉。


「ねぇフラン?さっきから……あれ?」

扉に気を取られた隙にフランは消えていた。


「あれ……?フラン……?」

私は扉の前で呆然と立ちすくむ。

なにが起きてるのか全然理解できない。


ぎぎっぎぃ……


そんな私を軋む音が現実に引き戻した。

封じられていたはずの扉が開こうとしている。

私は咄嗟にそれを閉めようとした。

この扉が開いたら不味い。

そんな予感があった。


私は必死に扉を押さえる。

でもその攻防は長くは続かなかった。

扉の中から聞こえた声。

それが私に抵抗する気をなくさせた。




「お嬢様!ゴールです!肝試し終わりです!

 危ないから押すのやめてください!」

そんなフランの声。

続いてクラッカーの破裂する音。

「わ!間違えました!」

「めぐる、なにやってんだよ」

めぐるちゃんと小鳥の声。


今度は違和感なんて全くない。

正真正銘、みんな本物。

私は安心のあまり、その場にへたり込んでしまった。

今日は夕方ごろにもう1話更新します!

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