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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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肝試しの下見、不穏な古民家


鈴との打ち合わせの少し前。


「え、場所ってあそこなんですか……?」

めぐるちゃんに場所を説明すると、苦い顔をされた。

「知ってるの?」

元々めぐるちゃんはチューリップ畑の近くに住んでいた。

もしかしたら、肝試しに使う古民家の地主さんのことを知ってるのかも。

そんな風に思ったけど、それは違った。


「あそこは呪われてるって聞いたことがあります。」

いつになく真剣な表情。

そこはやめた方がいいんじゃないかってその表情は語っていた。

「でも私が居るから大丈夫ですよ。」

フランはそんなことお構いなしに胸を張る。


「でも地主さんには話つけちゃったしな……。

 今さら中止にしますとは言いにくい……。」

それにフランがすごくやる気を出してる。

今から場所変更はちょっと厳しい。

「めぐるお姉様。

 使うのはお庭だけにします。

 それならどうでしょうか?」

フランから譲歩案。

古民家は庭も充分広くて、薄暗いいい雰囲気だった。

ちょっと小鳥を驚かせるくらいなら全然問題ない。

「それなら……。

 でも危なそうだったら中止にしてくださいね。」

そう最後に真剣な顔のまま、めぐるちゃんは言った。

そこで肝試しについての話題は終了。


それからは釣りをしたり、王様ゲームをしたり。

肝試しについてはそれぞれで黙々と準備を続けた。


そして肝試しの1週間前。

今日は古民家の下見の日。

私とフランは2人でそこに向かっていた。


「お嬢様とドライブ♪

 お嬢様、運転いつでも代わりますからね!」

助手席のフランは上機嫌に歌っている。

時刻は20時。

肝試しの予定時刻と同じ時間。

暗くなるとどんな感じなのかを今日は確かめにきた。


「でもやっぱり暗いと危ないかもね。」

「本番は先に明かりセッティングしなきゃですね。」


めぐるちゃんと出会った日を思い出す。

あの時もめぐるちゃんは真っ暗な中で携帯を無くして困っていた。

万が一にも怪我しないように、明かりは多めに用意しておこう。


来週で大学は夏季休暇に入る。

そこで最後の準備をして、来週の日曜日が本番だ。

あとちょっとで小鳥のぎゃふんという顔が見れる。

とっても楽しみ。


「お嬢様、そこの角曲がってください。」

フラン指示されて曲がる。


「……あれ?」

その時、視界の端に朧げに線の細い女の人の影が見えた気がした。


「あ、お嬢様!よそ見しちゃ危ないです!

 この先狭いので気をつけないと!」

その声を聞いて、私は前を向き直す。

ただでさえ慣れてない運転。

たしかによそ見してる余裕はない。


「もうちょっとで着きますよ。

 帰りは私が運転しますね。」

フランのナビは正確だった。

迷うことなく目的地につく。


「……ほんとに雰囲気あるね。」

草木に覆われた鬱蒼とした古民家。

庭は広く、明かりはない。


「私が先導します。

 転ぶと危ないので、手を離さないでくださいね。」

フランが私の手を引く。

ライトがあっても、草に足を取られる。

これは来週ちゃんと整備しないとだな……。


そんなことを思っていたら、フランが急に足を止めた。


「……どうしたの?フラン。」

「……」


いつの間にか玄関の前まで来ていた。

今日は家の中まで入る予定はない。

なのにフランは玄関の方を見てぼーっとしている。


「今日はそっちには行かないよ。」

「……っ!わ!ごめんなさい!

 少しぼーっとしてたみたいです!」


いつものフランに戻った。

でも今の間はなんだったんだろう……。

めぐるちゃんの言っていたことを思い出す。

この場所は呪われている。

なにか嫌な予感がする。


「……よし。」

決めた。

「フラン。やっぱり肝試しは中止。

 危ないことはしない。

 長生きしたいもん。」

こういう時はリスクは取らない方がいい。

肝試しは楽しみだったけど、ちょっと延期しよう。

場所はまた探せばいい。

地主さんにはあとで私から話をつけよう。


「でも肝試し、みんな楽しみにして……。」

「だめ。フランになにかあったら嫌だもん。

 また一緒に場所はさがそ?」


渋々と言った風だが、フランは頷いてくれた。

今日はもう帰ろう。

そう思った時だった。


「あ、くつ。」

私の靴紐が解けてることに、フランが気付いた。

「危ないから、先に結んだ方がいいですよ。」

これから庭を歩いて車に戻る。

たしかに危ないかも。

そう思って私は一度フランから手を離した。


ガサっ

そんな音がして私の意識は音のした方へ向いた。

ガサガサと数秒音は続いた。

風は吹いてない。


「な、なんの音だろうね、フラン?」

そして私はフランに向けて振り返った。


「……え?」


そこにフランは居なかった。

開いた玄関だけが見えた。


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