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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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アジパーティーの王様ゲーム


めぐるちゃんがキャプテンのものになっちゃった。

あれ、でもキャプテンって小鳥のことが好きなんじゃ。

でも2人とも良い子だし、両者合意の上なら祝福すべき?

そうだ。DHA。

アジにはDHAが含まれてるから食べれば頭が良くなる。

この状況にも落ち着けるかもしれない。


「小鳥。アジフライ食べさせて。早く。」

「なんでこの状況で……?」

 

小鳥も困惑してる。

そんなときこそアジを食べないと!

私の両手はお盆で塞がってる。

小鳥に食べさせて貰うしかない。

早くして。


「王子様!」「小鳥さん!」

「「これは違うんです!」」

告白現場を見られてフリーズしてた2人が動きを再開した。

2人とも顔を真っ赤にしてアワアワしてる。

「ん。違うってどういうこと……?」

アジフライを飲み込んで聞き返す。

その答えはメイドの『いちごう』さんが教えてくれた。


「じゃーん!これです!」

その手には割り箸が握られていた。

「私が王様だったんですよ。」

そのまま胸を張って少しだけドヤ顔をした。


どうやら皆で王様ゲームをしていたらしい。

危うく変な勘違いをするところだった。

あぶないあぶない。


「でも発案者はめぐるよね?

 させられた、みたいな顔しないの。」

雛乃に窘められて、めぐるちゃんは目を泳がした。

「だ、だって漫画で見て楽しそうだったから……。」

めぐるちゃんはすぐ影響を受ける。

いつもながらの通常運転だ。


「まあいいや。つみれ汁つみれ汁。

 私はのんびり観戦することにするね。」

つみれ汁を取りに行こうとしたら、裾を掴まれた。

「わりばし、どうぞ?」

みゆちゃんが割り箸を差し出してくれた。

そういえば自分のお箸向こうの部屋に忘れてきちゃった。

みゆちゃんは気が利くなー。


3番


渡された割り箸にはそう書いてあった。

嵌められた。

そうすぐに気付いた。


「いや、不用心すぎるだろ。」

「ひっかかるとおもわなかった。」

「2人ともうるさい。」


これで王様ゲームに強制参加になった。

それはそれとしてつみれ汁は貰うけど。


みんなが次々に割り箸を引いていく。

最後の一人が引き終わった。


「あ、私が王様ね」

今回の王様は雛乃だった。

少し考えて命令を宣言した。


「……じゃあ5番が右隣のほっぺにキスで。」

「ぶっ」


思わず吹き出してしまった。

雛乃の左隣には小鳥がいる。

余りにも露骨すぎる。


「な、なんで笑うのよ!

 そんなに変な命令した!?」

「ううん、ごめんね。続けて。」


ソワソワしてる雛乃は一旦置いておこう。

5番は誰だろ?


「あ、また私ですね……。」

5番を引いたのはキャプテンさんだった。

さっきから顔はずっと赤いまま。

こういうゲームは慣れてないのかもしれない。


「これ、ほんとにしなきゃだめですか……?」

キャプテンの隣にはめぐるちゃん。

さっき一緒に告白ごっこ?をしてたから近くに座っていた。

「うん、おうさまのめいれいはぜったい」

みゆちゃんに促されて、ゆっくりと唇をめぐるちゃんに近づける。


小さな音を一つ立てて、命令は完遂された。

キャプテンは顔をさらに真っ赤にして黙り込んでしまった。


「キャプテンさん、すごくキス上手ですね!」

「やめてください……。恥ずかしすぎます……。」

めぐるちゃんにからかわれるキャプテンさん。

いつの間にかこの二人も仲良くなっていた。

めぐるちゃんはコミュ力のお化けなのかもしれない。


「雛乃は残念だったね。」

「な、なんのこと?」

「ううん、なんでもない。」


そんな感じで次のターンへ。

次に王様になったのは、メイドのいちごうさんだった。


「今日1日、4番は6番をお姉ちゃんって呼ぶように!」

あ、私6番だ。

4番は……。

「また私!?」

またキャプテンさんだった。


「無理はしないでもいいよ。」

あまりにも運が悪すぎる。

もう3連続で被弾している。

「い、いえ。これもルールなので……。

 でも心配してくれてありがとうございます……。」

キャプテンは顔を真っ赤にしたまま、私に頭を下げた。


「…………………………おねぇちゃん」

そしてすごく小さな声でそう言った。


不意打ちはずるい。


「うん、でも無理せず楽しんでくれたら嬉しいな。

 あと今日だけじゃなくて、これからずっとはどう?

 私の妹にならないたっ!」

隣に座っていたフランに腕をつねられた。

あぶない。理性が吹き飛びかけてた。

フランのおかけで助かった。


「えー……」

キャプテンさんがドン引きした目で見てることに気付いた。

全然助かってなかった。


気を取り直して次のターン。


「にばんは2つみぎのひとにすきっていって」

「みゆ様、大好きですよ」

「うれしい。フランちゃん、わたしもすきだよ。」

みゆちゃんの大勝利だった。


また次のターン。

「5番は1番をお姫様だっこ!

 みゆちゃんが5番なら逆で!」

メイドのいちごうさんが王様。

「あいよ。」

「ーーーーっっ!」

小鳥がキャプテンをお姫様だっこした。

キャプテンの大勝利。


その次のターン。

「フランちゃ、3番?いや5番!

 5番は王様に壁ドンして!

 愛を囁いて!」

メイドのさんごうさんが王様。

「私で悪かったわね。

 大好きよ。」

「……ちっ」

「舌打ちは傷つくわよ?」

雛乃が少し傷ついた。


そして最後のターン。

「あわわわわわ」

「大丈夫か?」

2番が1番を抱き締める。

私の命令で小鳥がキャプテンと抱き合った。

キャプテンは気を失った。

そこでゲームは終了。


「申し訳ないです。おねぇちゃん。」

「こちらこそごめんね。」


脅威のキャプテン比率だった。

運がいいのか悪いのか。

アジ料理もすっかり食べ尽くしてもらった。

もう今日は潮どきだろう。


「みんな、アジ食べてくれてありがとね。

 今日はそろそろお開きにしよっか。

 アジのひらいたっ!

フランがジトーっとした目で私の腕を軽く抓った。

「……そのダジャレは言わない方がいいです。」

アジの開きと掛けようとしただけなのに。

でもフランが言うならやめた方が正解だったんだろう。


「ごほん。じゃあみんな帰り道気をつけてね。

 それといつでも遊びに来てね。」

手を振るみんなを見送って部屋に戻る。

今日も楽しい1日だった。

でもなにか忘れてる気がする……。


小鳥たちの部屋を片付けて、フランと自分の部屋へ。

そこで私は大事なことを思い出した。


「あ!罰ゲーム!」

「わ!バレました!」


アジ釣り大会の罰ゲームを忘れてた!

優勝者の私はフランと鈴に好きな命令ができる。

すっかり忘れてた。


「覚えてたのに言わないのはずるい。」

フランのほっぺをむにむにすると、むーっと唸った。

「ではフランへの罰ゲームを宣言します!」

むにむにする手を一度止める。

フランへの罰ゲームはすぐに思い浮かんだ。


「今日は私の抱き枕になって」

さっきまで賑やかだった分、今がすごく寂しい。

今日はフランの人より温かい体温を感じて眠りたい。


「それでは罰ゲームにならないですよ?」

私を抱き締めてフランはそう言った。

「いいの。それともだめ?」

フランは私の頬に一度キスをして答えた。

うん、これで寂しくない。


「そうと決まればさっそく寝る準備ですね!

 背中流してあげます!」

フランが私の手を引く。

でもその前に。


「あ、ごめんね。ちょっとだけ待ってね。」

私は電話をかけた。


「もしもし」

『ただいまでんわにでることはできませ

「鈴。罰ゲーム。腕立て50回。」

『くそ!覚えてたか!忘れてると思ったのに!』


電話を切る。

これで今日のやり残しはない。


「じゃあお風呂行こ?」

「はい!」


そしてパーティの後の寂しい夜は終わった。

フランが居るからもう寂しくない。

私は温もりの中でその1日を終えた。


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