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余命60年の私と余命8億年の君  作者: とりもち
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ラジオ体操と大家さんの孫


「今日は趣向を変えてランニングにしましょう!」

フランがジャージ姿でそう言った。

ランニング?この私が?


私は自他ともに認める運動音痴だ。

高校の体育では保健体育のテストで100点をとってなお、評価は3だった。

サッカーのパス練習中に腕を骨折したこともある。


「フラン。運動だけはご勘弁を。」

私はフランに頭を下げた。

フランが私の頭を撫でる。

勘弁してくれるのかな。

「いえ、運動は絶対です!」

勘弁してくれなかった。

「運動してないと、将来寝たきりになるかもですよ。

 長生きするためには絶対必要です!」

フランは運動がどれだけ重要か力説した。

それでも私が粘っていると、小鳥とフランの2人がかりで無理やり外へと連れ出された。


「しょうがないので今日はラジオ体操です。」

それでも粘った甲斐はあった。

少し、いやだいぶハードルを下げてもらえた。


駐車場に出て小鳥がスピーカーを設置する。

時刻は7時。

あんまり五月蝿くしたら起こられるかもしれない。

音量は小さめに。


「何をしとるんだい?」

大家さんのおじいちゃんがやってきた。

「これからラジオ体操です!」

フランが元気よく答えた。

「やっぱり朝からは迷惑でしたかね?」

小鳥が申し訳無さそうに聞いた。

「いやいや、そんなことはないよ。

 良ければ僕と孫も参加しても?」

私たちが頷くと、大家さんは孫を連れて戻ってきた。


「……はじめまして。よろしくおねがいします。」

大家さんの影に隠れた小学校低学年くらいの女の子。

黒い髪をサイドテールで結んでいて、フランよりも小さい。

人見知りなのか、こちらを警戒している。

「初めまして、可愛いお嬢さん。

 お名前を教えていただいても?」

フランがニコニコとしながら女の子の手を引いた。

「……みゆ。みゆってよんで。」

女の子は少し頬を赤らめながら名乗った。

「よろしくね、みゆちゃん。」

私も握手を求めたが、ぷいっとそっぽを向いた。

難しいお年頃なのかも。



『深呼吸。深く息を吸って、吐きます』

ただのラジオ体操なのにすごく疲れた。

私、どうやって山登ったんだろ……。

「きょう、よかったらうちでたべて。」

横を見るとみゆちゃんがフランの手を引いていた。

「いえ、私はお嬢様の執事なので。」

フランはそう言うと丁重に断った。

みゆちゃんが私の方を睨んだ気がした。

「嫌われちゃったな」

そう言うと小鳥は私の肩を軽く小突いた。




「じゃああたしは一旦帰るわ」

小鳥がバイクに跨る。

「そうだ、忘れてた。はいよ。」

小鳥はそう言うと財布から何かを取り出した。

それは私の学生証だった。

「山に落ちてたんだよ。

 無くすなよ。それじゃ。」

エンジン音を響かせ、小鳥が帰っていく。

ちょっと寂しい。

でもこれでフランと2人でお散歩できる。

それはそれで嬉しい。


「では今日は3人でお散歩ですね!」

「うん、今日は2人……3人?」

見るとフランの横にはみゆちゃんがくっついていた。

「……フランちゃんはわたさないから。」

明らかに敵対心を持たれてる。

「では出発です!」

フランに手を引かれて歩きだす。


「いってらっしゃ~い。

 気をつけてな〜。」

大家さんののんびりとした声が響いた。




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