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最終決戦の末に


「思ったよりも大した事ないな……」

 なんとファビラスは、俺の放ったウォーターボールを、一瞬で真っ二つにした。――って……!?

 う、嘘だろ……?


「なんだ?なにかおかしい事が起きたか?」

 目の前で起きた出来事に激しく狼狽えている俺を見たファビラスは、片手に持った長い剣を肩に乗せながら、静かにそう聞いてくる。

 ――いや、今のはどう考えてもありえない。

 だって俺はユニークスキル[レベルアップ]を持っていて、更にレベルは30なんだぞ?あの漆黒龍(ブラックドラゴン)だって、みんなの協力あってこそだったが、倒すことができた。


 なのに……そんな俺の魔法が目の前にいる人間に一刀両断にされるなんて――有り得ねぇんだよ!!

「草木を燃やせ、ファイアボールッ!!」

 俺はファビラスの煽りとも受け取れるセリフに反応はせず、気合いを入れ直すと再び魔法を放つ。

 しかも今度はウォーターボールでは無く、火力全振りのファイアボールだ。


 すると、流石にファイアボールの事は斬ることが出来ないと判断したのか、ファビラスは俺から見てファイアボールの左側へと移動した。

 やっぱり避けるよな。でもよ、そんな事こっちだって最初から分かってる――

 

 俺はファビラスが左側に動いたのとほぼ同時に同じ方向へ身体を向けると、

「その魔法は囮だぜ……!」

 力強く地面を蹴り、ファビラスの方へ踏み込んだ。

 そして――

「くらぇぇぇッ!!」

 杖を振りかぶると、ファビラス目掛けてそれを勢いよく振り下ろそうと――

「グハッ……!?」

 した。


 突然の脇腹への痛みに俺は動きが止まる。更に、

「がはっ!?」

 今ので頭を下げてしまった俺に容赦の無いアッパーが見舞われた。


「はぁはぁ……」

 俺は地面に片足を着き、片手でズキズキと痛む脇腹を押さえながら目の前で涼しい顔をしながら立っているファビラスを睨む。

 一体、今何が起きたって言うんだよ……

 俺はファイアボールから避けようとしたファビラスに向かって杖を振り下ろそうとした。だが、そうする前に返り討ちにあった……


 ダメだ……訳わかんねぇ……

 さっきも言ったが俺がファビラスに攻撃を仕掛けたのはファイアボールから避けている最中、意識は俺ではなくファイアボールに向いていたはずだ。

 それなのになぜ、目の前にいるコイツはそんな卑怯とも言える様な俺の攻撃よりも早く、反撃することが出来たんだ……?

「お前……今何したんだよ?」

 俺はファビラスにそう聞く。


 するとファビラスは、

「何をしたかだと?お前の攻撃よりも早く俺が攻撃を当てただけの話だ……」

 まるでそれが常識かのようにそう言う。――が、そんな事信じれる訳が無かった。

 だって俺はサブスキル[身体能力強化]を持っているんだぞ?

 いくら相手が幻影の騎士団(ファントムナイト)のリーダーだとしても、俺が先手を打った時点で先に攻撃を当てられない訳が無いからだ。


 だが――

「……ッ」

 ファビラス(コイツ)の涼しい顔からは、決して嘘をついている様な気は一切感じられなかった。

 クソ……本当に俺よりも後に動いて俺よりも先に攻撃を当てたって事かよ――


 俺は今まで戦って来た相手の中でも圧倒的に弱点の数が少なく、そして強力な力を持つファビラスに対して苦笑いをすると、膝に手を着き、立ち上がり、距離をとる為に軽く後ろへと下がった。

 そう、こんなに理不尽で強い敵が相手だったとしても、負けられないのだ。


「確かに俺は今までセリヤやオーラ、冒険者のみんなの力を借りてじゃないと強敵を倒すことが出来なかった。」

 杖を握る力を強める。

「でもよ……今日は、今は……!俺一人でやらねぇといけねぇんだよ!」

 俺はそう叫びながら杖をファビラスの方へ向けると、

「草木を燃やせ、ファイアボールッ!!」

 呪文を叫んだ。


 しかし、当然ファビラスは先程と変わらず場所を移動し、ファイアボールを避けようとする。

 だが、そんな事はさっきの囮攻撃で分かっている事だ。――ん?じゃあなんでさっきと同じ様な攻撃をしたのかって?それは今からのファイアボールの動きを見ていれば分かることだ。


 いとも簡単に場所を移動し、ファイアボールの爆発範囲から離れたファビラスは、次の攻撃はなんだと言わんばかりに俺の方を見てくる。

 フッ……バカめ……!お前目掛けて放ったファイアボールの爆発範囲から、お前はまだ外れてねぇよ!

「……ッ!」

 そこで初めて、ファビラスは表情を少し変えた。

 そう、忘れたやつもいたかも知れないが、俺の杖にはホーミング機能が付いてる。だから今放ったファイアボールは、ファビラスに当たって爆発するまで止まらねぇって訳だ!


「なるほど……お前の放った魔法が俺を追いかけるという訳か……」

 壁に当たる寸前に向きを変え、ファビラスに向かって一直線に飛んでくるファイアボールを見ながらファビラスはそう呟く。


 どうだ……!流石にコイツもこれには――

「だが、詰めが甘いな……」

 その瞬間、ファビラスは、まるで初めて冒険者ギルドで見た時と同じ様に消えた。――って……!

 そうだった……コイツにはこの能力があったんだ……


 視界から完全に消えたファビラスを見失ったファイアボールは、そのまま意味も無く壁に向かってぶつかり、爆発。

 更に、

「ぐはぁッ!?」

 透明になったファビラスに、肩から斜めに杖もろとも剣で引き裂かれた。



「あ、あぁ……」

 身体からものすごい量の血が溢れてくる。

 更に、持っていた杖はファビラスの見えない剣に斬られて、もう使い物にはならなかった。

 これは……まずい……

「まぁ、素人冒険者にしてはよくやった方か……」

 気付けば姿を現していたファビラスが、勝利を確信した様なセリフを吐きながら俺を見てくる。


 ふざけんなよ……ふざけんじゃねぇ……!

 確かに杖は折れてるし、身体からは血がダラダラと垂れて今にも気を失いそうだ。――でも、まだ倒れてねぇ。

 こんなところで負けられねぇ……ここで負けたら、俺に賭けてくれたみんなを裏切ることになっちまうじゃねぇか……そんなの……周りが許しても俺が俺を許さねぇッ!!


「クソ……」

「ん?なんだ……?」

「クソッタレがぁぁぁぁッ!!」

「な……!?」

 俺は倒れそうになる足に力を入れ直し、ファビラスの方に勢いよく右手を伸ばす。

 そしてその手のひらがファビラスの身体にピタリとつけた瞬間――

「草木を燃やせ――――――」

 手のひらに大量の魔力を送り――

「ファイアボールッ!!!!!」

 ファビラスに対して、ゼロ距離で火力全開のファイアボールを放った。


 

 しかし、そんな事をすれば当然――ダメージは自身にも入る。

「ぐあぁぁぁぁぁ!!」

 俺はファイアボールが爆発した瞬間、魔法を放った右手の感覚が無くなり、身体中を炎が包んでいく感覚と共に、意識が暗い暗い闇へと落ちていった。


 ごめんメアリー、約束。守れないかもしれねぇ……

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