不気味な静けさ
ローズオーラは今目の前にいる幻影の騎士団をひとりで倒すと言い、そしてそれに対して反対した俺とセリヤに向かって呆れながら笑い、
「全く……我を誰だと思ってるんだ?こんなヤツら、逆に数が少ないくらいだ。」
拳をゴキゴキと鳴らしながらそう言った。
「……ッ!」
正直、これをギルやラークが言っていたら俺はここに残って一緒に戦うだろう。その行動によって時間が遅れ、王に逃げられるかもしれないとしてもだ。
それだけ仲間の命は大切だからな――だが、ローズオーラは違う。
こいつはただの強がりや、命を懸けたカッコつけで今のセリフを吐いた訳では無い、心の底からの本音を言っているのだ。
そしてそれが俺たちにも良く伝わるくらい、こいつの実力は本物だった。
だから俺は――
「分かった。俺とセリヤで先に行く。」
そう言った。
すると、それを聞いたセリヤも俺と同じことを考えていたのだろう、
「――そうね、先に行きましょう。」
俺の意見を肯定した。
「じゃあ早く行け!」
それを聞いたローズオーラは、すぐにそう力強く叫ぶ。
んなこと分かってるよ……!
俺はすぐに杖を上に向けると、「2人とも目閉じろ!」そう言い、
「光を放て!シャイニングボールッ!!」
城の入り口を守るようにして立っている幻影の騎士団たちの頭の上にシャイニングボールを放ち、その光によって動けなくなっているのを確認すると、
「よし!行くぞセリヤ!」
そう言い、幻影の騎士団たちの方へ走る。
そして、
「少し痛いぜ!」
「ぐふぅ!?」
数人杖で殴って倒れてもらい、そうして空いた道を通り、城の中へと入った。
それからしばらく2人で城の中を走っていると、最初は来ていた追手も、ローズオーラが相手をしてくれたという事もあって来なくなり、そして更に、
「あれ、階段じゃないかしら?」
2階へと続きそうな階段を見つけた。
「よし、登るぞ。」
「えぇ」
やっと見つけたぜ……っていうか前手に入れたサブスキル[身体能力強化]のおかげか、全然疲れねぇな。オマケに名前通り身体能力は相当上がってるっぽいし。
俺は良いサブスキルを手に入れたもんだなと思いながら階段を登る。
そして2階に付くと、目の前には長い通路が続いており、今上がって来た階段のすぐ横に、更に上へと上がる階段があった。
「おかしいな……」
俺はすぐにそう口から漏らす。
理由はすぐ横に階段があったことでも無ければ、先に続いている通路に驚いたという訳でもなく、不自然なくらいに敵が出てきていないことだった。
「ここまで敵が居ないと逆に不気味ね……」
セリヤも、俺の考えに同調するかのようにそう口にする。
全くだ。幻影の騎士団の連中は、
全員城の外にでも居るんじゃねぇのか?
しかし、敵が居ないからと言って、気を緩めては行けない。忘れてはいけないが、ここは同じ国の城と言っても、こうやって乗り込んでる以上、敵地のど真ん中とほとんど変わらないからな。
だから俺は、
「とりあえず先に進もうぜ。確かに敵が出てこないのは不気味だが、普通に考えれば、この状況は悪くない。」
先へと続く階段を指さしながらそう言う。
ここでずっと敵が来るのを待つのはただのバカだからな。
するとセリヤは、
「ま、それもそうね。」
呆れながらそう言い、階段の方へと歩いていく。
俺もそれに対してついて行くようにして階段の方に歩いて行った。
「それにしてもなんで敵は出てこないんだろうな?」
階段を上がりながら、隣にいるセリヤにそう言う。
「なんでって……バカなんじゃないのかしら?」
「バカ、か。」
俺はセリヤのトゲのある回答に対して、笑いながらそう返した。その回答は、本当に正論の様な気がしたからだ。
だってわざと城の中にいる敵を襲わないなんて作戦をとるやつら、本当にバカじゃん?
するとその瞬間――
「「馬鹿なのはどっちだ?」」
階段の上と下から、同時にそう声が聞こえた。
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