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格差の壁


「この先がリッチゾーンなのか……?」

「あぁ、そうだ。まぁ正直なところ、俺もこの先に行った事は無いから絶対にとは言いきれないが。」

 俺たちがリッチゾーンに向けて歩き出してから10分程経った頃、俺とラークはそう会話を交わした。


 いや……正直こんなに格差があるとは思わなかったぜ。

 良いか?聞いて驚くなよ?なんとノーマルゾーンとリッチゾーンは、高さおよそ5メートル程の壁で隔離されていたのだ。それで俺たちは今その壁を前にして足を止めている。

「これ……どうやって入るんだ……?」

「どうやってって、そんなの正面にある扉からに決まってるだろ。」

 俺の質問に対して、そう呆れた様に返すラーク。


 いや、分かってるんだけどな……?

 その扉はこの壁とほとんど同じ高さで、横幅も5メートルくらいあるんだぜ?とても俺たちに開けられる様には見えなかった。まぁこんな高い壁があるくらいだ、簡単に開けられる様な造りにはしねぇだろうけどよ。

「それで、この扉をあの人に開けてもらうのか?」

「あぁ、恐らくな。」


 扉の横には幻影の騎士団(ファントムナイト)のリーダー、ファビラスが羽織っていた様な、黒いローブを羽織っている、恐らく幻影の騎士団(ファントムナイト)のメンバーであろう人物が立っていた。

 話したくねぇ〜!!いや、だってあの人絶対「帰れ、お前らにこの扉を通る権利は無い。」とか冷たく言いそうな顔してるんだもん!!


「みんな?何固まってんのよ?」

 そんな俺たちセリヤは不思議そうにそう言う。

 いや、あの人になんて言えば良いか分かんねぇんだよ!

 しかし、セリヤはそんな事全く考えていないらしく、何も言わないみんなにシビレを切らしたのか、

「もう良いわ。」

 そう言うと、扉の横に立っている男の方へ歩いて行った。


「お、おい!」

 そんなセリヤを見てラークは止めようとする。あいつも恐らくセリヤがちゃんと言葉を考えてから行っていない事を分かってるんだろう。

 しかし、行くと決めたセリヤの意思を曲げる事は出来ない。

 セリヤは扉の横に立っている男の真正面まで歩いて行き、

「ねぇ!私たちリッチゾーンに行って王様と話がしたいの。通して!」

 腰に手を当て、男の顔に顔を近づけて高圧的な態度でそう言った。


 しかし、というか分かりきっていたのだが、

「帰れ、お前らにこの扉を通る権利は無い。」

 なんと男は、俺が先程考えたセリフをそっくりそのまま表情を全く変えずに言った。

 ほら見てみろ!――って言ってる場合じゃないか。

「ぐぬぬぬ……」

 俺とラークは顔を見合わせると、あっさり切り捨てられ、大型犬に威嚇をする小型犬の様に顔を睨みながら唸っているセリヤを助けに行く為に足を進める。


 そして、セリヤの横に行ったところで、

「すまない!こいつバカだから語彙力無いんだ、だから俺たちの話も聞いてくれないか?」

「俺からも頼む。」

 俺とラークは、男に向かって頭を下げると、必死に話を聞いてもらう様に交渉をした。

 こんなところで終わったら、国を変えるなんて絶対不可能だからな。


 すると、そんな俺とラークの姿勢を見て、少し心が動いたのか、男は、

「……分かった。話は聞いてやる。だが、お前らを通すとは言っていない。勘違いするなよ。」

 冷たい声でそう言った。

 よし……!ここから漆黒龍(ブラックドラゴン)の話を出して、みんなでこの扉を通るぞ!



「じゃあ、話すぞ。」

 それからすぐ、ラークはそう言うと、早速男に話を始めた。(ここで俺が話しても良かったのだが、こういうのはラークの方が得意だろうから任せる事にした。)

「まず、お前は昨日グーネウム帝国の近くに現れた漆黒龍(ブラックドラゴン)のことを知っているか?」

「あぁ、知っているが?そのモンスターは消えたんじゃないのか?」

 男は、冷たい声でそう言う。


 なるほど、昨日の漆黒龍(ブラックドラゴン)は、みんな消えたと思っているのか。

 まぁ、俺たちが倒したなんて微塵も考えてはいないだろうから、その考えは普通の事なんだろうが……それでもなんだか俺たちの苦労が周りに知られていないのは少し悲しいな。

「その漆黒龍(ブラックドラゴン)、消えたのでは無く、俺たちが倒したんだ。」

 ラークのそのセリフを聞いた瞬間、今まで全く表情を変えなかった男の眉毛が微かに動いた。

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