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土壇場の閃き


「おい!お前ら!」

 漆黒龍(ブラックドラゴン)に攻撃が効かないという絶望的な状況に陥り、混乱しだした冒険者たちにラークはそう必死に声を掛けるが、誰もその声に振り向きはしなかった。


「フハハハハ!愉快だな!」

 その光景を見た漆黒龍(ブラックドラゴン)は、そう地鳴りの様な声で笑った。そして、

「くたばるがいい!」

 自分の方へ向かって来る冒険者たちを、黒い鱗で覆われた尻尾を振るい、吹き飛ばした。

「「ぐぁぁぁぁ!?」」

 まるで人形の様に宙を舞う冒険者たち。その光景は地獄そのものだった。


「……ッ!」

 何かないのか……漆黒龍(ブラックドラゴン)に対抗出来る手段は……!

「テツヤ!早く攻撃をして!!」

 頭を悩ませる俺にセリヤがそう叫ぶ。

「攻撃したって無駄だろ!」

 そんなセリヤに俺はそう怒鳴り返した。

 だって攻撃しても意味が無いのに、なんで攻撃するんだよ!大体、真夜中の時点で俺たちは不利なんだぞ!?――って……待てよ?真夜中……身体を覆う黒いオーラ……!


「分かったぞ!」

 やっと分かった!漆黒龍(ブラックドラゴン)を倒す方法が!

「何が分かったんだ!」

 俺の声に、横で立ち尽くしていたラークが、一筋の光に縋るように聞いてくる。しかし、今は説明している時間は無い。この方法が上手くいく保証も出来ないからな。

 だから俺は、最低限伝えておかないといけない事をラークに言った。

「ラーク、目を瞑れ!」

「め、目を瞑る!?」

「いいから早くしろ!」

「わ、分かった!」

 俺の必死の訴えを聞いたラークは、目を瞑り、更に手で瞼を隠した。


 よし……!あとは他の冒険者たちにも……!

 俺は漆黒龍(ブラックドラゴン)の方を向くと、

「お前ら!目を瞑れぇぇぇぇ!!」

 腹の底からめいっぱいそう叫んだ。

 すると、流石に混乱状態に陥っていた冒険者たちも俺の声に気付き、すぐに目を瞑った。

 よし、行けるぞ……!

 俺は全員が目を瞑った事を確認すると、漆黒龍(ブラックドラゴン)の方に杖を向ける。


 そして、

「光を放て、シャイニングボールッ!!」

 俺はそう叫ぶと、杖から攻撃力の無い、シャイニングボールを放った。

 しかし、その瞬間、

「な!?やめろォォォ!?」

 今まで全く弱みを見せなかった漆黒龍(ブラックドラゴン)がそう声を上げる。

 やっぱりコイツの弱点は光なんだ!!


漆黒の息(ダークブレス)ッ!!」

 漆黒龍(ブラックドラゴン)は、俺の放ったシャイニングボールに向かって、先程も放っていた漆黒のブレスを口から撒き散らす。だが、弱点が分かった今、そんなものは悪あがきにしかならねぇよ!

「なんだと!?」

 シャイニングボールは、一瞬にして漆黒の息(ダークブレス)を光でかき消すと、そのまま漆黒龍(ブラックドラゴン)に激突。

 闇で包まれた草原を、照らし上げた。


 すると次の瞬間、

「ぐぁぁぁぁ!?!?」

 漆黒龍(ブラックドラゴン)はものすごい悲鳴を上げ、それと同時に今まで身体全体を覆っていた黒いオーラが消えた。

 よし!今がチャンスだ!

 その姿を確認した俺は、

「今だ!一気に畳み掛けろッ!!」

 草原全体に響き渡る声でそう叫ぶ。


 その瞬間、

「はぁぁぁぁぁ!!」

 怪我をしていなかった剣を使う冒険者たちが一斉に飛び出し、一気に漆黒龍(ブラックドラゴン)に剣を振るった。

 すると、今まで全くダメージを受けていなかったのが嘘のように、

「ぐぁぁぁぁ!?」

 漆黒龍(ブラックドラゴン)は悲鳴を上げた。

 それを見たセリヤも、

「よくもさっきは舐めた態度取ってくれたわね!サラマンダースラッシュッ!!」

 再び剣に炎を纏わせると、サラマンダーを彷彿とさせる驚異的なスピードで漆黒龍(ブラックドラゴン)を斬った。


「テツヤ!決めて!」

 漆黒龍(ブラックドラゴン)に斬撃を放った後、セリヤは俺の方を向きそう言うと、すぐにこっち側へと走って来る。それを見た冒険者たちも、同じ様に漆黒龍(ブラックドラゴン)と距離を取った。そして、

「任しとけ!」

 俺はそうセリヤのセリフに返すと、再び杖を持ち上げ、狙いを定める。そして、身体の奥底に溜まった全ての力を杖に集めると、

「草木を燃やせ、ファイアボールッ!!!」

 渾身のファイアボールを杖から放った。


 すると、そのファイアボールはものすごいスピードで、周りに火を撒き散らしながら飛んで行き、そのまま漆黒龍(ブラックドラゴン)に直撃、熱風を撒き散らしながら爆発した。

 

「どうだ……?」

 俺は砂煙で見えなくなった漆黒龍(ブラックドラゴン)の方を固唾を呑んで凝視していた。正直、今の攻撃でも倒せたかどうかは分からないからだ。

 すると、そこで一人の冒険者が、

「おい!あれを見ろ!」

 漆黒龍(ブラックドラゴン)の居た所を指さしながらそう叫んだ。


 俺はすぐにその冒険者が指さす方を見る。するとそこには、身体が闇に溶けていく漆黒龍(ブラックドラゴン)の姿があり、それと同時に、

 

[レベルアップ!貴方はレベル30になりました。更に、ユニークスキル[底なしの魔力(インフィニティソウル)]を獲得しました。]


 俺の目の前にそう文章が表示された。

 そしてこれらは、俺たちが怪物、漆黒龍(ブラックドラゴン)に勝ったことを認識するには十分過ぎる証拠だった。

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