降臨
「あれはまさか……!」
ラークは目の前に広がる広大な草原を指さしながらそう言う。その声に俺たち冒険者は反応し、その方向を見ると、そこには巨大な黒い影がこちらへ向かって来る姿があった。
「遂に姿を現しやがったな……!」
俺は向こうからこちらへゆっくりと向かってくる巨大な黒い影を見ながらそう呟く。そう、この黒い影の正体こそが、今俺たちが立ち向かおうとしている漆黒龍だった。
「よし!冒険者ギルドで説明した通り、テツヤとセリヤ以外の冒険者は、俺に着いてきてくれ!」
ラークは漆黒龍の姿が見えたというのに、全く動揺している素振りは見せず、すぐに俺たちに指示を飛ばした。
そのおかげで、
「お、おう!」「よっしゃ!ぶちかましたろかい!」
実際に漆黒龍の姿を目にして、怖気付いていた冒険者たちも、取り乱さずに作戦通りの動きをしだした。
「すげぇな、あいつ。まるで百戦錬磨のベテラン指揮官みてぇだよ。」
「えぇ、全くね。」
別行動(と言っても別に遠くに離れる訳では無いが)の俺とセリヤは、スムーズに指示を飛ばすラークを見ながらそう会話を交わす。
すると、ある程度指示をし終えたところで、ラークは俺とセリヤの方を向くと、
「俺たちは準備OKだ!まずはこっちから魔法を放ち、漆黒龍の気を引く、その後に二人は仕掛けてくれ!」
俺たちにもそう指示を入れた。そうだよな……俺たちが決めねぇと作戦が台無しになるんだもんな……
「よっしゃ!任せとけ!」
俺はラークの方に拳を突き出すと、力強くそう返した。
そこから俺たちは、漆黒龍が魔法の射程圏内に入るまで、息を潜めていた。
「……」
ドスン、ドスンと時間が経つに連れて音がデカくなってくる。漆黒龍はもう、俺たちから30メートル付近まで歩いて来ていた。これくらいまで近くに来ると、前の世界の様に街灯の無い草原でも、姿が明確に見える様になってくる。
漆黒龍は、背中に巨大な羽を生やし、身体は黒い鱗で覆われていて、目は紅く燃えていた。
ある程度予想はしていたが……これは想定以上の迫力だぜ……ラーク、一体いつ魔法の指示を出すってんだよ……!?
俺はゆっくり、しかし確実に距離を縮めて来ている漆黒龍に対する恐怖で、今すぐにでも魔法を放ちたい気分だった。
だが、ここで俺がそんな自分勝手な行動をしてしまうと、この作戦が台無しになっちまう……はぁ……トドメ役は辛いぜ。まぁ気を引きつける他の冒険者の方が辛いし怖いとは思うけどよ。
するとその時、「ふぅ……」ラークはそう深く深呼吸をすると、
「今だ!放てッ!!」
一気に立ち上がり、20メートル程先にいる漆黒龍を指さすと、大声でそう言い放った。
その瞬間、ラークの指示通りに綺麗に整列していた冒険者たちが一斉に立ち上がり、
「燃え上がれ、ファイアブラスター!!」
「全てを飛ばせ、スーパーウィンド!!」
「落雷よ嘶け、サンダーボルト!!」
そう口々に呪文を唱えると、各自の杖から魔法を放つ。
それに対して漆黒龍はいきなりの出来事に対応する事は出来ず、そのまま冒険者たちの魔法を全て食らった。
その瞬間、みんなの放った魔法が漆黒龍に当たると一斉に爆発、俺たちの方へ強烈な爆風が来ると共に、砂煙が漆黒龍の身体を覆った。
「やったか!?」
「魔法が当たったぞ!こいつの身体、霧なんかじゃねぇ!」
その光景を目の当たりにした冒険者たちは、口々にそう声を上げる。そしてそれに続くように、
「俺たちも行くぞ!」
魔法を放たずに、後ろで待機していた剣を使う冒険者たちがそう口走ると、未だに砂煙で身体の見えない漆黒龍の方へ走って行こうとする。
いや、その行動はダメだ……!まず、漆黒龍の身体が砂煙で隠れている間は、本当に今の攻撃が効いたのかどうかなんて分からないんだぞ!?俺は直ぐに、
「おい!お前ら――」
そう冒険者たちを止めようとする。しかし、俺が止める前に、
「お前ら、待て!!」
ラークがそう叫ぶ。その顔は、明らかに焦っていた。
「なんでだよ!だってこいつはもう――」
対して剣を使う冒険者たちは、そうラークの言葉に反論し、漆黒龍の方を見る。
するとそこには――
「って……!?」
砂煙を切り裂いて、俺たちの方を睨みつける無傷の漆黒龍の姿があった。
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