予想外の協力者
「二人だけじゃないぜ。」
ラークの放ったセリフに対して、奥の酒場で座っていた一人の冒険者がそう言った。
その冒険者は椅子から立ち上がると、それと同時に周りに居た四人の冒険者も立ち上がり、五人でこっちへ歩いてくる。
「あ、貴方達は……」
セリヤはこっちへ歩いてくる冒険者達の顔を見た途端、目を大きく見開いてそう呟く。
「お前らは……」
俺もセリヤと同じ様にそう呟いた。
「あぁ、そうだ。あの時は悪かったな。」
こっちへ歩いてきた冒険者の中で、ラークに言葉を放った冒険者(次からはガタイのいい冒険者と呼ぶ)が俺とセリヤに向かってそう言う。
そろそろ勘づいてるやつもいるかもしれないが、なんとこの冒険者達は、俺たちが初めてグーネウム帝国に来た時、食べ物屋でミリゴをバカにしてきたあの冒険者達だったのだ。
「あの時の事はもう良いわ。そんな事より、なんであんなにミリゴをバカにしていた人間が、私たちの案に協力しようとしているの?」
「俺もセリヤと同じことを思っている。」
俺とセリヤは、突然話に加わって来た冒険者達にそう聞く。前にあんなことをされたんだ。もしかするとこれも冷やかしの可能性があるからな。
しかし、俺たちが怪しんでいるのに対してガタイのいい冒険者は、
「いや、俺たちだってさっきまではお前らに協力する気なんて無かったんだよ。その漆黒龍とか言うやつに挑んだって死ぬだけだと思ってたからな。」
俺たちの作戦をバカにする様な言い方でそう言う。
ん?なんだコイツら?やっぱりバカにしに来ただけか?
「なによ?バカにしてるの?」
セリヤは腕を組みながらガタイのいい冒険者を睨みつけ、そう言う。
しかし、ガタイのいい冒険者は全く怯んでおらず、
「話は最後まで聞こうぜ?」
そう言ってから、話の続きをしだした。
「繰り返し言うが、俺たちはさっきまではお前らの作戦に付き合う気なんて全く無かった。お前らはミリゴの人間だしな。でもよ、そのミリゴの人間が逃げずに戦おうとしてる姿を見て、俺は思ったんだよ。「グーネウム帝国の人間として恥ずかしい」ってな。」
「なるほど、だから協力してくれるって事か?」
「あぁ、そうだ。あともう一度言わせてくれ、この前は本当に悪かった。あの時はクエストで上手くいかない事が多くてイライラしてたんだ。」
ガタイのいい冒険者はそう言うと、俺の方へ手を伸ばしてきた。
……こいつ、こんな事をして俺の仲間に言った悪口が消えると思ってんのかよ。
「……俺はお前がどれだけ謝っても完全に許すことは無い。これは絶対だ。悪口によって出来た傷は、表面上で治った様に見えたって、元には戻らねぇからな。」
「あぁ、分かってる。」
たく……分かってるなら言うんじゃねぇよな。
「まぁだが、だからって今のお前たちの協力を断る意味も無い。だから、頼むぞ。」
俺はそう言うと、ガタイのいい冒険者の差し出した手を掴み、深い握手を交わした。
「良いよな、セリヤ。」
「はぁ……テツヤ、貴方は甘いわね……まぁ良いけど。」
セリヤは俺に対して呆れた様なため息をしながらも、笑い混じりにそう言った。
「で、どうするんだ?この七人で食い止めるか?」
ガタイのいい冒険者がそう聞いてくる。
「いや、正直なところ七人でも心細いな……」
対して俺は、腕を組みながらそう返した。確かに七人ってのは普通に見ればものすごく心強い数だ。だが、今回は相手の強さが未知数な分、まだ数は足りない気がした。ん?さっきまで二人で食い止めに行こうとしてた奴がなに贅沢なこと言ってんだって?いや、俺だって贅沢だとは思うが、数が増えたら増えたで、もっと欲しいってなってくるんだよ。
すると、
「じゃあ僕も協力してあげます。」
俺たちとは反対側に居た一人の杖を持った冒険者が、俺たちの方へ歩いてきながらそう言って来た。
「お、お前も俺たちと同じ理由か?」
ガタイのいい冒険者がその冒険者にそう聞く。
「はい、ここまで来たら協力するしかないでしょう」
その冒険者は、目に掛けたメガネを上にクイッと上げながらそう言った。
すると、その冒険者が動いた事により、更に周りに居た冒険者達が口々に話し始め、どんどん俺たちに協力してくれる人が増えてきた。
「お前はどうするんだ?」
ガタイのいい冒険者が、腕を組みながら俯いているラークにそう聞く。するとラークは、
「たく……どうなっても知らないからな……」
呆れた様にそう吐き捨てると、
「俺も協力してやるよ。」
俺の顔を見てそう言った。
「これなら勝てるかもしれないわ……!」
セリヤが俺たちの周りに集まった冒険者達を見てそう言う。
「あぁ、これならいける……!」
俺もセリヤのセリフに同調する様にそう言った。
よし、じゃあ漆黒龍とか言う厨二病モンスター。みんなで倒そうじゃねぇか!
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