プアゾーン
「プアゾーンってなんだ?」
俺がメアリーにそう聞くとメアリーは、
「そうですね。じゃあまずはこの国にある三つのゾーンの話をします。」
俺たちの方にパンを持って来ながらそう言った。
「すいませんこれしかなくて。」
メアリーは申し訳なさそうにそう言うと、俺とセリヤの前にパンを置いた。
「いやいや、十分よ。ありがとう。」
「ありがとな」
俺とセリヤは口々にそう言うと、目の前のパンを一つ掴み、それを口へと運んだ。
うん、うめぇ。噛んだ瞬間に口の中に広がる小麦の甘み、素朴な味だがまたそれが良いな。
俺は口の中でパンを味わっていると、
「では私の両親が連れていかれたプアゾーンと、他の二つのゾーンの説明をしていきますね。」
メアリーは俺たちの正面に座り、そう言った。
そうだったな。
「あぁ、始めてくれ。」
俺はそう言うと、メアリーは説明を始めた。
「はい、まずこの国、グーネウム帝国には先程言った通り三つのゾーンがあります。
一つは先程言ったプアゾーン、もう一つは今私たちがいるノーマルゾーン、そして最後に、リッチゾーンです。」
「そして、この三つのゾーンにはそれぞれ違う人達が住んでいます。」
なるほど、まぁ名前からしてだいたい想像が付くが。
リッチゾーンには金持ちが住んでいて、ノーマルゾーンは俺たちみたいな旅人や、冒険者など、それでプアゾーンは恐らくそれ以外の貧乏な人達だろ?
俺は今考えた内容をそのままメアリーに伝える。
するとメアリーは、目を見開いて驚きながら、
「そんな感じです。よく知ってますね。」
そう言った。
「まぁな。」
アランに色々と教えて貰ってたから、だいたい想像はつくぜ。......にしても――
「それでも、なんでメアリーの両親はプアゾーンへと連れて行かれたんだ?」
そう、今の説明はチュートリアルみたいな物で、本題は疑問はこれだった。
だって元々ノーマルゾーンに住んでた人がある日突然プアゾーンに連れて行かれるっておかしくないか?
それも子供であるメアリーを一人残して。
すると、俺の質問を聞いたメアリーは下を向くと、
「それが分からないんです。ある日朝起きたら二人とも居なくなってて、それで街の人にその事を伝えたら、幻影の騎士団達によってプアゾーンに連れて行かれたって......」
そう言った。
なるほど、メアリー自体も両親がいきなり連れて行かれた理由を分かってないのか。
でもそれ、メアリーがその時たまたま起きてなかったから連れて行かれなかったって事なら、結構危なくないか?
だって親が連れて行かれたんだぜ?
その幻影の騎士団とやらが何時来てもおかしくないような気がするんだが......
「それってメアリーは大丈夫なのか?話を聞いた限りだと、メアリーも何時幻影の騎士団にプアゾーンへ連れていかれるか分からない様な気がするんだが」
俺はメアリーにそう聞く。
するとそこで今まで黙って話を聞いていたセリヤが、
「ちょっと!メアリーが不安になるような事言わないでよ!」
俺の方を見ながらそう怒鳴った。
いや、でもそこは重要だろ。
だってそこを明らかにしてないといきなり幻影の騎士団が家に押し掛けてくるかも知んないんだぜ?
「確かに軽くあんな事を言ったのはすまないが、それでも確認しておかないと――」
俺はそうセリヤに言い返す。
すると、俺とセリヤの会話を聞いていたメアリーが、
「実はもう来てるんです。」
そう言った。
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