ナンパから始まる出会い
「なんで止めたんだよ!」
俺は半ば強引に店から出てきたセリヤにそう言う。
だってあんなに良くしてくれたミリゴの人達が悪く言われてんだぞ?魔法の一撃くらい叩き込んでやりてぇよ!
しかし、セリヤは冷静に、
「確かに腹は立ったわ。でもあそこで私たちが問題を起こせば、ミリゴの印象が更に悪くなるだけよ。」
俺を宥めるようにそう言った。
「それでも......!」
俺はセリヤの言う事が理解出来た。
ここで俺が暴れれば、ミリゴのみんなに迷惑が掛かる。
そんな事最初から分かってるよ。それでも......許せねぇんだよ!
俺は杖を強く握る。
「とりあえず、別の店を探しましょう。」
セリヤが俺にそう優しく問いかけてくる。
「……分かった。」
それに俺は渋々同意した。
これ以上駄々をこねると、セリヤにも迷惑がかかっちまうからな。アイツらは嫌な奴らだったが、今回は見逃してやる事にした。
まぁだが、次も同じような事を言って来たら、本当にファイアーボールでぶちのめしてやる。
それから俺たちは気お取り直して店を探し始めると、
「本当にやめてください!」
「あぁ?良いじゃねぇかよ」
三、四人の男に囲まれている女の子を見つけた。
あれは前の世界で言う所のナンパというやつだろう。
女の子は明らかに嫌がっていた。
はぁ……アイツらはあの女の子が嫌がってるの、分かんねぇのか?……たく、男失敗な奴らめ。
俺はさっきの件でイライラしていた事もあり、ここで一発、あの女の子を助ける事にした。
「おいセリヤ――」
俺はセリヤの方を向きながらそう言う。
一応、アイツらを口論で論破する許可を貰うためだ。
べ、別にセリヤに加勢してもらう為じゃあ、無いぜ?
すると、
「って、えぇ!?」
なんとセリヤはもう既に男たちの前まで移動しており、
「ねぇ、アンタたち。」
更に声まで掛けていた。
ちょ、早ぇよ!?まだ作戦も何も――
俺はすぐにセリヤを止めに行こうとした――が、まぁ良いか。セリヤなら上手くやるだろう。
俺はセリヤの後ろで見ておく事にした。
ここで辺に割り込んでも、邪魔になるだけだろうからな。
という事で!ここからはこの俺、海乃哲也ことテツヤが、セリヤと男たちのやり取りを実況しようと思いまぁす!
「あぁ、なんだ?」
おおっと!男たちが話しかけてきたセリヤを睨みつけながらそう言いました!これはなかなかの迫力です!
「貴方達、何やってんのよ?この子、嫌がってるじゃない。」
対してセリヤは――全く臆していない!流石俺の相棒だぁ!
「嫌がってるだぁ?んなもん知るか!おいお前ら、コイツやれ。」
しかし男たちも負けていないぞ!セリヤと会話をしていたこの中でリーダー格であろう男が、仲間たちに指示を飛ばしてセリヤを囲んだぁー!って!?
「おい!セリヤ!大丈夫か!?」
俺は慌ててそう叫ぶ。
流石にそれはヤバいって!俺油断してた!街中で人通りが多いからって手は出さないだろうと油断してた!
俺は急いで男たちをかき分け、セリヤの横まで行くと、
「すいません!コイツは俺と一緒に旅をしてる奴でして!すぐにこんな感じで人に喧嘩売っちゃうんです!すいません!すいません!」
俺は必死にそう謝った。
こんなとこで喧嘩になったらミリゴの印象が下がるからだ!(さっきセリヤに教えて貰った)
すると男たちは、
「んだコイツ?気色悪い、もう良いよ。お前ら行くぞ。」
俺をゴミを見るような目で見た後、呆れながらそう言い、どこかへ歩いて言った。
た、助かったぁぁ......
俺は安心で膝から崩れ落ちる。
あんなに頭を下げたのは、日本のブラック企業で働いてた時ぶりだな。
お前らだから言うけど、謝ってた時実は少しチビったぜ。
すると、
「ちょ!?何やってんのよ!」
セリヤが俺の方を見ながらそう叫ぶ。
「何って、お前このまま俺が止めてなかったらどうしてたよ?」
「アイツらが二度と立てないくらいにボコボコにしてた。」
ほらな!?だから俺は止めたんだよ!
「お前、さっき俺に言ったじゃねぇか、ここで乱闘騒ぎを起こしたら、ミリゴの人達に迷惑が掛かるって。」
俺はセリヤにそう言う。
するとそのセリフを聞いた瞬間、
「......ッ!」
セリヤは何かを思い出したかのように息を呑んだ。
……やっと気付いたのかよ。
セリヤは、
「ごめんテツヤ、私人のこと言えないわね。しかもテツヤにあんな事やらせちゃって。」
俺にそう謝ってくる。
あんなこと?あぁ、男たちに対する必死の謝罪の事か。
「別にいいって。あんなの会社でやり慣れてたから。」
俺はセリヤに笑顔でそう言う。
するとセリヤは、俺のセリフを聞くと首を傾げ、
「かい、しゃ?」
そう不思議そうに呟いた。――って、はぁっ!?しまった!つい口に出ちまった!
「あ、あぁ!なんでもないなんでもない!」
俺は必死に先程の失言を誤魔化した。
するとその時、
「あ、あの」
後から控えめな声が聞こえた。
「ん?」
俺はその声に反応して後ろを向く。
するとそこには、先程男たちに囲まれていた女の子が立っていた。
そっか、元はと言えばこの子を男たちから守ろうとした事がこのきっかけだったな。
乱闘寸前や、俺の失言など、色んなことがあったせいで忘れてたぜ。
「先程は助けて頂き、ありがとうございました!」
女の子はでかいおっぱいをぶるんと揺らしながら、精一杯頭を下げて俺たちに礼を言う。
「そんな、頭を下げなくて良いわ。」
セリヤはそんな彼女に対して、笑顔でそう言う。
「あぁ、俺たちは当然の事をしただけだからな。」
俺も、そんなセリヤに続くようにそう言った。
すると、
「あの......貴方達、名前は?」
彼女がそう名前を聞いてきた。
「俺はテツヤだ。」「私はセリヤよ。」
俺たちはそう各自名前を名乗る。すると、
「私はメアリーって言います。メアリー・ジョセナロクです。」
彼女はそう自己紹介を返す様に、自分の名を名乗った。
メアリーかぁ、まじで想像通りって感じだな。
でかいおっぱい、女の子らしい太もも、サラサラなブロンズカラーの髪の毛、そしてまだ子供っぽさが抜けていない可愛い顔。
うん......!これが萌えと言うやつなのか!
俺はメアリーの事を眺めながらそう頭の中でブツブツ呟いていると、
「テツヤァ?」
セリヤが怖い目で俺を見ながらそう言った後、
「変態!」
そう叫び、俺の頬っぺたを思いっきり引っぱたきやがった!
「びでぇ!?」
何しやがんだよこの野郎!
俺は涙を流しながら地面に倒れ込む。
傍から見たら多分、めちゃくちゃダサいんだろうな。あぁ、更に涙が出てきたぜ、くそぅ......
俺がそう地面でへこたれていると、その間に色々と話が進んだらしく、
「ほらテツヤ!メアリーがお礼にご飯を食べさせてくれるらしいから、行くわよ!」
そう言うと、倒れている俺の襟を掴み、無理やり引きづりながら歩き始めた。
「いで!?いでぇ!?」
俺はというとまるで荷物のように、情けなく地面を擦れるのだった。
こんな情けないやつがこの物語の主人公らしいぜ?
どうかしてるよな?――ヤバい自分で言ってて泣きそうになって来たぜ……
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