死の道
「両親の身に何があったんだ?」
俺は出来るだけ真剣な声でこう聞いた、茶化す訳にはいかないからな。
「私の両親は二人とも死の道で殺されたわ。」
死の道?知らない単語が出てきたな、この地域では有名なものなのか?
「死の道ってなんなんだ?」
俺はセリヤにそう聞く。
するとセリヤは俺が死の道を知らなかった事に驚いたのか、目を大きく見開いて、
「え!?テツヤ、死の道も知らないの!?」
そう言った。
すまんな、まだ転生してから日が浅いんだよ。
「まぁ良いわ、教えてあげる。」
セリヤは、俺の無知さに呆れながらも説明を始めた。
「この街、ミリゴには巨大なゴブリンの洞窟があって5〜10年に一度、ゴブリンキング率いるゴブリンの巨大な群れがその洞窟から出てきて見つけた人間全てを殺すというゴブリン達の狂気的な行動の事を、死の道とミリゴの人達は呼んでいるのよ」
この街ってミリゴって言うんだな……ってそんな事はどうでもいい。少々早口で言われたもんだから完全に理解出来た訳では無いが――
「要するにゴブリンキング率いるゴブリン達の殺戮って事か。」
「まぁそんな感じね。」
なるほど。こんな平和そうな街にそんなに恐ろしい事が起きていたなんて知らなかったな。
「その死の道でセリヤの両親は……」
平和や、日常ってのはふとした時に無くなるんだよな。
俺だってある日いきなり死んで異世界転生した訳だし。
ん?でも待てよ。なんでそんなに恐ろしい死の道を冒険者達は野放しにしてるんだ?
「なぁ、それってゴブリンキングを倒せば終わる話じゃないのか?」
俺はセリヤにそう聞く。
だってそのゴブリンキングやゴブリン達を一匹残らず根絶やしにすれば死の道は起こらないだろ。
だが、俺の疑問に対してセリヤは一度大きくため息をついてから険しい顔でこう返した。
「そんなに簡単に倒せるなら死の道なんてとっくの昔に無くなってるわ。」
更にこう続ける。
「ゴブリンキングはテツヤが思っている以上に強いの、ミリゴの冒険者が弱いっていうのも理由の一つだけれど。」
なるほどな、みんな考えてる事は同じって訳だ。
そりゃ最初は冒険者全員がゴブリンキング達を根絶やしにしようと考えた。しかし、そう上手くは行かず、未だに死の道は続いていると。
「すまん、倒せば終わるなんて軽率な事を言って悪かった。」
俺はそうセリヤに謝った。だってそうしないとゴブリンキング達と戦い、散っていった冒険者達に失礼だと思ったからだ。
「いやいや、謝らなくて良いわ。誰だって最初はそう言うはずよ。」
セリヤは謝罪をした俺にそう言い、自分と今は亡き両親が写っている写真を手に取って、それを見ながらこう言った。
「だから私はもっともっと強くなって、ゴブリンキングを倒し、死の道を無くす為に冒険者になったの」
その言葉にはセリヤの強い決意が込められていた。
立派な奴だぜ、まったく。
「はい暗い話はこれでおしまい!テツヤはなんで冒険者になったの?」
って今度は俺の番かよ!?異世界転生しちゃって〜なんていえねぇ...…
てかこれで俺の動機も暗い話だったら一体こいつどうするつもりだったんだよ。
俺は頭の中で散々文句を言いながらも、セリヤの質問にこう答えた。まぁ、一応あるっちゃあるからな。
「俺は憧れてたんだよ、かっこいい人間にな。」
俺は今までろくでもない人生しか歩んで来ていなかった。だからこの異世界で夢を見たくなった、それだけの事さ。
どうだ?アニメや漫画の主人公みたいにかっこよく決まったか?
「へぇ〜そうなのね。」
って反応薄いな!なんかもう少しないのかよ。
俺は大きくため息を吐いた、なんか疲れたぜ。
ん?なんだ?ため息を吐きすぎだって?
うっせ。俺のクセなんだよ。
俺は天井を見ながらポリポリと頭を掻く。
これからどうするかを考えてたんだ。
するとセリヤが何かを思い出したように「そうだ!」と言い、俺にこう聞いてきた。
「テツヤって誰かとパーティ組んだりしてる?」
パーティ?あぁ、チームで戦うやつか、ゲームとかでもよくあるよな。
「組んでないけど?」
というか、誰かとパーティを組むなんて夢のまた夢だろ。
「じゃあ私とパーティ組まない?」
え……?えぇぇぇぇぇぇ!?
夢のまた夢叶っちゃったよ!てか叶うの早すぎだろ!
「え!?良いのか!?」
俺はそう驚きの声を上げてしまった。
だってパーティなんて存在まず忘れてたし、セリヤとの関係も今日限りで、明日からはまた一人寂しくスライムハントか〜なんて思ってたんだぜ?
「えぇ、私もパーティ組んでないし、こうやって知り合ったのも何かの縁だしね!」
何かの縁……かぁ。こうやって俺とセリヤを巡り合わせてくれた神様。ありがとう!!俺車に轢かれて死んだ時はアンタの事嫌いだったけど、良い奴じゃねえか!
あ、でもパーティ組むなら一応ユニークスキルの事を言っとかないとな。
「なぁ、ちなみになんだけど...」
俺は興奮で激しくなった呼吸を整え、俺がユニークスキル[レベルアップ]というなんとも嘘くさいユニークスキルを持っている事を説明した。引かれる事覚悟でだ。
しかし、セリヤの反応は思ったよりも薄かった。
「へぇ〜テツヤってユニークスキル持ちなのね。」
あれ?あんまり驚かないのか?
「驚かないんだな。」
俺はセリヤにそう言う。
「えぇ、ユニークスキル持ち自体はたくさんって訳では無いけど以外に居るわよ、ユニークスキルがレベルアップってのは初めて聞いたけど。それでレベルアップしたら強くなるんでしょ?」
「まぁそうなんだけど、その……良いのか……?」
「良いって何が?」
コイツ本当になんとも思わないのか?
「そんな胡散臭いユニークスキル持ちのやつとパーティ組んでも?」
俺がずっと思っていた事はこれだった。
普通こんな胡散臭いやつ、パーティには入れんだろ。
しかしセリヤは笑顔でこう言った。
「胡散臭い?むしろ面白いじゃない!」
あ、こいつバカなんだわ。
俺は可愛らしくニコッと笑うセリヤの顔を見ながらそう思った。
こうして俺とセリアはパーティを組む事になったのだった。
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