幻影の騎士団
「グーネウム帝国が隠している事、それはな?金を持っている上級国民達に押し潰されている貧乏な国民達の存在だ。」
アランがそう言った瞬間、空気が一気に重くなった気がした。
更にアランはこう続ける。
「あの帝国が栄えているのは本当だ。だがそれはあの国の王が定期的に、貧乏な国民達から金をむしり取ってるからなんだよ。」
な……そんな事をしてる国があるのかよ……ありえねぇな。
「それって......!そんな事許されないわ!」
セリヤが机を勢い良く叩きつけながらそう言う。
すると、そんなセリヤを見ながらアランは冷静に、
「あぁ、セリヤの言う通り。そんな事は絶対許されない事だ。」
そうセリヤのセリフを肯定してから、残念そうにこう続けた。
「だがな、あの国の王は絶対的な強さを持っている幻影の騎士団を配下に置いているから、誰も抵抗は出来ない。要するに、貧乏な国民はあの国に居る限り、王からの強制金銭搾取から逃れる事は出来ないんだ。」
なるほど、武力を使って強制的に縛ってるって訳か。
悪逆非道な事をする奴はどんな世界にも居るもんだな――と、そこで俺の頭の中に一つの疑問が浮かんだ。
それはなぜ、そんなグーネウム帝国の裏情報を、ここに居るアランが知っているのかと言う事だ。
確かに、そんなめちゃくちゃな事ばかりしていたせいで、どこかから情報が漏れ、意外にみんな知っている事なのかもしれない。だが、そうじゃないとしたらなぜ……?
気になった俺はアランに対して、
「でも、なんでそんなにグーネウム帝国の闇を知っているんだ?」
そう質問した。
すると、俺のセリフを聞いたアランは、悪っぽく笑いながらこう言った。
「逃げ出したんだよ、グーネウム帝国からな」
な……逃げ出した。だと?
「え?逃げ出したってどういう事!?」
アランのセリフを聞いたセリヤがそう声を上げる。
「逃げ出したって……そんな簡単に逃げられるのか?」
俺もそうセリヤのセリフに乗っかる様に聞く。
するとアランは、昔の激闘を思い返すかのように腕を組みながら、
「いや、ものすごく大変だった。夜中に、見張りの居ない時間を見計らって逃げたんだよ。
まぁそれでも見張りがゼロという訳でも無かったから戦闘になった時に備えて冒険者含む数人でな。全く、あの時の戦闘は堪えたぜ……と、それは別に良いか。
まぁそれでなんとかグーネウム帝国から脱出した後、一緒に脱出した奴らと別れ、俺は一人グーネウム帝国から少し離れたこの小屋に住んでるって訳だ。」
そう、グーネウム帝国脱出の全貌を語った。
「なるほど、そりゃあ大変だっただろうな」
俺は労いの意味も込めてアランにそう言う。
全く、コイツてっきりただのキノコ料理が上手いだけの奴かと思ってたが、すごい人生を送ってやがった。
俺はそうアランの濃すぎる人生に驚いていると、
「とまぁ、グーネウム帝国の説明はこんなところだが、なにあそこに用でもあるのか?」
アランが俺にグーネウム帝国がどんな所かの説明を頼んだ訳を聞いてきた。
あぁ、確かにまだアランには俺たちがグーネウム帝国に行こうとしていること、言ってなかったな。
「あぁ、俺とセリヤで今旅をしていてな、次に行くのがグーネウム帝国なんだ。」
俺は理由を聞いてきたアランにそう返す。
するとアランは、
「そうなのか、でもテツヤ、セリヤ、あそこはここから相当離れてるぜ?」
そう言ってきた。
確かにさっきのグーネウム帝国脱出物語の話の終盤、この小屋からグーネウム帝国は少し離れてるって言ってたもんな。
「どれくらい離れてるんだ?」
俺はアランにそう聞く。
まぁ離れてるって言っても知れてるだろ。
するとアランは腕を組みながら、
「そうだなぁ……明日の朝ここを出発したとしても、着くのは夜頃だろうな。」
そう言った。ってよ、夜頃だと!?そりゃぁきついな......
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