絶望のゴブリンキング
「おい!大丈夫か!って......ッ!?」
俺は奥から吹き飛んできた人の顔を見て、やっと気付いたのだ。
「セリヤ!?」
奥から吹き飛ばされてきたのはセリヤだったという事を。
どうなってんだよ!?
俺はいきなりの出来事に動揺が隠せなかった。
「大丈夫か!?セリヤ!」
俺と同じ様にローズオーラもそうセリヤに声を掛ける。
するとセリヤは、
「はぁはぁ、何とか、大丈夫よ。」
手に持った剣を杖代わりにして立ち上がると、口から一筋の血を流しながらもそう言った。
そして直ぐに、
「それよりも……奥から来ているわ……」
道の奥の方を指差しながらそう言った。
奥、だって?
俺は直ぐにセリヤが吹き飛んで来た方を見る。
そこで俺は確かに見た。
「な......」
奥からゆっくりと歩いてくるそれを。
それに気付いたゴブリン達は、まるでボスの登場に動揺を隠せない手下の様に、顔に焦りを浮かべて、直ぐに引き下がって行った。
いや……ゴブリン達が下がって行ったのはプラスだが……アレはやばいだろ……
そう、俺たちの前に現れたそれは、身長は3メートル程、身体には鎧を纏っており、頭に王冠を被っている、紛れも無くゴブリンキングだった。
「クッ……」
さっきまで体力が底をついて、絶対にもう動けないと思っていたが、目の前にあんなのが現れたら意外に動けるものだ。
俺は直ぐにゴブリンキングの方に杖を向けると、
「草木を燃やせ、ファイアボールッ!!」
俺が使える数少ない最弱魔法の中で、一番の火力を誇るファイアボールを放った。
流石に体力的にコントロール機能は使わず、真っ直ぐ直線に飛んで行く攻撃だ。
まぁ正直こんな単調な攻撃は普通のゴブリンでも余裕で避けられるだろうから、直撃は期待していなかったが。
しかし、なんとゴブリンキングは、俺の放ったファイアボールを避けようとはしなかった。
な!?コイツまさか身体で受け止める気か!?
いくらゴブリンキングでも、流石にそれはキツイだろ。
だが、やはりゴブリンキングは避けず、ファイアボールは身体に直撃、レベルが上がっていた事もあり、今までよりも一段と強い爆発と爆風を放った。
どうだ......?やったか?
俺は爆発により巻き起こった砂塵で見えなくなったゴブリンキングの方を凝視する。
すると、
「な……」
なんということか、ゴブリンキングは全くの無傷で、砂塵の中から姿を現したのだ。
「う、嘘だろ……?」
一応レベル20なんだぞ?俺。
あのサラマンダーでも効いてたのに......
おそらくゴブリンキングが身体に纏っている鎧のせいなんだろうが、いくらなんでも固すぎだろ……
すると、俺の絶望っぷりを見たセリヤは、このままだとやられると思ったのだろう、
「はぁぁぁぁ!!」
そう叫び声を上げると、剣を構え、ゴブリンキングの方へ走って行った。
そして一瞬でゴブリンキングの目の前まで移動したセリヤは、
「くらいなさいっ!!」
そう言いながら高く飛び上がり、頭の位置まで来た所で剣を振りかぶった。
しかし、なんと次の瞬間、
「グォォォォォォォ!!」
ゴブリンキングはそう咆哮を上げ、声の圧だけでセリヤを吹き飛ばした。
「嘘だろ……」
これは悪い夢か何かか?――って、ん?なんだ?そんな事考えてる暇があったら攻撃しろって?確かに傍から見たらそう思うかもしれないが、一緒に攻撃しようとすると、仲間にも攻撃の影響が出るんだよ。
特に俺なんて攻撃範囲の広い魔法しか使えないからな。
だが、攻撃しない間に俺たちが何もしない訳が無い。
そう、俺はセリヤを咆哮で吹き飛ばした直後に出来た隙を見逃していなかったのだ。
だが、今魔法を放つとセリヤにも攻撃の影響が出るかもしれない。
だから俺は、
「ローズオーラ!ゴブリンキングの腹に隙ができた!今だ!」
そう、指示を出した。
するとローズオーラは、
「分かっている!」
そう言い、こっちへ吹き飛んでくるセリヤとは反対に、地面を強く蹴ると、ゴブリンキングの方へ飛んで行った。
そして一瞬にして目の前までいどうすると、拳を固めた右手をググッと後ろに引き、ゴブリンキングのみぞおちパンチを叩き込もうとする。
それに対してやはりゴブリンキングは俺の予想通り、勢いよく叫んだせいで、腹を守る動作にはすぐには移れそうでは無かった。
よし!これなら行けるぞ!
「くらえぇぇぇぇぇ!!」
ローズオーラはそう叫ぶと、力をために溜めた拳を一気にゴブリンキングのみぞおちへと放った。
その瞬間、ドスンという鈍い音と共にローズオーラの拳はゴブリンキングのみぞおちへと入った。はずだった。
「......ッ!?」
なんとゴブリンキングには全くダメージが入っていなかったのだ。
そしてそのままローズオーラは、
「グォォォ!!」
ゴブリンキングに蹴飛ばされた。
「はぁはぁ......」
俺の横でそう荒く息をするセリヤと同じ様に、
「これは、なかなかだな......」
ローズオーラも荒く息をしていた。
しかし、おそらくローズオーラは、セリヤの様にバテているのでは無く、ゴブリンキングの予想外の強さに動揺しているのだ。
こんな表情をしているローズオーラは初めて見たぞ......?これやばいんじゃないか?
しかし、残念ながらこうして考えている間にもゴブリンキングは迫ってくる。当然、待ってはくれないのだ。
クソ......何か攻撃をしないと......
俺は何とか杖を向け、再びファイアボールを放とうとした。
しかし、呪文を唱え始める前にローズオーラが俺の前に手を伸ばし、
「撃つな、我に考えがある。」
そう言った。
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