託された想い
周りの冒険者たちがゴブリンとの交戦を開始した音を聞いてから5分程経った頃、
「ここは……」
俺たちは見覚えのある場所に着いた。
「懐かしいわね」
セリヤが周りを見渡しながらそう言う。
俺たちが着いたのは以前に大蛇と戦った直径十メートル程の円形の場所だった。
そう言えば、俺とセリヤの物語はここから始まったよな......懐かしいぜ。
あの頃の俺はユニークスキル[レベルアップ]を手に入れたばかりの頃で、スライムを倒しまくってたよな。
セリヤもまだまだ未熟だった。
俺たち、実は結構成長したんだな。
俺はそう相変わらず神々しい場所で懐かしんでいると、
「あまりゆっくりしている時間は無さそうだぞ。」
ハチマキを巻いた冒険者がそう言い、俺を現実に引き戻した。
「囲まれたわね......」
セリヤもそう呟く。
囲まれた、だと?
俺は直ぐに周りの茂みを見渡す。
すると、草木の間からいくつもの赤く鋭い光が浮かんでいた。
.....遂に来やがったか。
俺は無言でハチマキを巻いた冒険者とアイコンタクトを取り、互いに頷く。
それはこれから始まる戦闘を予知させるものだった。
そしてその次の瞬間、
「行くぞ!!」
ハチマキを巻いた冒険者が森に響く声でそう叫んだ。
周りにいる冒険者たちに、交戦を開始した事を知らせる為だ。
すると直ぐに、
「ギャギャギャァァァ!!」
草木の間から赤く鋭い光を浮かばせていたゴブリン達がそう叫びながら一斉に襲いかかって来る。
いきなり来やがったな!
俺はすぐさま杖をゴブリンの方へと向け、
「草木を燃やせ、ファイアボール!!」
飛びかかって来たゴブリンにファイアボールを放つ。
しかし、モンスターの中では賢い部類に入るゴブリンは、そんな単調な攻撃は簡単には当たらない。
ゴブリンは身体を斜めに逸らすと、真っ直ぐ飛んでくるファイアボールを交わした。
「ギャギャァァ!!」
そのゴブリンは俺の攻撃を交わした事で不気味な笑みを浮かべ、勝ちを確信したようにそう叫びながら飛びかかってくる――が、ふっ、甘いな!
この杖はホーミング機能付きだぜ?
俺は不気味な笑みを浮かべて飛びかかって来るゴブリンを嘲笑うように笑みを浮かべ返すと、
杖でファイアボールの動きをコントロールし、ゴブリンの背中に勢い良く直撃させた。
その瞬間、
「ギャギャァァ!?!?」
ゴブリンは凄まじい爆風と共に爆散した。
予想はしていたが、やっぱりゴブリン単体ではそこまで強くないな。
俺はそう爆散したゴブリンを見ながらそう思う。
そう、単体なら。
しかし、残念ながら俺たちの周りには数えるのも嫌になる程のゴブリン達が次々と襲いかかって来ていた。
こりゃマジでキリがねぇぜ。俺は額から流れてきた汗を片手で拭う。すると、
「クソッ!」
俺の右側からそう声が聞こえた。
直ぐにそちら側を見ると、
セリヤが数体のゴブリンに囲まれていた。
クッ……!アイツ使い慣れてないお父さんの剣を使ってるせいで、いつも通りの動きが出来てないじゃねぇか!
俺はすぐさま杖を向けると、ファイアボールをセリヤを囲むゴブリンに放とうとする。
しかし、そうする前に、
「はぁぁぁぁ!!」
ローズオーラが拳でセリヤを囲むゴブリン達を殴った。
その瞬間、
「ギャギャァァ!?!?」
ただのパンチからは想像も出来ないような鈍い音が鳴り、
ゴブリンは声を上げながら吹き飛び、地面へと倒れた。
アイツやっぱりめちゃくちゃ強ぇぇ!!魔族は伊達じゃねぇな。
俺はそう今更ながら改めてローズオーラの強さを実感した。
「ありがとうオーラ!」
自分を助けてくれたローズオーラにそう礼を言うセリヤ。
「あぁ!我に任せろ!」
ローズオーラは、そう無邪気な声で返す。
しかし、その声はいつもの様な子供っぽさも含まれながら、とても心強いものだった。
とりあえずセリヤが怪我をしなくて良かったぜ――にしても、数が多すぎるな。
俺は周りにいるゴブリン達を見ながらそう思う。
すると、
「お前らは先に進んでくれ!俺たちは、ここのゴブリンを食い止める!」
ハチマキを巻いた冒険者が、背中に担いでいた大剣でゴブリンを切り飛ばしながらそう言った。って!?そんなの無理だろ!?この数のゴブリンをお前らだけで!?
「ダメだ!そんな事したら......お前ら死ぬぞ!」
俺はそう叫ぶ。ハチマキを巻いた冒険者含む俺と一緒に行動していた奴らはそれなりには動ける様だが、お世辞にも強いとは言えなかったからだ。
しかもそれに加えて相手の数は底知れず。
正直、無謀にも程があった。
しかし、ハチマキを巻いた冒険者は、
「俺たちはお前らをゴブリンキングの所まで無事に届ける為にいるんだ!お前らがずっとここに居たら俺たちは本当に無駄死にになっちまうぞ!だから行け!俺たちは強くない分、お前らに託してるんだ!」
そしてそのセリフに続けて、ゴブリンにつけられた傷だらけの顔で笑い、
「ミリゴを救ってくれ!」
そう言った。
このセリフを聞くまで、俺はコイツに何を言われてもここに残って一緒に最後まで戦うつもりだった。
ここで俺たちだけ進んでは、コイツらを見捨てたみたいになると思ったからだ。
……だけど、んな事言われたら行くしかねぇじゃねぇか。
「行くぞセリヤ、オーラ。」
俺は真剣な声で、セリヤとローズオーラにそう言った。
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