秘密の場所
「よし!俺たちも行くぞ!」
「えぇ!」「我に任せろ!」
こうして俺たちも、走る冒険者を追いかける様に走り出した。
よし、じゃあここで薬草の森の形を簡単に説明しようと思う。
薬草の森にはYの字の様な形になっている。
入り口はYの下部分で、進んで行くと二つの分かれ道が出てくる。そんな感じのシンプルな作りだ。
だから薬草は凄く見つけやすい。
まぁ薬草を採るための森だから見つけやすくなっているのは当たり前なんだが。
ん?なんだ?薬草を見つけやすいなら早く行かないと全部取られるって?確かにその通り。
制限時間は30分らしいが、20分もしたらほとんど無くなるだろう。
だが、焦ることは無い。
実はな?この薬草の森には知る人ぞ知る、秘密の道があるんだよ。
それは薬草の森に入ってすぐ、左側に少し木が少ない所があるんだ。
そこを奥に進むと、誰にも見つからずに生えまくってる薬草が大量にある。
だから俺が薬草を集めて生計を立ててた時は毎回そこの薬草を取ってたんだ。
あそこに生えてる薬草は一つ一つがデカいから、依頼してきた人も喜ぶんだよな。
って別にそんな事はどうでもいいか。
とにかく、俺はそこで薬草を取ろうと思う。
っと、お前らに作戦を説明している間に薬草の森の入り口に着いた。
よし!じゃあ早速取っていくとするか。
俺たちが着いた頃にはもう薬草取り合戦が始まっていた。
これは割と急いだ方が良さそうだな。
「よし、セリヤとオーラは、他の冒険者が取り損ねている薬草を取って行ってくれ。」
俺はそうセリヤとローズオーラに指示を出す。
するとローズオーラは、
「よし分かった!」
そう言うと、森の奥の方へ走って行った。
おいおい、周りのヤツとぶつかるぞ。
すると、まだ動いていなかったセリヤが、
「テツヤはどうするの?」
心配そうにそう聞いてくる。
まさか俺がちゃんと薬草を取ってくるのかが心配なのか?
ふっ。俺を舐めてもらっちゃ困るな。
「俺はセリヤと出会うまで、結構薬草集めてたんだぜ?心配すんな!」
心配そうなセリヤに向けて、超絶ドヤ顔でそうかっこよく言い放った。
するとセリヤは、
「全然カッコよくないけど......まぁ分かったわ。」
残念そうに俺を見ながらそう言い、ローズオーラを追いかける様に森へと入って行った。
はぁ......今絶対全然カッコよくないって言葉付けなくても良かったよな?ヘコむぜ全く。
俺はため息を吐くと、先程説明した作戦通り秘密の場所へと走って行った。
「よし、ここだな。」
秘密の場所の前に着くと、俺は早速入る事にした。
久しぶりに来たが、薬草はあるだろうか。
俺は正直不安だった。だってこれで先客が居たりしたら俺めっちゃダサいじゃん?
俺はドキドキしながら草を掻き分け、奥へと進んで行く。
するとそこには――
「うぉ……!」
俺が薬草を取っていた時よりも、更に多く生えまくっていた。
やっべぇ!これやっべぇ!
俺はすぐに地面に這いつくばり、生えた薬草を次々と引き抜いていく。
薬草取るのってこんなに楽しかったっけ!
それから俺は、10分くらい地面にびっしりと生えた薬草を取りまくった。
「はぁはぁ......これで全部か......」
額から流れ落ちてくる汗を拭いながらそう呟く。
秘密の場所に生えていた薬草は、あらかじめ持って来ていた入れ物をパンパンにした。
これはおそらく優勝間違いないだろう。
まさか俺、モンスター倒さずに薬草集めてた方が良いんじゃね?思わずそう考えてしまうくらい大量に薬草を取ることが出来た。
とはいえ、まだ制限時間内だ。
セリヤとローズオーラの手伝いにでも行くとするか。
俺は再び草を掻き分けて秘密の場所から出ると、そこには異様な光景が広がっていた。
冒険者達が並んで木の下を見たり、草を掻き分けたりしながら薬草を探していたのだ。
いつもはこんなに人がいる場所じゃないから、なんだか笑っちまう光景だな。
俺はそう思いながら、セリヤとローズオーラを探し始めた。
「お、やっと居たか。」
俺が二人を見つけたのは、5分程経った頃だった。
二人は、Yの左上の所で、他の冒険者達に混じって薬草を集めていた。
「よっ、どうだ?調子は。」
俺はそうセリヤとローズオーラに片手を上げて言う。
すると二人は、
「それが全然ダメなのよ。」「我、疲れたぁ」
額に汗を浮かべてそう言いながら、何本か薬草が入った袋を見せてきた。
……こりゃ少ないな。
だが、この雰囲気を見ると、周りもセリヤやローズオーラとほとんど差が無いんだろう。
ふっ......それに比べてこの俺は......!
「どうだ?」
俺は超絶ドヤ顔で薬草がパンパンに詰まった入れ物を見せる。
すると二人は、
「え!?凄いじゃない!」「テツヤ!なかなかやるな!」
驚いた様にそう言った。
ふっ……そうだろう?
すると、二人の声に反応して、周りの冒険者達も俺の集めた薬草を見に来た。そして、
「うお!こりゃすげえ!」「今年の優勝は、兄ちゃんに決まりだな!」
みんなが口々にそう言った。
こりゃ流石に照れるな。
俺は笑いながら頭の後ろをさすった。
すると、何かを叫びながらこちらに走ってくる人を見つけた。
ん?何やってんだ?アイツ。
俺は何を叫んでいるのか聞く為に耳を傾ける。
その人は、必死の形相で俺たちにこう言っていた。
「お前ら!ミリゴ大収穫祭は一旦中止だ!ゴブリン達が洞窟から出てきた!死の道が来るぞ!」
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