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理由


「はぁ......」

 セリヤに風呂から強制的に出された俺は、リビングの椅子に座ると、身体をタオルで拭きながら、ため息を吐いた。

 たく、せっかく気持ちよく朝風呂に入ってたっていうのに……最悪だぜ。


 すると、風呂の方から、

「ふぅ、いい湯だった!」

 ちゃんと服を着たローズオーラが首にタオルを掛けてリビングに入ってきた。


 風呂出るのめちゃくちゃ早ぇじゃねぇか、てかコイツ、俺に悪い事したとか思ってねぇな?

「おい、オーラ。俺に言う事あるんじゃねぇか?」

俺はニコニコしながらリビングに入ってきたローズオーラ(俺もセリヤと同じ様にオーラと呼んでいる)にそう声を掛ける。


 さっき俺はお前のせいで風呂から投げ出されたんだぞ?ごめんの一言くらいあるだろ?

 しかしローズオーラは、

「え?言うことぉ?」

 そう言うと、腕を組んで考え出した。

 なんで考える必要があるんだよ......コイツまさか本当に悪気とか無いのか?


 俺が呆れていると、

「あ、分かった!」

 ローズオーラは顔をパァっと明るくした。

 お、やっと分かったか、まぁ流石にそこら辺はちゃんとして――

「セリヤがお風呂に入ってるから覗くチャンスだぞ!」

 無かったぁぁぁぁ!?!?


「げほげほ!?」

 俺は予想外過ぎるローズオーラの回答にむせてしまった。

 いきなり何言ってんだよコイツ!?

「お、お前!俺に悪いことしたとか思って無いのか!」

 俺は慌ててそう聞く。


 するとローズオーラは頭の上に?を浮かべて、

「悪いこと?我、なんかしたっけ?」

 首を傾げながらそう言った。

 あ、もうダメだコイツ。


 俺はそこで怒る気すら無くなった。

「はぁ......なんでもないよ」

 ため息混じりにそう言う。

 魔族ってのはみんなこんなのなのか?だとしたら魔族はろくな奴らじゃねぇよ。

 お前らも魔族(特にガキ)と一緒に暮らす時は気を付けろよ。


 その後、セリヤが風呂から上がり、いつもの様に朝ごはんの準備を始めた。

 風呂から上がった頃には俺の事を変態ロリコンなんて史上最悪のあだ名で呼ぶ事は無かったから、セリヤも俺が悪くない事に気付いたんだろう。

 いやぁ良かった良かった。

 これで未だに「おい変態ロリコン!」なんて呼ばれ方してたら家飛び出してるわ。っと話が変な方向に行っちまったな。


 俺はというとさっきと同じ椅子に座っている。

ローズオーラは俺の隣だ。

 よくわかんねぇが、さっきからコップに入った水を遠心力でぐるぐる回して遊んでる。


 コイツ、やる事ねぇのか?いかにも暇人って感じだな――いや、コイツは人間じゃねぇから暇魔族か?ってそんなのどうでもいい。


「なぁオーラ」

 俺は身体をローズオーラの方に向けてそう言う。

 ずっと聞きたいことがあったんだよ。

「ん?なんだ?」

 ローズオーラは俺のセリフを聞くと、水の入ったコップを机に置いてこっちに身体を向ける。


「オーラってなんでレグル山賊のリーダーをしてたんだ?」

 そう、俺がずっと知りたかったのは、なぜローズオーラがレグル山賊のリーダーをしていたのかという事だ。

俺はこの数日を通してローズオーラと接してきた。

 それで思ったんだ。

確かにさっきみたいにちょっかいをかけたりそれに謝らなかったりする事はあるが、「悪いヤツじゃない」と。


 コイツは絶対根は悪いやつじゃない。

なのになんでレグル山賊みたいな悪党のリーダーをしていたのかがよく分からなかった。

 お前らもそれはローズオーラ初登場から疑問に思ってただろ?


 するとローズオーラは、

「なんだ、そんな事か」

 拍子抜けした声でそう言った。

 そんな事って......結構重要な事だと思うがな。

「ただの暇つぶしだ。」

 へ……?う、上手く聞き取れなかった様だ。

「い、今なんつった?」

 俺は思わずそう聞き返してしまう。


 しかし、やはり先程の回答と内容は変わらず、

「だから、暇つぶしだ。」

 そう言った……って、暇つぶし......?

「だって我こう見えても200年くらい生きてるからさ、暇になるんだよな。

 だから試しに軍団を作って人間達にちょっかいかけたら面白いんじゃないかな〜って。」

 コイツなんて事口走ってんだよ。


「はぁ......」

さっきのはやっぱ無しだ。コイツはやっぱり悪いヤ――

「でもさ、」

 ん?

「でも?」

「もうそんな事はしない、だってこの街の人間、良い奴ばかりだからな。これからは迷惑かけたぶん守って行く。」

 ローズオーラは子供らしく笑うと、確かにそう言った。


 そう、実はお前らには話していなかったが、ローズオーラは仲間になってから一度、ミリゴの人と対面した事があるのだ。

 その時、俺もセリヤも、そしてきっとローズオーラ自身も悪口を吐かれると思った。

 なんてったって、ローズオーラはミリゴの街の人間に何度も迷惑を掛けてきたレグル山賊のリーダーだからだ。


 しかし、ミリゴの人達はローズオーラに悪口を吐く事は全く無く、

「嬢ちゃんレグル山賊のリーダーだったんだろ?もう悪い事はしないでくれよ?」

 そう笑い混じりでフレンドリーに接してくれたのだ。

 おそらくその事があったからこそ、今みたいなセリフが出たんだろうな。


「なるほど、教えてくれてありがとな。」

 俺はそうローズオーラに礼を言う。

やっぱり根は悪いヤツじゃ無かったな。

これでモヤモヤが一つ消えたって訳だ。

ふぅ、スッキリしたぜ。


 そうこうしている間に、朝ごはんが出来た様だ。

 よし、今日も一日頑張るかね。

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