油断
「魔法消滅」
ローズオーラは俺の放った火の玉に右手を伸ばし、そう言った瞬間、俺の放った火の玉は一瞬にして消滅した。
「な……」
どういうことだよ!?俺のファイアボールが一瞬にして消えたぞ!?
「一体どういうこと……?」
離れた所から見ていたセリヤも俺と同じ様に動揺していた。
「どうだ?我のユニークスキルは!」
ローズオーラはそんな俺たちにそう言った。
コイツユニークスキル持ってたのかよ!?マジでめちゃくちゃ強い奴じゃねぇかコイツ。
こんなの勝てねぇよ。
俺はそこで完全に戦意喪失した。
いや、自分の放った魔法を目の前で消滅させられたんだぜ?そりゃ戦う気も無くすって。
俺は地面に座り込むと、杖を置いて両手を着いた。
するとローズオーラはそんな俺に、
「なんだ?もう諦めたのか?」
つまらなそうに言うと、俺の方へ歩いてきた。
そして目の前まで来るとニヤリと笑い
「我の勝ちだな!どうだ!すごいだろ?」
クソうざく煽って来た。
「テツヤ!なにやってんのよ!」
セリヤが俺にそう言う。
しょうがねぇだろ、確かに腹立つし悔しいか、こんなの勝てな――ん?ちょっと待てよ?
俺はそこで、ある事に気づいた。
コイツはこうやって近づいて来ているが、まだ追いかけっこは終わっていないよな?
じゃあ今コイツにタッチすれば俺の勝ちになるんじゃねぇのか?
「おい」
俺は未だに煽って来ているローズオーラにそう言う。
するとローズオーラは、
「ん?なんだ言い訳でもするつもりか?フッ、負け犬の遠吠えだぞ?」
意地の悪い笑みを浮かべながらそう言ってきた。
うっぜぇ……今に見てろよ?
俺も同じ様に意地の悪い笑みを浮かべると、そんなローズオーラのセリフに無理やり割り込むように、
「タッチ」
ローズオーラの足を触ると同時にそう言った。
すると、
「あぇ?」
ローズオーラはそう調子外れな声を出す。
しかしすぐにタッチされた事を理解すると、
「あぁぁぁぁぁ!?!?」
両手で頭を抱え、そう叫び、膝から崩れ落ちた。
マジでタッチ出来ちゃったよ。コイツただのバカなのか?
「お、おい……」
俺は地面に崩れてプルプルと震えているローズオーラにそう声を掛ける。
するとローズオーラは、目に涙を浮かべながら
「ま、負けは負けだ。レグル山賊は解散させる……」
そう言った。
こうして俺は、レグル山賊のリーダー、ローズオーラとの追いかけっこ勝負に勝ち(誇れる様な勝ち方では無かったが)その後、ローズオーラは約束通りレグル山賊を解散させたのだった。
それで今はセリヤの家に帰って来たところだ。
「ふぅ、疲れたな。」
俺はそう言い、椅子に座る。いやぁ、今日の俺はなかなかかっこよかったんじゃないか?
「ね、ねぇ……」
セリヤが俺の正面に座り、複雑な顔でそう言ってくる。
ん?なんだ?俺に感謝でも伝えたいのか?
「どうした?あ、礼なら要らないぜ?」
俺はセリヤにそう返すが、
「そうじゃなくて、」
違うらしい、じゃあ一体何なんだよ。
「じゃあなんだ?」
俺はセリヤにそう聞く。
するとセリヤは俺の横に座る人物を見ながらこう言った。
「なんでローズオーラが私の家に居るのよ!?」
「え?別に良くないか?」
俺は横に座るローズオーラを見ながらそう言う。
女の子は居れば居るだけプラスだろ。
「仕方なぁく住んでやるんだぞ!嬉しいだろ?」
ローズオーラも腕を組んで子供らしく笑いながらそう言う。
しかしセリヤは、
「嬉しくない!?コイツ仲間になるタイプのキャラじゃないでしょ普通!?」
そう叫んだ。
キャラって……メタ発言すんなよ。
「まぁ楽しいからいいじゃん!よし、テツヤ!追いかけっこで勝負だ!」
ローズオーラは家中を走り回りながらそう言う。
「よし!今度はちゃんと捕まえて完全勝利だ!」
俺もそんなローズオーラを追いかけ始めた。
それを見たセリヤは、
「はぁ……」
ため息を吐き、呆れた様に笑った。
こうして、セリヤ家はまた一段と騒がしくなったのだった。
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