ファイアーブレス
「これなら行けるぞ!」
俺はそう叫び、はぁはぁと荒く息をしているサラマンダーに杖の照準を合わせる。
そして、ファイアボールの呪文を唱えようとした、その時、
何故かサラマンダーがいきなり大量の空気を吸い出した。
この意味不明な行動に、俺は手が止まってしまう。
しかし、セリヤはサラマンダーのこの行動が何を意味しているのかに気付いたらしく、俺に対して
「テツヤ、危ない!」
そう叫び、被さるようにして俺を地面に押し倒した。
それと同時に、空気を身体の中に貯めきったサラマンダーは、
「ブォォォォォォ!!」
全ての空気を吐き出す様に、炎のブレスを放った。
サラマンダーが放ったブレスは10秒程経ってから止まった。
「く……」
くそ、炎の煙でよく見えねぇ……ってそんな事より、セリヤ!
「大丈夫か!」
俺は、自分を庇う様にして俺を押し倒したセリヤの方を見ながらそう叫ぶ。
すると、俺の横で倒れていたセリヤは、
「えぇ、背中と足に火傷を負っちゃったけど、何とか大丈夫よ」
火傷した部分を押さえながらそう言った。
火傷だって……?怪我したのか!?
「見せてみろ!」
俺はすぐに立ち上がると、セリヤの方に駆け寄って行き、傷口を見る。
「……ッ」
確かに死ぬレベルの火傷では無さそうだが、背中の服は熱で破れて、痛々しい背中が丸見え、足の火傷も酷く、とても戦える状態では無かった。
……クソったれが、サラマンダー、絶対に許さねぇ……
俺はセリヤに、
「お前は休んどけ」
そう言って立ち上がると、真っ赤な目を鋭く光らせているサラマンダーの方を見る。
そんな俺にセリヤは、
「でも、テツヤだけじゃ......」
そう言って立ち上がろうとするが、やはり足の火傷がよっぽど痛いんだろう、立つことが出来ていなかった。
……たく、どんだけ頑張るんだよ……お前。
「大丈夫だ。俺はこんな所では負けねぇ」
俺は何とか立ち上がろうとしているセリヤにそう言うと、
サラマンダーの方に杖の照準を向けた。そして一言、こう言った。
「来いよ。」
瞬間――
「しゃァァァァ!!」
サラマンダーは、一直線に俺の方へと飛んでくる。
対して俺は、「ふぅ……」と覚悟を決めるように息を吐くと、
「耐えてくれよ……!」
杖にそう願い、手に力を入れる。
そして――
「草木を燃やせ、ファイアボール!!」
向かった来るサラマンダーに火の玉を放った。
しかし、もちろんそんな単純な攻撃が当たるはず無く、サラマンダーは、身体を横に逸らして俺の攻撃を避けた。
だが、そんな事分かりきっている事だった。先程はセリヤと二人で戦っていたからこそ攻撃を入れる事が出来ていたが、今は1対1だ。
だから俺は――
「まだまだだ!草木を燃やせ、ファイアボール!!」
連続でファイアボールを放った。
するとサラマンダーは、俺の連続攻撃を予想していなかったのか、
「しゃァ!?」
直撃はしなかったものの、攻撃を当てる事が出来た。
「まだまだ!!」
だが、俺はこんな所で攻撃の手を止める気は無かった。
その後も俺は、何度も何度もファイアボールを撃ち続けた。
サラマンダーは、そんな俺の連続攻撃を最初こそは避けていたが、体力が切れてきたのか、次第に避ける事が出来なくなっていた。
よし……!あと少し……!
今に来るまで、恐らく20発以上ファイアボールを放っていた。
体力的にももう限界に近かったが、体力が無くなるまでにはサラマンダーを倒す事は出来そうだった。
しかし、杖はもう限界だった。
バキバキとヒビが入り始めたのだ。
「なっ……!」
クソっ……何とか持ってくれ!
俺は必死にそう願ったが、残念ながらその思いは届かず、杖は、ファイアボールを放った直後に、真っ二つに割れた。
「クソが……」
それと同時に俺の体力も限界に達し、地面に膝を着いてしまった。
「くそ……あと一撃入れば……」
俺は、そう言いながらボロボロになったサラマンダーの方を見る。
サラマンダーは先程と同じ様に、大量の空気を吸い込み始めていた。
くそ……負けた……ここで俺は死ぬんだ……
俺は完全に戦意喪失し、地面を叩いた。
しかし、まだ彼女は諦めてはいなかった。
「はぁぁぁぁぁ!!!」
セリヤは火傷で痛む身体を何とか起こし、なんと弱っているサラマンダー目掛けて剣を投げたのだ。
俺もセリヤのその声を聞いて投げられた剣に気付いた。
瞬間――
「行っけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
俺は自然とそう叫んでいた。
すると、その剣は俺たちの喝に押されたのか、勢い良く飛んで行き見事サラマンダーの頭に突き刺さった。瞬間――
「しゃァァァァァァ!!」
サラマンダーはそう断末魔を上げ、身体からブレスを爆発させた。
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