お出まし
洞窟の中に入ると、予想していた通り静かだった。
恐らく、この前大蛇を倒した時と同じで、何か強いモンスターが居る時は元々そこに居るモンスター達は岩陰等に隠れているのだろう。
そして今この洞窟内にも同じ事が起きている。要するに、確実にサラマンダーはいるという事だ。
「よし、進むぞ」
「えぇ」
俺とセリヤは、そう会話を交わすと、薄暗い洞窟の奥へと足を進めた。
進み始めてから5分程経ったが、サラマンダーの気配は一向にしなかった。
本当にいるのか?
「おかしいな」
俺はセリヤにそう言う。
すると、セリヤもやはりおかしいと思っていたのだろう。
難しい顔をしながら、
「そうね……」
そう、俺のセリフに同調した。
それから更に10分程歩いたが、やはりサラマンダーは現れなかった。
それに、さっきからずっと歩いていたから少し疲れてきたな。
よし、ここらで少し休むか。
俺は額から流れる汗を手で拭きながら、
「セリヤ、少し休まないか?」
セリヤにそう提案した。
するとセリヤは小さな声で、
「静かにして!」
そう行った。
ん?なんだ?そんなに俺の声を聞きたくなかったのか?
「え?」
俺はそう聞き返したが、セリヤはさっきと同じ様に、
「いいから静かにして!」
そう言った。
これ以上聞いてもセリヤの答えは何も変わらないだろう。
だから俺は、
「分かったよ」
セリヤと同じ様に声を小さくしてそう言った。
すると、すぐにそれは聞こえてきた。
ペタ、ペタと洞窟の奥から足音が聞こえるのだ。
いや、足音と言うよりは、何かが地面に張り付く様な。
とにかくそんな音が聞こえた。
もう既に嫌な予感がするんですが……
俺は、ペタペタと音のする方に視線を向ける。
すると暗闇の奥から、二つの赤い丸が音と共に近づいて来ているのが見えた。
そしてその二つの赤い玉はどんどんスピードを上げて近付いて来たのだ。
これはまずいんじゃないか!?
俺はすぐさま杖を赤い玉の方に向け、
「光を放て!シャイニングボール!!」
光の玉を放った。
その光の玉は勢い良く飛んで行き、赤い玉の丁度真上に来た所で爆発した。
そしてその瞬間、俺はヤツの姿を見た。
「しゃァァァァァァ!!」
姿をあらわにした、真っ赤な目を持つサラマンダーは、そう叫び声を上げると急激にスピードを上げ、俺に飛び付いてくる。
やばいやばいやばい!!
俺は突如として姿を現したサラマンダーにビビり散らかしながらもすぐさま杖の照準を合わせて呪文を唱え、
「草木を燃やせ、ファイアボール!!」
杖から火の玉を放つ。
しかし、
「くっそ、早すぎだろ!」
サラマンダーは、いとも簡単に俺の攻撃を避けた。
そしてすぐに体勢を直すと、
「しゃァァ!!」
長々と伸びた鋭い爪で斬りかかってくる。
まずい……!
俺はすぐさま杖を構え直し、自分を守る様に
「大地を潤せ、ウォーターボール!!」
ウォーターボールを放った。
そのウォーターボールをサラマンダーは切り裂こうとしたが、爪が水に触れた瞬間、勢い良く爆発し、
「しゃァァ!?」
サラマンダーは飛ばされ、洞窟の壁に身体を強く打ち付けた。
よし!今がチャンスだ!
俺は、すぐさまセリヤに指示を出す。
「今だ!」
するとセリヤは、待ってましたと言わんばかりに、
「えぇ!」
力強くそう返事をし、背中に刺していた剣を抜くと、
「はぁぁぁ!!」
勢い良くサラマンダーに飛び付き、斬撃を放った。
そしてもちろん、サラマンダーは体勢が崩れていた為避ける事が出来ず、
「しゃァァ!?」
身体に深い切り傷を負った。
そんなサラマンダーに畳み掛けるように、セリヤは剣を握り直し、もう一度斬撃を放つ。
しかし、ここは流石にサラマンダーが避けた。
そして、今度はサラマンダーが、攻撃を空振り、体勢を崩しているセリヤに飛びつく。
そうはさせるかよ!
俺はすぐに杖を構え、
「草木を燃やせ、ファイアボール!!」
サラマンダーの方に火の玉を飛ばした。
そして、セリヤの事ばかりに気を取られていたサラマンダーは、俺の攻撃を見ておらず、
「しゃァァァァ!?!?」
火の玉は見事に命中、洞窟の奥へと吹き飛んだ。
よっしゃ!見たか!
そして、体勢を崩していたセリヤはその隙にこっちに戻って来た。
「ありがとう、テツヤ。助かったわ」
俺にそう礼を言うセリヤ。
それに対して俺は、
「あぁ、大丈夫だ。」
そう返した。
一方サラマンダーはというと、
「しゃァァ……」
息を切らしている様だった。
よし……!これなら行けるぞ!
しかし、人生というのは、そう上手くは行かない。
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