表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狐狗狸  作者: 黒部流水
1/1

短い間ですがお付き合いくださいませ。

 殺してやると、毎日思っていた。

 

 朝方、いつもの通り自分の前を歩いている。こいつはいつも自分が先導しなきゃ気が済まない。同じ歳というのに勝手に兄と弟を決めて、いつもいつも人が好い笑みを浮かべて、気持ちが悪いったらありゃしない。

 

 村の人もそうだ。皆騙されてる。あいつは二人の時はこんな“良い子”じゃない。何もかもこっちに押し付けてくる。

 

 これから行う日課の山菜採りだってそうだ。あいつは一人切株に腰掛け、自分だけが汗を流しながら必死に食を繋ぐものを採っている。取り分が少なければお前のせいだと酷く打つ。質が悪いことに皆からは見えない着物の内に傷を残してくる。一度抵抗してやり返してみたが、自分だけが悪者だ。

 

 踏みしめる草の音が嫌に耳に響く。思えば、こいつは最初からこうじゃなかったな。いつからだ。ああ、父と母が死んでからか。あの二人は頭が良く社交的なあいつを可愛がってた。それが羨ましくて、必死に追い着こうとした。けれど全部空回りして、結局は両親から疎まれただけだったな。手も出されたっけ。


 まあ、その後ちゃんと自分で厄介払いしたんだけど。


 さて、いつもの場所に着いた。


 後ろを向いたままのあいつに静かに近寄り、両手で首を掴む。ああ、いつも優位なこいつが慌ててる姿は面白いな。


 力任せに押し倒し、首に掛けたままの両手に渾身の力を込める。ジタバタと手足を動かしながら必死に抵抗している。けど段々とそれは静まっていき、ついには動かなくなった。死んだことを用心深く確認すると、亡骸を雑草の影に隠れている崖下に落とした。


 落ちた衝撃であらぬ方向に曲がったあいつを見て、ようやく気が付いた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ