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第一話

強欲な王様のお話


 むかしむかし、もう、数えることも厭うようなむかし、一人の王様がいました。


 王様は、その無類なき力をもって、人々を束ねて、一つの国を作りました。


 その一つの国は、他の国にどんどん攻め入っていって、いつしか、世界から、この国以外の国が無くなりました。


 そんなある日、王様は、他の皆を集めて言いました。


「天に今の地上の様子を伝えよう。我の偉業を伝えよう。」


 王様の声に皆驚きましたが、王様に逆らうことなんて考えることもできないでした。


 王様は、まず、地上の星を捕まえるように、大臣たちに命じました。


「この地上にある、すべての地上の星を捕まえてまいれ」

 上下も定かではない暗闇の中、わたしは、懐かしい声に、自分の名前を呼ばれた気がした。

 懐かしいといったのは、もう、半年以上も会っていないから、そして声を聴いたは、3年近く遡ることだから。冷たいようで、底には暖かい心の通っている声、確かに聞き覚えのある声が、わたしに、響いてきた気がした。


 ふと、隣を見ると、バンティーラ様が、珍しく神妙な面持ちで、一点を見つめていた。


「バンディーラ様?」


「うん?リスティル?……様はいらないわ」


 いつものように返される声にほっと、安心にも似た感情が胸の奥から沸き起こってくる。バンディーラ様の見ている方向に私も目を向ける。そこには、他と変わらない暗闇が広がっているだけだった。

 ただ、バンディーラ様の眼の奥に光が瞬いているのが見えていた。その瞳がとてもきれいで、何故かわたしに、郷愁を抱かせていた。




 そう思っていたのはほんの一瞬ので、不意に、わたしの体は、宙に投げ出された。ほんのわずかに浮いて、そのままの姿勢で、石舞台に、強かに、腰を打ち付けた。軽やかに着地しているバンディーラ様がいた。


「いた……たたっ!!」


「リスティルは、これ使うのは初めてだものね。出るときには十分に注意しないと、よく、どこかをぶつけるのよ。」


 周りを見ると、みな、どこかを打ち付けているようだった。そんな中で、ラーズだけが、平然と立っていた。何故か、バンディーラ様を睨んでいる。


「やっぱり、頭位吹き飛ばしておけばよかった」


 その口から、とても怖い一言が、漏れ出る。それを受けても、バンディーラ様は、別に気にした様子もなく、わたしに手を差し伸べた。


「マリベル、大丈夫か?」


「ええ、大丈夫」


「オリビア」


「平気よ。少しびっくりしただけ。ここは?どこなのかしら?」


 オリビアの声に、私はそう言えばと思い、辺りを見回した。調度品が整然と並べられている。この場所は、見覚えがある。


「……聖王廟?」


 3年くらい前に、ベルグランデ姉さまと真神国ギリーズに旅行に行ったときに、この光景とよく似た光景を見たことがある。そこで見たのは、大聖堂の奥に作られた、白を基調とした荘厳な空間だった。そこは、とてもきれいだったけど、こことは大違いだった。そこには、人が作ったことが、すぐにわかる感じだったけど、ここは、不思議と、人の手が入ったような形跡がない。でも、この空気からは、不思議と、あの聖域の空気と同じものを感じた。


「さあ、みんな立った?準備できたら出発しよう」


 バンディーラ様が、旗を掲げて、まるで、先導するように、歩き始めた。私は、この場所について深く考えるのを一旦やめて、その声に頷き、その後を追いかけた。


 少し歩くと、目の前に、大きな滑らかな岩戸が現れた。指を掛ける場所もないくらいに、つるつると磨き上げられた表面にかすかに分かれ目が見える。


「これは、どうすればいいのだ?」


 流石に、力自慢のロアでも、開けることは困難だと思われる。


「うん、大丈夫。ここはね、聖王たちの努力の賜物がまつられている場所だから。私がなんとかできるの」


「お供え物は、私に供えられているから、私のものよ!的な理屈では、誰も納得しないと思いますよ。バンディーラさま?」


「むぅ、ラーズがいじめる。リスティル」


 ふくれっ面で、バンディーラ様が、わたしの胸に飛び込んできた。


「ど、どうすればいいのでしょうか?」


 わたしの肩までしかない、バンディーラ様をどう取り扱えばいいのかもわからず、おろおろとしていると、ラーズが、バンディーラ様の首根っこをむんずと掴んだ。


「バンディーラ?遊ばないで。リスティルが困っているでしょう?」


 バンディーラ様は、しばらくわたしを見つめて、仕方ないというように、肩をすくめると、その扉に手をかけた。


「認証完了 おかえりなさいませ」


 感情のこもっていない、声が、一帯に響いた。しばし、静寂があった。


「お?何だ?」


 ロンディスが最初に気が付いた。低い音が、辺りに響いていた。それが、広間に満たされるのと同時に、扉が開き始めた。


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