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第七話 オリビア元副団長視点

 あの日から、3日が過ぎた。私は、旅団から追い出されたが、今まで、集めてきたお金の一部で聖域の街の外れの家を買い、そこで生活するようにしていた。家と言っても大したものではなく、外装はボロボロで内装もそこまで手が行き届いているものではなかったが、それでも、今のところ倒壊の危険もなく、しっかりと建っていて、さらに内部には、工房が備え付けてあった。

 荷物の運び入れがひと段落して、今は家の修繕に取り掛かっていた。


「全く、ロンディス、あなたまで追放されなくてもよかったのに」


「オリビア副団長こそ、普段なら黙って追放を受け入れないと思うけど何か思うことでもあったのかい?」


「ええ、あそこまで手が回っていると、もう遅かったから。あの場では、何を発言しても無駄ってわかっていたから。味方がいないってこれほどにつらいのね」


 私の言葉を聞いて、屋根の上から、自嘲的な乾いた笑い声が聞こえた。


「全く、そうだな・・・少しだけ、バンディーラの気持ちがわかるよ」


 笑いながら、そう答えた。でもわかっていた。バンディーラは紛れもない、聖王遺物をもつ本物の聖女で導にふさわしいということを。そして何より、あの時、光すら見失った私たちの導になってくれた(ともしび)だということも。


 その声に笑いながら、私は、3日前の鬱憤を晴らすように、板にくぎを打ち付けた。

 作業がひと段落するのにはまだ、少し時間がかかりそうだったが、私たちには、幸いにして無駄に過ごせる時間があった。


 午前中に、何とか、屋根の応急処置と壁の修理が終わりそうだ。となると、午後からは、ロンディスの荷物の運び出しができる。今日から、私とバンディーラはここに泊まって、ロンディスは、バンディーラの元居た安宿に泊まることになる。


 お昼は、顔見知りのコミュニティの市場の食堂で取ることにしていた。サラディスには、おおよそ5年から10年の間に行われる巡礼で、ここまでたどり着けたものの、国に帰るすべがなかったり、そもそも、国に帰るつもりのない訳ありで巡礼に来ている人たちが寄り集まって、小さなコミュニティを形成していた。

 この2週間の間、私はコミュニティの人たちとできるだけ仲良くなり、聖域ダンジョンの情報収集をしていた。本来ならば、近々フラジャイル旅団の幹部会に、コミュニティの人たちを紹介して、お互いの情報交換を行えるようにするつもりだった。しかし、結局は、私の追放でその機会が失われてしまった。そのことをコミュニティの顔役に伝えると、怒られるどころか、『そんなこともあるさ』と、慰めるように言われ、まだ、聖域の攻略を目指すのならば、拠点が必要だと、わざわざ、この場所を教えてくれた。ここまでしてもらえることは、予想外だったが、とても大きな収穫だった。


「でも、遅いな・・・」


「ええ、」


 バンディーラは、薬草摘みに出かけていた。数少ない現金を得る手段で、危険を伴う作業だったが、バンディーラは、「今日こそは市場で、あのマットを買って見せる」笑いながら出ていった。他の旅団の聖者、聖女の多くは貴族出身で、大事に扱われていると聞いている。聖者聖女が前線に出る旅団はほぼないから、バンディーラのようには、いかないだろう。


「ただいま~」


 そんな話をしている時だった。何事もなかったかのように、バンディーラが戻ってきた。


「ああ、お・・・」


「おか・・・」


「あの、不束者ですが…よろしくお願いします」


 バンディーラの隣には、少年ではなく、赤い髪に鈍い青い目の少女がいた。申し訳なさそうに顔を伏せているが、バンディーラを見るときには、その瞳にきらきらとしたものが見えている。


 巡礼服を着ているところを見ると、コミュニティの人間ではなくて、私たちと同じ、旅団に所属している人間だろう。そこまで分析したが、他の旅団との諍いの種を持ち込むのはあまり気持ちの良いものではなかった。


 ロンディスと、私は顔を合わせた。その表情を察したのか、バンディーラが申し訳なさそうな表情を浮かべる。


「あ…あのね、一緒に暮らせないかなって…思っているんだけど…。この子の旅団との話は、一応済んでるから…」


 『捨て猫を拾ってきました、飼っちゃダメ?』と、言っているようなバンディーラと、バンディーラに明らかに恩義を感じているような隣の少女を見て、私たちは、顔を見合わせた。。


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