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第三話 黄金の血塗られた巡礼路 5

 アーレスたちの掃討完了の知らせを受けて、ミッシェルたちサポーターは、陣地の設営に入った。陣地と言っても、天幕とダンジョンの地形を利用した形の粗末なもので、あくまで一時的な退避地として、使用される予定のもだった。


「よし、その荷物は、ここに。それは、ああ、そっちじゃない」


 ブライアンは、補給用の物資の振り分けを忙しそうにしていた。ミッシェルは、討伐隊の回復の手伝い。そして、ジェロは、本陣である、天幕の設営を終えて、サポーターと、パーティメンバーが休むためのテント設営に入っていた。


 カーン!カーン!カーンッ!!


 鐘の音が、ダンジョンに響き渡った。その音を聞き、ブライトンは、固形食を一つ口に含んだ。


「間に合いそうだな」


「ああ。何とかな」


 橋頭堡となる、陣地が確立すれば、いよいよ、ダンジョン中層への挑戦権が得られたことになる。他の旅団が、聖域攻略に尻込みする中で、今、フラジャイル旅団は、『黄金の巡礼路』攻略を順当に進めていると考えてもいいだろう。


 そんな風にジェロが考えていたところ、ブライトンから声を掛けられた。


「そう言えば、あの噂聞いたか?」


「噂?」


「ああ、『黄金の巡礼路』(ここ)でな、出たんだってよ」


「出たって?何が?」


「幽霊だよ」


「ゴーストやウィルオウィスプなら、確かに大変だな。対処がわかっていても、簡単にはいかないだろう」


「ちげえよ。本物の幽霊だよ」


「はあ?」


「前、偵察に出たやつから聞いたんだが、この近くに大穴があったよな」


 確かに、表層には、目につく場所に、底の見えない大穴があった。


「付近の掃討は終わったみたいなんだが、斥候隊全員が疲弊していて、止む負えず、滞在することになってしまったんだ。仕方なく、そのパーティは、巡礼路の古い建物を確認して、そこで、しばらく休憩を取ることにした」


「ああ」


『黄金の巡礼路』には、放棄されたような建物が、無数に存在している。その部屋の中には、宝箱がおかれていることもあるが、聖域ダンジョン内に留まること自体が、危険な行為であるため、積極的に使用することはなかった。


「そいつは、比較的疲労が少なかったから、見張りを買って出たんだよ。まあ、掃討したと言っても、まるで沸いて出るように、モンスターが出現することもあるから、その対策だな。そんな時だったんだ」


 そいつは、大穴の近くにたたずむ、白い服の大柄な女性を見たのだという。


「白い服の大柄な女?」


「ああ、大穴の近くで、ただ、ぼうっとその底を見ていたらしい。まあ、女って気が付いたのは、そいつの視線を感じたのか、そいつと目が合ったらしい」


 目が合った瞬間は、お互いに、訝しむように見ていたが、その女は、ぞっとするような笑みを浮かべて、


「その後、自らの足で、大穴に落ちていったと言っているんだ。まあ、幻覚を見たのだろうと、皆思っているがな」


「なんだそりゃ」


 ジェロは、少し呆れる様な声を上げた。全く、士気が落ちるから、そう言う話はしないでおいてほしいが。


「あら、私の利いていた話と違うわね。その女の周りには、キノコが、一緒だった。ってて言われているわ」


「え、私は、どこかの旅団の服を着た人が、一緒だったって聞いているけど」


 噂好きの団員が集まってきていた。


「うん、でも、最後は一緒ね。皆が自らの足で、大穴に落ちていったっていうところは」


 みな、ぞくっと身を震わせ、今通ってきた道をそっと振り返った。


「おい、サポーター!手が止まっているぞ。まもなく本隊が到着するらしい。さっさと手を動かせ」


 ルーカスの声に、噂話をしていた数人は、話を止めて、作業に戻った。




 作業の完了を待っていたかのように、フェリガン団長の本隊と、聖女メルダが到着した。合わせて、後詰めのサポーターが到着した。

 フェリガンとメルダが、握手を交わす姿を見て、パーティの中からは安堵の声が漏れた。


「さて、これからが、本番だ!!明日は、一気に下層深部まで進攻し、『落ちた大聖堂』を目指す!」


「皆の者、聖女メルダがしるべとなり、この聖域を攻略する。皆の力を、私の聖遺物『聖杯』に貸してほしい」


 気勢が上がった。いよいよ、フラジャイル旅団が歴史を創るときが来たのだ。

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