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第三話 黄金の血塗られた巡礼路 1

この後、間章が終わるまでは、R15(グロ、ダーク)のシーンがあることがあります。

 ミッシェルは、部屋で荷物をまとめていた。サポーターの隊は、朝一番に出立することになっていた。昨日は、マリアの具合を見ていて、ほとんど眠ってはいなかったが、少しけだるい頭を何とか働かせ、荷物を詰め終わる。


 ベッドには、マリアが休んでいて、モニカもベッドによりかかるようにすぅすぅと、安らかな寝息を立てていた。


 モニカは、2日後に入れ替わりだと確認して、言ってくるとこっそりと声を掛けた。当然に、返事はなかったが、昨日大変だった2人の安らかな寝顔を見ていると、それも、どうでもよく感じた。


「行ってきます」


 ミッシェルは、再びはっきりと言うと、部屋を出て、他のサポーターたちとともに、集合場所に向かった。そこには、アーレスとアメリアをはじめとした特級アタックパーティと、他2つのパーティが、サポーターたちの到着を待ちわびていた。


「おせえぞ。サポーターども」


「時間通りだと思いますが」


「馬鹿野郎、俺が遅いと言ったら遅いんだよ」


 ミッシェルの声に反論するように笑いながら答えた、決して怒っているように見えないその顔に、ミッシェルは人知れず、安どの息をもらした。アーレスは、サポーターの班全部がそろったことを確認して、傍らに立てかけてあった剣を取ると、腰を上げた。

 そのまま、説明をすると思ったが、その手は、そのまま、ローブを身を纏っている、大柄な男性に声をかけた。


「じゃあ、詳しい説明は、ガラード頼むわ」


 ガラードと呼ばれた魔導士が、とくに表情を変えることなく、一歩進み出た。


「これから、『黄金の巡礼路』の攻略を行う。現在のところ、攻略の安定が……」


 ガラードの説明は、わかりやすくも無責任な言葉で彩られていた。攻略は中層序盤で止まっている。そのため、攻略の再会には、サポーターの能力が必要になる。その一言をひねり出すのに相応の時間を有した。


「というわけだ」


「わかっているわよ。さっさと来いってことでしょう?」


 ガラードは、少し呆れたような表情を見せたが、ミッシェルの言葉に、少しホッとした表情を浮かべた。それに気が付いたのはミッシェルだけだったが、それが、何を意味するのかわからないまま、ガラードは、その舞台から降りた。


「さあ、いくぞ!」


 ガラードの長い説明を、少しいらいらした面持ちで聞いていたアーレスだったが、それが終わったことを確認して、全員に見えるように気勢を上げた。血の気の多い、パーティからは、同調するような声が上がったものの、サポーターは、それを冷めた視線で見ていた。


 ミッシェルは、ジェロの横に並び、その隊列に加わった。一行は、『黄金の巡礼路』の入り口を示す丘に差し掛かっていた。この丘を越えれば、『黄金の巡礼路』に入る。それは、聖域でありダンジョン。ただ今度は生きて帰れるという保障などどこにもなかった。


 そんな不安を察したのか、ジェロが、声をかけてきた。


「大丈夫です。お嬢様は、俺が守りますから」


 本当は、そんな関係ではないものの、この一か月で、この呼び方が、二人の間に定着しつつあった。こんな時でも、そう呼んでもらえることに、ミッシェルは、ジェロに気が付けれないように、密かに安心していた。


「ありがとう、ジェロ」


 丘を登る、そこは決して安定した平坦な道ではなく、浮石と泥が波打っている悪路といっても過言ではない道だった。そこを超える。やがて、丘の丘頂に至る。丘頂は、比較的土壌も安定し、荷物を置いて休むことができるだけのスペースが拓かれていた。


「よし、休憩」


 アーレスの声が響き、サポーター多くは、やれやれと、地面に荷物を置き汗を拭った。昇り始めた日は、少し高くなり、サポーターたちを照らしつつあった。


「少し涼しいところで休もうぜ」


「ああ、そうだな」



 チリチリン!チリッ、チリン!!」



 そんな中、コミュニティの氷売りとおもわしき一団が、『黄金の巡礼路』側から上がってきた。たちまちに、その一団を、サポーターはおろか、パーティが取り囲んだ。



 そんな中、ミッシェルは、その一団から離れて、先ほど上がってきた悪路を少し戻っていた。



「全く、これからのことを考えたら、休んだ方が身のためだと思いますが」


「そうは言わないの。これが、最後かもしれないから見届けたいの」


 そう言うと、ミッシェルは、藪の中に突っ込んでいった。ジェルは、やれやれと肩をすくめ、その後に続いた。藪は、胸の高さほどあったが、足元がしっかりとしていたおかげか、迷うことなく、ミッシェルは、探し求めていた場所に出る。丘の中腹、刈り取られた、草木の中にそれはあった。


「残っていたんだ」


 ミッシェルは感慨深く、呟いた。そこには、粗末なベンチが一つ用意してあった。


「ミッシェル様、ここは?」


 ジェルが追いついてきて、驚きの声を上げた。


「ここはね、秘密の場所。ここから見る、サラディスと、聖壁が好きだったの。」


 そう言うと、ミッシェルは、地面に自らのザックを降ろし、中身を取り出した。昨日の残りで作った大したことのないサンドイッチ。と、塩ゆでした半熟のゆで卵、それが、ダンジョン突入前に食べられる最後の晩餐だった。



 それをベンチに広げる。その横で、ジェロは、干し肉を取り出した。水筒の中身は、おそらく、水で割った昨日の上等なワインだろう。


午睡シェスタの時間がとれそうにないですな」


「いいのよこれで、でも、食べる前に、一度サラディスを見てきましょう」


 二人は、顔を見合わせて、少し笑うと、サラディスに視線を移した。キノコのようなコミュニティが、今日もサラディスを我が物顔で歩いている。そして、フラジャイル旅団の団長派、王女派の双方では、出陣式でも行われているのか、人が、集まっているのが見えた。


「ほう、なかなか、壮観ですな。ここが気に入っていられるのもわかります」


 ジェロは、3枚目のに肉を口に入れながら、そう呟いた。


「そうでしょう。いい長めなのよ。とくに、ここから見る…………ッ」


 不意に言葉の止まったミッシェルをジェロは、訝し気に見つめた。その視線は、ジェロに気が付くこともないまま、ただ固まっている。不意に気持ちの悪い沈黙が流れた。ジェロは、自身が吸う息の音、そして飲み込む唾の音が、大きくなった気がした。


 


 長い沈黙の後、何とか、ミッシェルは口を開いた。その声からは先ほどまでの無理やりにでも作っているような口調は消えていた。


「ジェロ……あれ……なに?」


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