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第一話 宴の後 夜は更けて 5

 ミッシェルたちは、一言も話をせずに通りを歩いていた。ファラの他のメンバーも特に、ミッシェルたちに興味もないらしく、深くかぶったフードを上げもせずに、ファラの周りを護るように付いてきている。


「不気味ですね」


「し、聞こえるじゃない」


 ジェロの言葉を、遮り、ミッシェルは、そっとファラの様子を伺った。ファラは、その言葉を特に気にした様子もなく悠然と歩いている。


「少し待って」


 そのファラが、立ち止まり、何かを気にしているような素振りを見せた。ミッシェルとジェロも立ち止まり耳を澄ませる。近くから、怒号のような声が聞こえていた。


「急ぎましょう」


 ファラの言葉に、ミッシェルとジェロは頷いた。その耳にも今から向かおうとする場所から怒号が響いているのが聞こえていた。


 


「よし、出てこないみたいだな。全員抜刀。人質を回収するぞ」


 全員が頷いて、剣を抜く。一人は盾を構え、万が一の攻撃に備える。中にいるのがサポーターだけだということは、事前に十分わかっていた。


「せっかく王女派につけたものを、ここで裏切って団長派のに与するとはな」


 赤いベルトに吊るしてあった、薬を男は用意する。蓋を開けると独特のにおいが、その場に広がった。


「じゃあ、やるか、派手に燃えてくれよ」


 そう言って、男が、振りかぶった。その瞬間だった。手に持っていた瓶が突然に爆発した。灼けた液体が男に降り注ぎ、次の瞬間、


「ぎゃー!」


 液体のかかった場所から、炎が上がり男を包み込んだ。男は、転がって火を消そうと必死だ。そんな中、闇の中から、ミッシェルたち、7人が姿を現した。


「な、なにをしているの?」


「ちっ、見られたか。だが、都合は良い。他の旅団と共に行動している。これは明らかな背任案件だ!ミッシェルを確保するぞ」


 ミシェルたちは、7人、そして、こちらは、一人減ったが、11人はいる。そして、ジェロを除いて装備を準備し終えているようには見えない。男たちは、そう思い、ミッシェル以外をこの場で切って捨てることにした。


 不意を打つように切り込んだ一人目に反応したのは、意外にも、ファラの近くでフードを被った人物だった。その斬撃をたやすく腕輪で受けると、そのまま、もう一歩踏み込み、男の顎に掌打を食らわせる。予想もしなかった反撃に、男が白目をむくと、その鳩尾に、ねじ込むような打撃を加え、一気に弾き飛ばす。


 男は、無様に地面をバウンドし、そのまま近くにあった植栽に突っ込んだ。


「ああ、ダメよ、もう少し、スマートにしましょう」


 ファラは、双方向から繰り出された斬撃をたやすくかわすと、その後頭部を持ち、相手をキスさせるように、顔面をぶつける。男たちが、その痛みに悶絶する間もなく、その首筋に手刀が降ろされて、その残った意識を刈り取った。


 ジェロとミッシェルに襲い掛かった2人以外は、あっという間に無力化され、一人が取り出した縄でぎちぎちに締め上げられている。


 一方的な戦いだった。もし、本気で殺す気ならば、虐殺と呼んでもよかったのかもしれない。


「よし、片付いた」


 ほんのわずかな間に、人数に劣るはずの、ミッシェルたちに制圧された襲撃者たちは、お互いに顔を見合わせるしかなかった。その縛られている男たちに、ファラが近づく、あの魔法の構成が組みあがるのを感じたが、ミッシェルは、ジェロと自分にだけ、対抗魔法を発動させる。


「そのまま、帰ってくれたら、こっちは、それ以上詮索しない。今日のことは黙っておくから、あなたたちも、黙っておいて」


 男たちは、首が千切れるのではないかと思うほどに、首を縦に振ると、本当にそのまま、帰っていく。ファラは、呆れたように息を吐くと、改めて建物の方を見た。


「静かすぎるわね」


「えっ?」


 いわれてミッシェルも同じことを感じた。何かただならないことが起きているのではないだろうかと、不安を感じる。


「ミッシェルさん、脅威は去りましたから、開けてもらえるように、進言してもらえませんか?もしできることがあれば、お手伝いいたしますわ」


 ミッシェルは、ファラの言葉に頷いた。そのまま呼吸を整えると、ドアに近づく、その横には、ジェロも同伴していた。ミッシェルは、緊張した面持ちのまま、ドアを叩いた。


コン、コン、ココン、コン、ココン


 ミッシェルは、サポーター同士で決めたノックを行う。これで、少しは信用してもらえるかもしれない。そう思った。


 しかし、返事は返ってこなかった。仕方なく、声を出すことにした。



「ミッシェルです。危険は取り除かれましたので、開けてください」


 中からドアが、人一人通れるくらいに開く。ミッシェルと、ジョロは、その空いた隙間に滑り込むように入った。


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