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第五話 少年?視点

 もう、気が付いたときには、もう、手遅れになっていた。


 旅団の斥候パーティに参加して審判の森の地図作成をしていたはずだった。僕は、最後尾につきながら、それを文字にまとめていた。

 

「赤い布を目印にしてあるから、お前はそれを目印に追いかけてこい」


 軽装兵を主にした部隊とは、あっという間に、引き離された。僕は、旅団内では、数少ない、文字の読み書きができる人間だ。その経験を使って、旅団には貢献しているつもりだった。そう、その時まではそのつもりだった。


 その場所のメモを取り終わった僕は、赤い布を探した。


「あ、あった」


 旅団の印の入った赤い布を確認し、声を抑え、警戒しながら、その方向へ進む。



 本当にこの道であっているのだろうか?僕はそう思い、あたりを見回した。今日はあくまでも表層の偵察だったはずだ。どう見ても、中層に近づいている。そのことに気が付いた、まさにその時だった。


 その時だった。度からともなく声が聞こえてきた


「よう、奴隷。順調に進んでくれたようで何よりだよ」


「隊長?」


 肩から掛けているポシェットの中から、その声は聞こえてきた。僕は、そのポシェットをあさった。小さなふくろ、旅団章が描かれた入団の時に配られた袋だった。

 身分証明になるということで持っていたけど、こんな機能があるなんて聞いていなかった。


「ええと、奴隷って、何言っているんですか隊長」


「お前の親から頼まれてな、奴隷にまで堕ちた、子供に名誉の死を与えて欲しいって言われたんだ。聖域で死ぬのは本望だろう?」


 そう、僕…いや、わたしは、1年前まで、侯爵家の二女だった。しかし、両親と長兄が犯した罪を被る形で、奴隷に堕ちざるおをえなかった。


 もともと公爵家の騎士になるつもりで鍛えていた。奴隷印が刻まれた日に監視が緩くなったほんのわずかな隙をついて何とか逃げ出した。奴隷紋が施されるてしまったら、自分の意志で抵抗することは不可能だろう。幸いにして、今年が巡礼発令の年になっていたことで、なんとか、この旅団にもぐりこむことができた。


 特性が、魔導銃だったので、少し怪訝に思われたが、ダンジョン内でも、アタッカーとして活躍して、皆の信頼を少しずつ勝ち取っていった。そのはずだった。

 

 まさか、最初から騙されていたなんて思いもしなかった。

 


「さてと、おしゃべりする予定はないからな、さっさとやるか」


 その言葉が聞こえた瞬間だった。大きな音がポシェットから響き渡った。


 ほんの刹那、再びの裏切りに呆然としていた私だったが、すぐに魔導銃を抜き、ポシェットを打ち抜いた。そして、ポシェットと、袋を遠くに放り投げる。


「逃げないと・・・」


 視線を感じながらだったが、わたしは、その場から足早に立ち去った。



 何度か遭遇戦をしながら、わたしは森の中で迷子になっていた。表層の敵ならば、ナイフでも十分対処可能だが、敵は中層から現れて追いかけてきていた。しかも相手は、ダークホビットという、最悪の組み合わせ。


「はぁ、はぁ」


 魔導銃を一発撃つたびに、耐えがたい疲労感が全身を覆う。本来ならば、乱射で切り抜けたいが、疲労でもうろうとしてしまったら、それ命とりだ。


 ダンジョン内は、自らの精神力を消耗させて、魔導器は使わないといけない。でも、自分がどれくらい消耗しているのか、知るすべはなかった。ふらつく視線をを懸命に抑え、とびかかってくる相手に、魔力を叩きこむ。


 倒した数が、10を超えた時だった。ふと、見上げた先にきらきらと光るものが見えた。それは、揺れながら誘っているように見えた。

「何の光だろう?」

 わたしは、いつ襲われるかわからない恐怖の中、その光に魅かれていた。そして、わたしは完全に道を見失っていた。


「…聖霊のいたずらかな?そっちにいってみよう」


 その光のほうへ、霞がかかったような視界と頭痛ではっきりしない頭のままで歩いていく。木々の間を抜けて、高い草をかき分けると、そこは、森の入り口だった。


 外に出れて、ほっとしたのもつかの間だった。結局相手を巻くことはできなかったようだった。森の中から、現れた一団に乱射を叩き込む。両手の魔導銃が重く肩にのしかかっていた。


 そして、目の前には、巻き込んでしまった薬草摘みの少女がいた。手には旗を持っている。不思議なことに、その旗は曇天の中で、まるで太陽の光を反射するように輝いていた。


 さっきの光はもしかして、この光だったのかもしれないと思った瞬間だった。森の中から、ダークホビットの団体が現れた。数は、20はいるだろうか。


 背中を取られないように、岩を背にするように位置を移動した。同時に、それは、もう逃げ場はないと言うことを教えていた。


 少女から聞かれた残りの攻撃回数に一回と強気に答えた。もう、本当は一発も打てないだろう。少女は応援しかできないといい、それでもよければパーティを組もうと誘ってくれた。

 

 わたしは、少女に心の中で謝りながら、パーティ結成を受け入れた。その瞬間だった。




 あれだけ、苛んでいた消耗からくる頭痛がすっと軽く消えていった。両手に力が戻り、そして、何度でも、立ち上がることができるような気がしてきた。


 パン!パン!


 とびかかってきた、ダークホビットに軽くなった魔導銃が火を噴き、眉間に風穴を開ける。全く、消耗する感じがしない。


「ガンバレー!」


 少女の声が、頭に響くと、わずかにかかっていた気だるさすらなくなった気がした。行ける。わたしは、銃を水平に構える。残り、18体。


「乱れ撃つ!!」


 特に、照準を付けずにただ、ひたすらに魔導銃のトリガーを弾く。それは、予測できない弾道を描き、次々にダークホビットを打ち抜いていった。


 体が軽く、そして、全く消耗を感じさせない。わたしが、トリガーから手を離すころには、もう森の方で立っている者はいなかった。


「あなたすごいのね。あんなにたくさんいたのに、全然数の差を感じさせなかったわ」


 わたしは、呆然とその少女の言うことを聞いていた。ふと自分の体を見下ろすと、結構傷だらけになっていた。中には深い傷もあったが、だいぶふさがってきている。というか、浅い傷は目の前で、皮膚が縫合するように消えていった。


「・・・助かった。」


「あなたみたいな強い人とパーティを組めたおかげで、助かったよ。私だけだったらどうしようって思った」


「何を言っているの?あなたのおかげでわたしは助かったんだけど」


「え、私?私、何かしたの?今日は、応援以外していないんだけど?」


 少女は、不思議そうに首を傾げた。わたしは、呆れたようにため息をついたが、安心したからか、力が抜けて、岩によりかかる様に座り込んだ。


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