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第二〇話 ロンディス視点

「よし、ロアまずは、足から攻めよう。あれだけの巨体だ。足を集中的に狙い、転倒させてやろう」


「いいだろう。俺が攻撃を仕掛ける。援護を頼む」


「おまえ、バーサークしないのか?」


「いつもだったらそうするだろうが、今はその時でもないしな…まあ、予感がするのだ」


 その言葉に違和感を感じたが、俺は、それ以上問うのは止めて、戦闘に集中することにした。

 大きく振りかぶった腕を受け止める。横から伸ばされた、掴もうとする腕の動きは、ロアが、妨害し、腕を叩き切り、そのまま、引きはがす。ロアに伸びてきた、大槍を俺は、大楯で受けて、そのまま、跳ね上げる。


「あはは、よく頑張るね」


 頭上からの声を無視しながら、手の攻撃を凌いでいく。とはいっても、俺もロアも無傷というわけにはいかなかった。ロアは、防ぎきれなかった手の攻撃で、腹をえぐられるほどのダメージを受けていたし、俺も、右手を強かに打ち付けられて、骨が折れたような痛みが襲っているはずだったが、お互いに、不思議と痛みを感じることもなく、ひたすらに、足に攻撃を仕掛けていた。


「うん?あれ?おっと」


 何度目かのロアの攻撃で、足に亀裂が入る。ロアの視線に合わせて、俺は盾を構えて突撃する。


「うぉぉぉぉ!!」


 大楯の重さと体重を乗せたタックルが決まり、その亀裂が大きくなる。


「あ、この!!」


 とっさに、そいつはバランスを取ろうとするが、もう遅い。そのすきに、もう片方の足の両面から、俺のシールドバッシュとロアの大鉈のフルスイングが決まった。


 ズンッ!!


 その巨体が背中から倒れ込む。俺は、足の接続部分を狙い攻撃を仕掛けた。ロアも同じ考えだったみたいで、もう片足の接続部分に両手持ちした大鉈を振り降ろしている。


「く、な、嘗めるな!!」


 そいつの体から、急速に蒸気が噴き出し、俺たちを押し返していく。


 地面を転がりながら、盾を何とか手放さずに済んだようだった。隣を見ると、ロアは、地面に大鉈を突き立てて、それ以上吹き飛ばされないように耐えているようだった。

 目の前は再び埃が立ち、視界をふさいでいる。そんな時だった。リスティルの乱射とバンディーラの応援が聞こえてきた。心の中に、活力が湧き上がり、折れていたはずの右手をふと見ると、すでに、正常な状態に回復しつつあった。


「ロア、ロンディス!」


 マリベルの声が、響いた。頭の上をポーションが、四本飛んでいく。それを、残骸でできた手が握りつぶした。前と変わらないその光景に俺たちは一瞬訝しんだ。


「さっきと同じ?手ならいくつでも作れるからそんなの無駄だよ」


「そうですわね」


「ええ、その反応をいただいて、本当にうれしいですわ」


「はあぁ?負け惜しみ?って…」


 握りつぶした手の中から、雲のようになったポーションの中身があふれてきた。それは、あっという間に残骸を腐食させて、穏やかに、そのまま番人の方向へ広がっていく。


「ちょっと、これ…なんで振り払えないんだ」


 その声に、オリビアが、得意げな顔を見せた。


「少し時間をもらえれば、これくらいは簡単なことですわ。でも種明かしはしませんわ」


「さすが、私特性のポーション。期待通りの効果」


 マリベルが、うんうんと、納得したように頷いている。


「よし、では、止めを刺しに行くか」


「ああ、そうしよう」


 俺たちは、その雲の中に飛び込んでいく。さっき浴びた耐腐食のポーションのおかげで、装備品がダメージを受けることはなかった。その先に、あのゴーレムがいるはず、その時だった。


「『魔力槍』」


「術式ブースト:複写」


 まるで露払いをするように、オリビアの魔法に、呼吸を合わせて、マリベルのスクロール強化が入った。合計10本もの魔力槍の光が、雲を割くように飛んでいく。


「よし、ロアもう少しだ」


 ロアは頷き、雲の中に飛び込んだ。そこには、腐食と魔力槍の攻撃で、すでに息も絶え絶えなゴーレムがいた。そのゴーレムが伸ばしてきた腕を、俺は、シールドバッシュで叩き落した。本来ならば、全力で止めを刺すべきだろうが、まだ、ロアのことを信用するところまで至っていなかった。おそらくそれは、あちらも同じなのだろう。ただ、大鉈を振るっていた。やがて、俺たちの攻撃は、そう時間がかからずに、ゴーレムの首におよび、その接続部を完全に破壊した。


「さて、番人。まだ続けるか?どうか、決めないか?」


 頭に、めり込むように乗り込んでいた、少年に、俺は首筋にブロードソードを突きつけながら問いかけた。残ったパーツも、爆撃じみたオリビアとマリベルの攻撃で破壊されている。もう、こいつに戦闘能力はないことは明らかだった。


「はあ…最初はよかったんだけど…もう、僕に戦力はないよ。これ以上戦闘する意思はない」


「それは、戦闘不能と受け取っていいか?」


「……そうだね」


 ロアの問いに、少年は淡々と答えた。いまいち、悔しがっているような素振りすらない。その様子に俺は疑問を感じたが、それ以上の追及は止めた。


 全員の表情が一瞬緩んだその時だった。



「撃て……リスティル」


 パン!


 聞こえてきた声と、銃声が、まだ戦闘が終わっていないことを思い出せた。そして、事態がもしかしたら、悪い方に進んでいるのではないかということを感じさせる銃声だった。


チュートリアルステージのボスが弱いのは、仕様です。

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