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第一六話

相手が、少し本気かもしれないと感じたのは、戦闘が始まって直後のことだった。


「『実体化』を開始します。祈り、詠唱…」」


 『聖鏡』の言葉とともに、周りに、どこからともなく現れた様々な形の残骸が吹き荒れ『聖鏡』の姿が、その嵐の中に消えていく。その前に立つ、魔王はその様子を気にせずに、ただ、フードを深くかぶり、自然体でこちらを見ている。が、それをただ突っ立ていると考えているメンバーはここにはいなかった。


「どうやら早めにつぶす必要があるようだな」


「ああ、……憎らしいほど同意だ」


 ロアとロンディスが、大鉈とブロードソードを構え、いま、集中をしている聖鏡を狙い突撃する。


「『変身』中に攻撃するような、野暮な真似は…やらせないわよ」


 その進路を、魔王が断った。フードの下ではおそらく笑みを浮かべながら、2人に突撃する。とっさに繰り出したロアの大鉈とロンディスのシールドバッシュを、その両腕で受ける。どう見ても、素手、しかも女性の手に止められた…その行動と結果に2人は驚いた表情を浮かべる。


 本当に、相変わらずの武闘派。少しくらい、手加減してもいいのに。


「まとめて射抜きます!!」


 リスティルの言葉に反応し、ロアとロンディスがいったん退く。リスティルの射線上に立ちながら魔王は大きく手を広げた。


「フフ、あははっ、は~はははっ!リスティルちゃん!」


 魔王が、いきなりリスティルの名前を出したことで、全員が驚いた表情を浮かべる。リスティルは、困惑しながらも、一発発砲する。それは、大きく的を外していた。うん、これは、動揺を誘っていますね。……っていま、ちゃん付しました?あれ、顔見知りなんでしょうか?って、私もちゃん付けしたことないのに!先を越されました!


「ここまでたどり着けたんだね。ふふ、再会できてうれしい」


「会ったことないですけど…何を言っているのかわかりません。!」


「ふぅん。あんなにかわいかったのに言うようになったのね。じゃあ、もっと、かわいがってあげる。」


 ああ、なるほど、そういうことですか。リスティルにずっと感じていた違和感のような物がようやくわかりました。


「確かにそうね。でもっ!!」


 リスティルの、乱射が、魔王を捉えたかのように見えた。しかし、さしたるダメージも負った様子もなく、魔王はそのまま姿勢で立っていた。


「リスティル!そいつは、ボコボコにしちゃっていいよ!」


「はい、バンディーラ様!」


 リスティルの乱射の精度と速度が上昇していく。それでも、魔王はまだ涼しい顔をしているが、さすがに防御姿勢はとっている。リスティルの攻撃力は、確かに上がったけど、それでも、致命的な打撃を与えるにはまだ至っていないんだよね。今まで、弾丸を使っていなかったから、そこらへんも慣れていないみたいだし。


 リスティルの額に、汗がにじんでいるのがわかる。疲労というわけじゃなくて、焦りからだろう。まあ、確かに、これだけの力の差を見せられたら、焦りくらいは出ても仕方ないよね。


「『炸裂火球』『魔力槍』」


「『火炎槍』術式ブースト:複写!」


 後衛の2人も、詠唱が完了したみたい。私たちの頭を越えて、火球と魔力槍、それに遅れて10本もの炎の槍が一斉に聖鏡に襲い掛かる。渦を巻く残骸がそれに立ち向かい、多くが爆散するが、その中心にどれだけのダメージが入ったのかは、ここからでは見ることができない。


「オリビア、このポーションを」


 マリベルが手際よくポーションをオリビアにわたし、開いた手で、マリベルは、3本のポーションを残骸に向けて投げつける。おそらく、装備対策用の『腐食』のポーションだろう。


 そのポーションが届くか届かないかの時に、力強い声が場に木魂した。


「ささやき、念じろ!!」


 ポーションが、空中でがれきでできた手に握りつぶされる。その手は、腐食に耐えられなかったようで、そのまま、ボロボロに朽ち果てる。しかし、その先には、残骸でできた巨人が私たちを見下ろしていた。

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