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第一五話

「はい、ここがその場所になります」


 私の声に、皆が驚きの声を上げる。確かにこの場所を案内されたら驚くよね。


「ええと、本当にここにそんな番人っていえるモンスターがいるんですか?」


「すぐには信じられないわね」


 そりゃそうだと、私も思う。ただ、ここで、注意をしておく。


「一応、2つだけ注意しておくけど、一度はいったら、どちらかが倒れるまで出ることはできないから、その点は注意ね」


 皆が、緊張で唾を飲んだのがわかった。


「バンディーラ、少し教えてほしいのだが」


 ロアが、珍しく私の名前を呼び、話を切った。むう、何なんですか?


「倒れるまでといったが、それは相手が戦闘不能になったときか?それとも死んだときか?」


 いいところをついてくる。これは、戦闘狂らしい質問です。私は、笑みがこぼれそうになるのをこらえ、ロアの質問に答えることにした。


「戦闘不能になるまでです。相手かこちらの全員が戦闘不能陥った時点で、その戦闘は終了になります。安心してください。聖域深部では、定まった手順を踏まない限り死ぬことはありませんから。……ただ、今後、死んだ方がましだと思うことはあるかもしれませんが」


「そういうことか、なるほどな」


 ロアが納得したところで、私は、次の注意点を言う。こっちが結構大事だったりする。


「この先では、私が御使いを召喚することはできません。あくまで、皆での戦いになります。私も、今回はサポーターではなく、パーティの一員として参加します」


 皆が驚いたが、私は内心残念に思っていた。本当なら、私一人で挑んでもいいことだったけど、今回は、異例中の異例ということで、パーティを組んで挑むことになっていた。


「そう、バンディーラの力で一掃というわけにはいかないのね」


 オリビアが、そうつぶやくと、すこし考え事をしているようだったが、


「バンディーラ様…」


「様はいらないわ」


 オリビアが次の句を発する前に、リスティルが、私を呼んできた。何だろうとおもい、そちらを向くと、目が合ったほんの一瞬リスティルは、何かを思い詰めているような表情を見せた。その直後、リスティルの表情が、決意に満ちたものに変わる。


「…を、戦奴隷としてお守りします。わたしを、何なりと使ってください」


と、私に傅く。そんなに気負わなくてもいいのにと思ったが、決して、リスティルの気持ちがわからないわけではなかった。その様子を見ていたオリビアは、こんな場面で聞くのは、野暮かもしれないと思ったのか、隣にいたマリベルとの話に戻る。


「ええ、でもね、リスティル。まずは自分の身を護れないといけないわ。私のことも大事にしてくれるのはうれしいけど、自分のことも、私と同じくらい大事にしてね」


 その言葉に、リスティルは、ただ小さく短く、「はい」っと、返事をした。

 リスティルの気持ちはわかっているつもりだ。でも、いずれは、リスティル…だけじゃなくて、みんな帰らないといけない。だから、できれば怪我とかはしてもらいたくないが、それでも、これは試練だ。


 柄にもなくそう思ってしまうのは、少し、贅沢で傲慢な感情なのだろう思った。



「ええと、御使いって何ですか?」


 マリベルだけが、今の話についてこれていなかったが、オリビアが、マリベルに詳しく説明をしている。それを見て、わずかな間に、このパーティに信頼のような物が芽生えているのではないかと思い、希望を持つことができた。


 たとえそれが、今は、お互いの腹の内を探るような一歩間違えば疑いといわれてもおかしくないものだとしても。



 皆の注意が、パーティの状態と、近づいてきているその時に向けて、緊張をはらんできたのを見て、私はこっそりと観客たちに注意を向ける。


 この戦いには、多くの観客が存在している。もし、それにパーティメンバーが気づくことがあったら困ると思ったが、今の時点では、そのことを気にしないといけない状況にはないみたいだ。


「さてと、バンディーラの言うことは信じられないが、あれが、本当に番人というのならば、さっそく挑んでみるか」


 ロンディスの言葉に、皆がその場所を見つめる。そこは、サラディスで私たちが、暮らしている家の…場所。そこには、サラティスと違って、目立つものは、何もない。ただ、石舞台だけがある場所だった。その石舞台の上に、2つの影が見える。確かに、本来の相手とだけでは力不足だと言っても、まさか、ここで切ってくるか。


 まあ、本人が、目立ちたがり屋だから仕方ないけど。とりあえず、リスティルのおなかの撫でるのを先に取られた分だけは、殴ってやろうと思った。




「遅かったですね」


「遅かったわね」


 じゃあ、試してあげるよ(行くよ)。聖王遺物『聖鏡』と…今代の魔王。

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