第一一話
「ところで…なんでこんなところにいるの?」
私は呆れた様子で、リスティルのおへその周りを撫でまわしているそいつに問いかけた。他のメンバーがいないからといって大胆すぎる。リスティルは、苦しそうに顔を歪めているが、そいつが止める気配はない。しかし、リスティルきちんと鍛えているんだね。あんなに細いのにおなかが、割れていて、すごくかっこいい。
「あら、お久しぶり」
「ええ、あなた、聖王のところにいなくていいの?」
「そうね、聖王から、この子を見ているようにって命じられているからって理由でどう?それに、聖王にに呼ばれたらいつでも行けるから。だから、今日は大好きでかわいい子をずっといじめて…虐めいたいの」
ええと、『ストーカー?』
「しかも私は、たくさんいたりするの。ふふ、リスティル(この子)をみんなで撫でまわすのがすごく楽しみ」
「ええと、リスティルを集団ストーカーになって襲うってこと?へぇ、わたしの前で、襲撃予告とは素敵ね」
その瞬間だった。
「バンディーラ様…」
リスティルの口から声が出た。そいつは、驚いた様子で、リスティルを見て、少しだけ残念そうな表情を浮かべた。
「はぁ、久しぶりに面白い逸材かなって思ったけど、ダメだったみたい」
「はあ?忠告しておくけど、まあ、そろそろ、人を試すようなこと止めた方がいいよ」
「全く、バンディーラ様は、相変わらずお堅いですわね。仕方ないですわ。…もしリスティルがあなたと出会わなければ、私の眷属にしたかったですが、やはり簡単にはいかないですね」
この変態と、一瞬だけ思ったが、口の中にその言葉は放り込んだ。ここで、こいつと殴りあうのはやめておいた方がいい。そんなことをしたら、何より、リスティルの命に係わる。
「いい趣味しているとは思うけど、あいにく共感はできないわ。そうでしょう?同類さん」
「あら、配慮してくれてありがとう。っていうかあなたって、そういうことや表情もできたのね。前会った時とは大違い」
うんっとリスティルが寝返りをうった。再度、私の名前を小さく呼んだ。
「そろそろ、邪魔者は退散します。また会えるのを楽しみにしているわ、バンディーラ…様…」
その声を、最後にそいつは、この場に最初からいなかったように消えてなくなる。私は、リスティルの短い髪を払い上げて、その寝顔を覗き見る。その顔が、安らかなのを見てホッと胸を撫でおろした。
「リスティル…ねぇ、起きて」
人間でいうところの、愛おしそうなしぐさというのだろうか、優しく、頭を撫でながら、リスティルに語り掛ける。リスティルが、うんっ。と一瞬力の入った声を出し、大きく伸びをする。やがて、目が大きく開くいた。相変わらずトルマリンの色の瞳は綺麗だった。
「あの、バンディーラ様?」
「はい、バンディーラ様ですよ」
リスティルは、寝起きで、少しの間ぼうっとした表情を浮かべていた。けれども、すぐに何かに気が付いたのか、え、あ、はっ?っと、何かを探すように、私の前で不思議な踊りを踊り始めた。
「バンディーラ様、今、いつ頃ですか?まさか、わたし、お昼まで眠ってしまいました?」
「様はいいわ、リスティル。一緒に来て」
私は、リスティルの手を掴むと、そのまま、駆け出す。
「って、わたし、おなか丸出し?って、待ってくださいよ、バンディーラ様」
リスティルが、空いた手で、服装の乱れを整える。そして、私は、家のドアまでたどり着いた。
「…バンディーラ様、今日は、…」
「リスティル、見て」




